メルマガvol.116「2022年 年始のご挨拶」
 

メルマガvol.116「2022年 年始のご挨拶」



ぱっぷすの金尻です。

旧年中はぱっぷすを暖かく見守っていただきありがとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 ぱっぷすは皆様からのご寄付・助成金などによって、性的搾取に遭われたかたへの相談支援事業を継続することで、私たちの世代で性的搾取に終止符を打つために活動を続けています。昨年は、ぱっぷすが大きく変化した1年でした。東京都から若年被害女性支援事業の委託をはじめ、複数の団体・企業からの助成金、そしてみなさまのご寄付によって性的搾取にまつわる相談支援を続けることができました。今年度は、新たにアウトリーチ活動(支援が必要であるにもかかわらず届いていない人に対し声掛けなどを行い福祉が積極的に働きかけて情報・支援を届ける)を開始し、有給スタッフも25人+フリーランス相談員2名と大幅に増加したことから、新しい事務所を開設して相談支援活動を続けています。

 みなさまの温かい支えに心からお礼申し上げます。

<相談支援事業について>


 今年も24時間365日の相談窓口体制を維持することができました。2021年4月~12月26日までの新規相談者数は404件です。2021年11月は73件で前年の同じ月の3.04倍の新規相談が寄せられています。これまでのスタッフと今年度新たに採用したスタッフで日々の相談支援にあたっています。

 このように相談支援事業をここまで進めることが出来るのも、温かく支えて下さる皆様のおかげです。ありがとうございます。今年は、さまざまなメディアの報道により「デジタル性暴力」の問題が前年度よりも社会的に認知されてきました。ぱっぷすに寄せられる相談のうち、児童の場合は、性的な写真を送付してしまった、盗撮され拡散したなどのスマホに関わる相談が多く寄せられました。特に10代の方の場合、相談したら親に迷惑がかかるのではないか、学校に知られて迷惑がかかるのではないかと恐れて相談できずに抱え込まれてしまう方も多くおられます。

 18歳以上の相談では、引き続きアダルトビデオを含む性風俗産業で被害に巻き込まれた相談が後を絶ちませんでした。AVの販売の停止や削除に関わる相談では、錯誤や事実誤認のような形で芸能プロダクションに所属させたあとに、同調圧力などを利用して意思に反した性行為の様子を撮影し売買することが主流でした。最近の傾向では、SNSなどオンライン上で知り合った若年女性を誘い出し、同調圧力などを用いて性行為を強いて、その様子をスマートフォンなどで撮影や盗撮し、それをインターネット上で販売し荒稼ぎをしている人たちが増加しています。

 2018年に政府は「AV出演強要・JKビジネス等被害防止月間」を策定しましたが、それ以降まったく進展がない状況が進んでいます。その間多くの若年層の方たちが、「社会に希望を持てなくなった瞬間」や、「社会とのつながりを見いだせずに居場所を失う瞬間」を性風俗関連特殊営業の斡旋業者やAV事業者は見逃さない深刻な状況が常態化しています。

 寄せられる相談を通じて、上記の性的搾取をする事業者に完敗している状況から、日本の社会は若年層の多くの犠牲の上に成り立っているのだと思い知らされますが、私たちは決してあきらめません。

 民法改正では、来年2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられ、18歳~19歳の未成年者の未成年者取り消しが使えなくなる時代がそこまで迫っています。ぱっぷすに寄せられた被害相談では、被害者が18歳未満(高校生)の時からAVプロダクションがリクルートした事案もありました。法的にAVは18歳になるまでは観てはいけないものが、圧倒的な情報量の格差に付け込まれ18歳の誕生日を迎えたら、昨日まで見てはいけなかったAVに出演させることができてしまう社会がやってきます。急を要する課題でもあり、実効性のある対策が急務だと考えます。

