黒い漆塗りの壁を持つ松本城
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「烏城は誤り」と呼び掛ける松本城ホームページのバナー
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松本市の国宝松本城ホームページに「松本城の別名について烏城(からすじょう)は誤りです」と書かれたバナーが登場した。カラスの絵に禁止マークを付けた画像でインパクトがある。この呼び名は浸透しており、パンフレットや旅行サイトの文言に見られる。なぜ「カラス禁止」になったのだろうか。
市教育委員会松本城管理事務所によると、「烏城」という表現は歴史的な文献などに存在しない。職員の山下太一さん(39)は「見つかっていないものを呼ばれていたとも、いなかったとも言えない」。岡山城(岡山市)は「烏城」と書いて「うじょう」と読ませるため混乱を避ける狙いもある。
黒い漆塗りの壁を持つ天守は松本城の魅力の一つ。1970年代前後にツアーで松本を訪れたバスガイドたちが黒塗りの城を紹介する際に広めたとの説や、「白鷺(しらさぎ)城」との別名を持つ姫路城(兵庫県姫路市)との比較で呼ばれるようになった―との説がある。管理事務所は「あくまでうわさレベル」とする。
市教委がホームページにバナーを出したのは8月。旅行雑誌や図鑑編集者から管理事務所に確認で送られてくる文章に「松本城は別名烏城とも呼ばれている」と書かれるケースが多かったことがきっかけ。文献にない以上「烏城」の記述は避けてほしいとその都度、訂正を求めてきた。
根拠がある別名は「深志城」。松本城の研究専門員、宮島義和さん(59)は「元は別の場所にあった城を現在地へ移した際に深志城と呼ぶようになったのか、移す前から深志城と呼んでいたのか2説ある」と説明する。史料「信府統記(しんぷとうき)」などに記述が残っているという。
ただ、松本城を訪れる人の中には「昔から烏城と呼ばれている」との声があるのも事実。管理事務所の手島学所長は「誤り」との表現に「(根拠のない名称が)一方的に広がる恐れがあることを理解してほしい」としている。