渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

映画『ラーゲリより愛を込めて』(2022)

2022年12月11日 | open


犬が出てこなければ最高に良い
映画だった。
実話なのに、あそこで陳腐なお涙
頂戴は、マンガすぎて白けた。
それと、ラストの寺尾聰のシーン
は全カットでよい。
あれも作品をダメにしている。
くだらない結婚式のくだらない
シーンだ。
戦時中の結婚式と重ねたのだろ
うが、実にしょうもない演出だ。
❌(ひょうきん族の判定のように)。
犬と取ってつけたような寺尾聰の
結婚式祝辞、それさえなければ、
本当に良い映画で、カンヌ映画祭
でも受賞できそうな作品になって
いる。
あの二つが映画を台無しにして
いた。
犬は主人公が埋められた時点で、
帰って来なかったのだから、そ
のまま主人公の亡骸のそばにい
させるほうが作品としては自然
だ。どうして、いきなり復員船
を流氷の中走って追っかけて来
るのか。
あれによって、胸を打つ俳優の
鬼気迫る演技も台無し。安っぽ
い何とか物語の活動写真にして
しまっている。監督と脚本書き
は本物の馬鹿なのか?と感じた。
陳腐過ぎて泣けないどころか、
噴飯物だった。飲んでるコーラ
鼻血ブーーッのように映画館で
噴き出しそうだった。

私の伯父は満鉄から陸軍に入った。
敗戦時にはソ連によりシベリアに
抑留された。
復員は昭和23年だった。
この映画の主人公山本幡男のよう
な経験をしたが、幸い生きて復員
できた。
シベリア抑留の日本兵は57万5千人。
死者は5万8千人。
ポツダム宣言では、武装解除した
日本兵は家庭に帰れる公約だった
がソ連は無視した。

この映画作品は実話である。
ソ連のやり口も、抑留日本兵の
姿も物語も実話だ。
復員船を追いかける犬のシーン
以外は。
抑留されて死んだ日本人たちは、
戦後に国際条約無視の無法の中
で殺された。
伯父の話では、自分が生きて日
本に帰れたのが不思議な位に多
くの人が死んでいったという。
本当にこの映画のように、黒パン
のパン切れ一枚とスープのみが
一日の食事で、それでシベリア
開発の重労働をさせられた。
国際条約違反だが、ソ連のその
無法ぶりを咎めて是正を求める
戦勝国は無かった。国際人権団
体なども存在しない時代だ。
戦争とは、ありとあらゆる人権
が侵害され、人が人では無くさ
れる。
それが戦争だ。
戦争は、戦争をして得して儲け
奴らによって遂行される。
そこらの親や子どもや爺様婆様
戦争を望むのでも起こすので
もない。
権力を握る者たちが戦争を起こ
す。
そして、彼らはどんな戦争でも、
自分と自分の一族が死ぬ事
い。

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