サッカー番組に女性タレントが出てくると、普通はうなずき役であり、話を聞いて「へえ」とか感心するだけの立ち位置である。日向坂の影山優佳は自分でかなり調べているので、周囲が「へえ」と感心するわけである。こういうのが出てくると、他のタレントはサッカー番組で出番がない。影山優佳はサッカー番組に出るから予習してくるのではなく、ライフワークとして調べている結果であろうから、「他のタレントはもっと勉強すべき」と言っても的外れだが、ともかくそういうことである。冷めた目で見れば、男子ならこれくらいのサッカーオタクは普通にいるとは思うし、女子がサッカーについてこれだけ徹底して調べていることが珍しいだけ、という言い方も可能ではある。アスペ男性ならオタク的な知識を溜め込んでいるのはいる。影山優佳はコミュニケーション能力がある女性アイドルでありながら、探究心を持っているのが稀ということであろう。おそらくサッカーだけでなく、本質的に博識タイプである。この手の博識さが稀であるのは、世間のひとびとは実学的なことを学習しているからである。彼女は筑波大付属高校の出身だそうだが、東大進学云々と言いながら、結局は高卒らしい。もし大学進学していたら、何を履修するか選択できるにしても、縛りは発生する。たとえば司法試験に合格しようという人は司法試験合格のための勉強しかできない。影山優佳は好きなことをやっていればいい人間だから、こういうことができる。とはいえ、たとえば専業主婦とか引きこもり男性が有り余る時間を使って博識を極めているかというとほとんどがそうではないし、ただ暇潰しの毎日である。時間が余っていて、なおかつ勉強熱心という人はあまりいない。優秀な頭脳の持ち主はエリートとして歩むための課題をこなすのに精一杯である。頭が悪くて暇だと、それはそれで使い物にならない。われわれの大半は知的探究心から疎外されている。
われわれは社会改善への意思を持っている。高潔な動機というのではなく、自分の都合としても、世の中が良くなってくれたほうがありがたいからである。では社会改善への意思が人類普遍のものかというと難しく、ロシア人にはなさそうだし、中東の国家でもあまりありそうにない。独裁的な政治を受け入れる国民性の問題もあるだろう。民主的な国家では、支配者と人民が阿吽の呼吸というか、支配者側も批判を甘んじて受けるようなところがあるが、独裁者はそうではないし、批判されれば粛清して終わりである。ロシア人の冷血さの原因はよくわからないが、なぜか共存共栄という発想が弱いようだ。DNAがそうなのか、ロシアという広すぎる大地がそうさせるのか、そこは不明である。プーチン個人が独裁気質だというのもあろうが、それを受け入れてしまうロシア人の性質の問題でもありそうだ。利他的な行動で社会を改善し、それがいずれは巡ってきて自分のためにもなるという民主的な発想が、民衆の側にあるかないかなのである。われわれ日本人はその発想が当たり前だと思っているが、そういう発想がない国民もいるのである。日本人は赤の他人の財布を拾ったら交番に届けるわけである。これは自分が財布を落としたときもそうしてもらえるという願望のためである。ロシアでも親しい人とは親密にするのだろうし、逆に言うと、日本人は他人とベタベタ接することを負担に思っていたりする。日本人は公共的なマナーの意識が強く、社会を改善しようと思っているが、さして他人が好きではない。民族で決めつけるわけではなく、たとえばマクドナルドでいえば、原田社長は改善意識が低く、カサノバというカナダ人の女性社長は地道に改善する意識があり、コロナ協力金も受け取らないなど、倫理観も高そうである。このあたりは経営手腕というよりは、社会にとって有益な存在であろうという意識の持ち方である。原田社長は日本人らしくない人間という言い方もできる。
人間は紙一重のところで生きている。いわゆる偉人であれ、絶対に負けない横綱相撲というのはあまりない。むしろ偉大であればこそ、人生の安泰が保証されていることはなく、九死に一生を得ることも多々有り、あるいは横綱になったかと思いきや、たまたま巡り合わせが悪く、本能寺の変で討たれてしまうこともある。腹を括るという言い回しがあるが、悪い結果に向かったらそれはそれで仕方ないという心積もりであろう。このディストピアで発生する出来事は紙一重であり、偶発的なタイミングの問題でもある。肝を冷やしながらも切り抜けたり、まさかという隙きを突かれて討たれることもあり、一回性の人生と歴史において、ふたつの結果はないので、辿り着いたひとつの結末を受け入れるしか無い。あるいは、昔の世の中だと医学が未発達であるから、人間の若死にはよくあり、誰かが死んだから自分に順番が回ってきたというケースもたくさんある。