<性的画像等の削除要請>


 性的搾取の中でも「デジタル性暴力」は性的画像を拡散させられる被害です。ぱっぷすでは、デジタル性暴力に遭われた方の総合的支援を目的に、リベンジポルノ・児童ポルノ・AV出演強要に係る性的画像記録等の迅速かつ効果的な削除要請を行ってきました。

 ネットに、性的画像記録を投稿する側はメールアドレスとパスワードのみという匿名に近い状態で動画を投稿できますが、削除したい被害者側は本名と身分確認ができる書類の提出が求められるなどの制度上の問題があり、個別にプロバイダ等の事業者と交渉をしながら、働きかけを行っています。多くは削除に応じますが、削除要請に応じない事業者もかなりあります。

 多様化、高度化する相談者のニーズに適切に対応し、かつ巧妙化・深化する加害傾向に対し柔軟に迅速に対応できる支援機関が必要だと考えます。これまでWAM(社会福祉医療機構)の最大3年間の助成により継続することができましたが、今年度が3年目です。今後も増加する社会的ニーズに柔軟に応えていくためには、次年度以降も継続して続けていく必要があります。事業継続には年間1,000万円以上必要ですが、そのうち35%を集めることができました。残りの75%を集める必要があります。企業寄付・助成金の情報がありましたらぱっぷす宛にお寄せください。

<予防啓発ついて>(“可愛い”の延長に性的なことがある)

 ぱっぷすでは、グルーミング(子どもに接近して信頼を得て、その罪悪感・孤立感・羞恥心などを利用するなどして関係性をコントロールする行為のこと。)被害について2カ月間NHKと共同取材を行うことで可視化することもできました※。

 ツイッター上で「14歳の中学3年生の女子生徒で、甘いものが好きな受験生」という架空のアカウントを作成し、まず「友達がほしい」とつぶやいたところ、1分もたたないうちに10人近くからダイレクトメッセージ(個人に直接送るメッセージ)が届きました。2カ月の間で200人近い人から接触がありました。10代~40代の男性と思われる人から性的目的の内容が寄せられ、多くは実際に会って性行為をしたいという内容でした。加害者はネット上の匿名性を利用してやりたい放題、声をかけたい放題であることが可視化できました。

 加害者は、ツイッター上で「可愛いね」「良く頑張ったね。なでなで(ハート)」「お勉強で疲れてるやろ、腕枕してぎゅーとして頭なでなでしてあげるから安心して(ハート)」などの優しい言葉で言いくるめながらも、オンラインを通じて模擬的に性的な接触の壁を越えていきます。

 大人との性行為などに抵抗感を抱かせない仕組みがあることがわかりました。ぱっぷすでは、11月27日に開催された法制審議会のヒアリングで、現行の罰則の活用だけではグルーミング行為自体を取り締まることができないことから、グルーミング行為自体に対して新たな罰則化を設けること、現行制度では、おとり捜査は警察官には認められていませんが、別の犯罪類型では(麻薬や向精神薬などの取り締まりでは厚労省の麻薬取締員など)おとり捜査ができます。グルーミング加害についてもおとり捜査などを通じて加害予防啓発ができる制度を求めていきたいと考えています。

https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0026/topic034.html

<アウトリーチ活動>

 2021年4月からの活動より3カ月を経て、7月1日から9月30日の期間に東京都内の繁華街において週2回のペースで計19回のアウトリーチを実施し、対象者への声掛けは1600名(9月時点)名以上にのぼりました。

①繁華街でのアウトリーチ

 声掛けでは「相談事業をしているのですが、写真をばらまかれたり、困ってる友だちなどいませんか?」等と声をかけ、ぱっぷすの相談窓口の存在を案内しています。路上アウトリーチの際には、受け取ってもらえるような工夫として、飴やマスクなどの季節の配布物とともに、ぱっぷすの連絡先の記載されたリーレットを配布しています。また、スカウトが一度声をかけた女性を狙い、「今スカウトされていませんでしたか?」、「スカウトされたことはありますか?」と声をかけ、スカウトの内容やその女性の現在の状況を聞き取る形でのアウトリーチも行っています。

