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W杯「全試合無料配信」で注目の『ABEMA』 開局6年で急成長を実現させた事業戦略

マネーポストWEB / 2022年12月5日 16時15分

 井上氏は開局からたった6年でここまでの規模に成長したアベマの戦略をこう見る。

「スマホやパソコンなどが中心にある生活は、年齢や性別に関係なく全世代に当てはまるんです。アベマはテレビのような年齢層に合わせた番組展開ではなく、ライフスタイルやスポーツ、映画などのジャンルに合わせてラインアップを充実させている。その結果、幅広い層をカバーして急成長しました」

 先述した将棋や麻雀のチャンネルでは竜王戦などのタイトル戦やMリーグを配信しており、釣りチャンネルではバス釣りやルアー釣りに特化した番組や、バスマスターの世界大会に挑戦する日本人選手に密着したドキュメンタリー番組もある。

 もちろん、相撲や野球、ゴルフなどのスポーツチャンネルもその時々で開催されている大会や試合を配信しており、ラインアップは充実している。50代の男性はここ最近、ドラマや映画に没頭しているのだという。

「ドラマ、映画のチャンネルは毎日、なかなかの名作が流れてくるんですよ。映画『スタンド・バイ・ミー』やドラマ『ドクターX』が配信されていて、一日中つけっぱなしにしていても飽きません」

 アベマの飛躍には確かなノウハウがあるのだという。井上氏が語る。

「アベマのスタッフにはテレビ局出身者がいて、世間で何が話題なのかを拾う情報感度が良い。また、番組構成は単純なワイドショーでもノウハウがないと難しいのですが、その壁もクリア。テレビ局の番組を作るノウハウとアベマのマーケティングが良い化学反応を起こしている」

 アベマには、テレビ朝日と共同制作しているニュースや、バラエティーなどのオリジナル番組も充実している。三上氏が語る。

「報道番組『ABEMA Prime』は、専門家を招いて事件や社会現象などを深く追究していくほかにはないスタイルです。また、24時間ニュースを配信するチャンネルもあり、安倍首相の銃撃事件でも現地からレポートし続けていました。テレ朝とコラボしたニュース番組の質は安定しています」

 だが、これだけのコンテンツを維持していくには、相当な代償を支払う必要があると三上氏が続ける。

「アベマの収入源はCMと見逃し配信など有料コンテンツですが、開局以来赤字で、サイバーエージェントのネット広告とゲームの黒字によって賄っている。しかし、藤田晋社長は『(アベマが)普及するのに10年かかる』と発言しており、まだ投資段階です。サービス開始当初は年間200億円だった赤字が減少しつつあるのは、アベマのビジネスモデルがうまく回り始めている証拠でしょう」

 2022年度の通期決算(2021年10月~2022年9月)では、アベマの売上高は1121億円に達し、営業赤字は124億円に縮小。サイバーエージェントは中長期戦略で「アベマの規模拡大」を打ち出した。

 アベマの進化はまだまだ止まらない。

※週刊ポスト2022年12月16日号

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