たとえば平清盛でも平家盛という非常に有力なライバルがいたが、20代半ばで病死している。平家盛は異母弟だが、父親の正室である池禅尼(藤原氏)の子どもであるから、こちらの方が平清盛より有力である。この人物が死んでくれたのである。ただ、池禅尼は発言力を持ち続けていた。その後、平清盛が平治の乱を制し、13歳の源頼朝を処刑しようとしたとき、まだ生きていた池禅尼の嘆願で止められてしまった。ひとりの若者が死刑を逃れたというひとつの出来事が日本の歴史を大きく塗り替えたのである。こういうのもまさに紙一重である。順境だから勝つとか、逆境だから負けるというわけではなく、なにかしら紙一重の要素もある。人類はそういう不確定な出来事に翻弄され塗炭の苦しみというべき歴史を生きてきたから、昨今の発展した社会では無風状態の安定を求め、歴史は終わったのかもしれないが、それでもこのディストピアが逃してくれないことがあり、生きるか死ぬかの危機が差し迫るとすれば、その波乱万丈の舞台を運命愛で受容するしかないのである。
なぜ氷河期世代に自己責任論が浸透したのか、というと、小泉純一郎のせいだとなっている。わたしはこれは間違いだと思う。今から100年くらい前の世の中だと、子どもが五人くらいいるのが普通だから、親というものは、「さっさと自立しろ」と厄介払いしていたわけである。自立してくれればなんでもいいわけだ。戦後社会でこれが変わったわけである。「さっさと自立しろ」ではなく、むしろ親元で理想的に育てるということになったわけである。当然ながら、理想的に育たない人が多いので、親の期待を裏切るケースが生じてくる。氷河期世代だと特にそれが多発したはずである。だから親から「おまえが悪い」と言われて、本人も「自分が悪い」というわけである。ともかくそれだけの話であり、小泉純一郎のせいにするのは、やはり親の期待を裏切ったという最大の汚点から目を背けているようにも思える。五人くらい子どもがいる時代とは話が違うだけであり、また高度経済成長時代の上昇志向がバブル崩壊で破綻したとも言える。親の期待を裏切るというのは、それこそ謀反と言うか、朝敵になったようなものである。国家反逆罪であり、国籍がないようなものだから、これはなかなか居直れるものではない。そもそも非正規雇用の問題は、非正規の扱いが悪すぎることである。だから、非正規だけで集まって組合を作るべきなのだが、彼らはそもそも非正規を恥じているから団結しないし「正社員になりたい」と繰り返すだけである。おそらく正社員にならないと親を裏切ることになり、朝敵だということなのであろう。つまり非正規の人は、非正規の待遇改善は望んでおらず、むしろ非正規なら待遇が悪くて当然だという差別的目線を内面化しており、正社員にならなければ意味がないと思っているのである。まずは親の期待を裏切ったという原罪を問い直し、もうそれは仕方ないのであるから、自分で自分を差別することをやめて、ひとまず生活のために非正規の待遇改善を全国的に団結して求めなければ世の中は変わらない。
ネットで人間は匿名だという議論があるが、そもそも現実でも人間は匿名である。現実世界で訴えたい相手はいろいろいるが、意外と相手の名前や住所がわからない。現実で接触する相手が匿名ということはむしろ普通である。わかりやすい喩えで言えば、「あの店員を訴えたい」とか「あの客を訴えたい」と思っても、なかなかわからない。普段からよく見かける嫌な奴だが、そいつの名前や住所なんぞわからん、もしくはわたしが迷惑行為をしたとしても、(警察沙汰になれば話は別だが)自らの名前や住所を名乗る義務など無い。ともかく、世の中、そういうことだらけなのである。たとえば撮り鉄というのがいる。鉄道会社としては迷惑だから訴えたいくらいであろう。だが、こいつらが常習的に迷惑行為をしていても、なかなか正体がわからない。つまり、名前や住所を答える義務がないので、いつもいつもいつもいつも見かけるが、名前や住所はわからないという現象が発生する。良くも悪くも、名前と住所を名乗る義務はないのである。われわれはそういう正体不明の相手と世界を共有しているのである。これは都市空間ならではの匿名性とも言える。そしてわれわれはそういう匿名性を謳歌しているのも事実である。今はコロナでマスク生活だが、基本的には顔をいつも晒しながら、匿名の人間として街を徘徊している。物事には一長一短があり、誰が誰なのかすべて身元を把握している村社会が素晴らしいというわけではあるまい。むしろ名前と住所を名乗る義務がない都市空間をわれわれは楽しんでいる。であるから、自分の身元が不明である代償として、他人の身元も不明になってしまう。
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