 継続して続けたことで、繁華街で過ごしている若年女性・男性ともに「このチラシもらったことある」、「パインあめをくれる人だ」「ぱっぷすさんですよね」本活動の認知が徐々に向上していることを実感しています。

 現在までに、家に暴力などの理由でいられなかったため、地方から東京に出てきたという10代~20代前半の若い女性に何人も出会いました。そのほとんどが食事にも困る生活をしており、低価格のネットカフェや、性搾取を目的とする業者の寮、危険の伴う性売買で得たお金で何とか日々をしのいでる方に何度も出会いました。しかし、アウトリーチでつながることができたとしても、公的支援に抵抗がある女性が多く、次のステップに進む前にまた元の生活に戻ってしまうことが多いです。このことから、やはり現在女性たちに必要なものを提供しているのは性搾取を目的とする人々であり、福祉がその役割を遂行できていないことがわかります。そのため、当団体では、女性たちが気軽に無料で利用できる居場所が急務であると日々実感しています。

 夜の仕事に従事している女性の困りごととして、「コロナでお客さんが怖がって仕事が減った」「担当のホストが(夜の仕事を)辞めさせてくれない」、「ホストからの売掛(掛け金)を返さないといけない」など、ホストによる性的搾取されている事例もよく寄せられています。これは、そもそも相談していいということを知らない方も多いことから、アウトリーチでの繋がりが大きな意味をもってきました。継続的なアウトリーチにより、相談に繋がった例も多く出てきました。現在居所が無い女性に対しては、寄り添いながら現在の生活課題について整理をし、具体的な社会資源や居所確保の実践などをただ繋げて終わりではなく、定期的に関りを続けていくことで、他の隠れた主訴をみつけながら、1年~数年をかけて生きづらさの解消を目指して活動を続けていきます。

③オンライン上のアウトリーチ

 6月中頃より開始し、7月に入ってから本格的にスタッフ2名で始動しました。オンラインアウトリーチの目的は、困難を抱えた女性が今後インターネット検索により当団体を探しやすくすることや、助けを求めることができない女性に対して情報を広く提供することです。今までの経験により、対象者が多いとされるSNSや質問サイト(知識検索サービス)を中心とし、さらにより若年層へリーチするためにSNS、ショートビデオプラットフォームなども対象としています。質問サイトは人に言えない悩みを抱えた時に頼る場所として知名度も高く、過去にはこのサイトの回答によりAV出演強要の被害にあったという事例も確認しています。SNSとは異なり、回答は数年経っても閲覧可能なため、できるだけ多くの回答を残し、当団体の相談へつながる道を作っています。現時点でも、実際に当団体の回答を通じて相談につながったケースが確認できています。

 また、SNSのアウトリーチの過程で、今まで認識していない加害の形も明らかになりました。ある女性は、SNS上で自ら支援団体と思われるアカウントに助けを求めたところ、そのアカウントは実際に存在する団体をかたった偽の団体であり、就職支援などをすると言いながら、実際には援デリへ連れていかれて働かされたと証言をしました。このように、新しい加害の形も浮き彫りになり、ますますインターネットの世界が性搾取で溢れていることを確認しました。

<さいごに>

 昨年の成果として、すこしずつですが性的搾取を容認する社会に変化の兆しを感じています。推進していくためには、積極的な広報・ロビー活動が何より重要です。これまで相談員が相談業務を兼任して広報・ロビー活動を頑張ってきましたが、相談が立て込んで寄せられると広報・ロビー活動に影響がでてしまうことから、相談支援はもとより広報スタッフなど専門的に行うスタッフを配置していきます。

 ぱっぷすの取り組みは、まだはじまったばかりです。相談支援・削除要請・アウトリーチを通じて、ひきつづき性的搾取に対抗する効果的なアプローチを模索していきます。ご賛同いただける方はぜひ月額1000円からできるマンスリーサポーターをお待ちしています。

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