『天穂のサクナヒメ』には別の同人サークルが開発した「ラグナロクエンジン」を使用。複数のサークルが制作に携わる独自のゲーム開発体制を代表者らが解説

 同人ゲームサークル「えーでるわいす」が開発し、マーベラスから発売されたアクションRPG『天穂のサクナヒメ』。稲を育てながらキャラクターを育成し、横スクロールアクションを体験していくという斬新なコンセプトで、パッケージ版が品薄になるなどSNSを中心にゲーマーたちの話題をさらっている。村山竜大氏による可愛らしいキャラクターデザインも好評だ。

 そんな『天穂のサクナヒメ』について「えーでるわいす」代表のなる氏がTwitter上にて、同作は同人ゲームサークル「にゃっほい屋」が開発した「ラグナロクエンジン」が使用していることを明らかにした。

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(画像はSteam『天穂のサクナヒメ』より)

 本作の開発のきっかけについては、2018年の「BitSummit」のステージイベントで明らかにされており、「えーでるわいす」が手掛けた『アスタブリード』をBitSummitに出展していたところ、マーベラスUSAからオファーされたのがはじまりだったという。

 『天穂のサクナヒメ』においては、その『アスタブリード』で使っていた「えーでるわいす」内製ゲームエンジンが使用されているが、その不足分を補う形で「ラグナログエンジン」は使用したと、なる氏は伝えている。
 利点としてはWindows、PS4、PS Vita、Nintendo Switch、iOS、Androidに対応している点が挙げられており、各ハードの低レイヤーとテクスチャやシェーダー互換の提供、それにモデルとモーションの基本機能を担当したそうだ。

 「ラグナロクエンジン」に関しては、『天穂のサクナヒメ』でモーション製作を担当した、同人ゲームサークル「クロスイーグレット」のくろろ氏も触れ、負荷が軽く動きがいい点や、調整項目が少なく使いやすい点などを利点として挙げている。

 この「ラグナロクエンジン」を開発したのは、『にゃっほいのクピルス』などを手掛けた同人ゲームサークル「にゃっほい屋」。エンジンと名前がついているが、正確にはシェーダ、テクスチャ、モデル、モーションなどの機能を提供するマルチプラットフォームライブラリだという。

 またこの「ラグナロクエンジン」の開発は、さらに別の同人ゲームサークル「souvenir circ.」が開発した『クロワルール・シグマ』がきっかけとなって始まった。「えーでるわいす」と「にゃっほい屋」の仲介をはたしたのも、この「souvenir circ.」だという。さらに『天穂のサクナヒメ』は、ほかにも「A-Nest」という同人ゲームサークルが開発の手伝いをしている。

 つまり『天穂のサクナヒメ』はマーベルが発売、また法人ではジェプドロップが開発に協力しているが、「えーでるわいす」、「にゃっほい屋」、「souvenir circ.」、「クロスイーグレット」、「A-Nest」というさまざまな同人ゲームサークルのコミュニュティが生んだ独自の開発体制によって生まれた作品といえそうだ。

 なお同作の開発の経緯やグラフィックのノウハウについては、2020年12月号の雑誌「CGWORLD」で詳しく触れられており、内製ゲームエンジンだけではグラフィック機能が低機能だったこと、そこで大手のゲームエンジンの導入を検討をしたが、どうしても習熟に時間がかかってしまうことから、ラグナロクエンジンの導入を決断したことなどが記されている。
 『天穂のサクナヒメ』をプレイし終えて、開発の背景が気になった人は、「CGWORLD」の購入を検討してみてはいかがだろうか。

【※更新 2020/11/17 18:40】 開発に参加したくろろ氏のプロフィールについて記事中の本文を加筆・修正しました。


ライター/福山幸司

ライター
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福山幸司
85年生まれ。大阪芸術大学映像学科で映画史を学ぶ。幼少期に『ドラゴンクエストV』に衝撃を受けて、ストーリーメディアとしてのゲームに興味を持つ。その後アドベンチャーゲームに熱中し、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がオールタイムベスト。最近ではアドベンチャーゲームの歴史を掘り下げること、映画論とビデオゲームを繋ぐことが使命なのでは、と思い始めてる今日この頃。
Twitter:@fukuyaman
  • 3DCGダイマ ”大手のゲームエンジンの導入を検討をしたが、どうしても習熟に時間がかかってしまうことから、  『天穂のサクナヒメ』開発の背景が気になった人は、「CGWORLD」の購入を検討してみてはいかがだろうか。”2020/11/21
  • game2サークルどころじゃなくて連合状態になっているの、すごいな2020/11/19
  • ゲーム同人天穂のサクナヒメ『アスタブリード』の出展がこの座組みのきっかけだったのか。BitSummitがしっかり展示会として機能してて凄い。国内メーカーではなく、マーベラスUSAからだったのもなるほど。2020/11/19
  • クロワルールシグマもPSVR対応してて、面白いゲームだったのを覚えてる。2020/11/18
  • OSSみたいな文化的な何かじゃないかな、使いやすかったんだね2020/11/18
  • えらいもんやったなあ2020/11/18
  • ゲームラグナロクってなんか東方みたいな言葉だよね(本来の意味を外れて特定のゲームを想起させられる)2020/11/18
  • 一騎当千2020/11/18
  • ゲームエンジンって同人で作れるものなのか2020/11/18
  • なんか話題になる要素が開発時点からてんこ盛りじゃないか。これ、一時代のお作法的なソフトになりかねない気がしてきたのでどれかのプラットホームで遊んでみないとって気がしてきた。2020/11/18
  • 昔だと個人が才能のみで頭角を現すってのもなかなか難しかったと思うが(それこそ運よくパトロンでも付かないと)、今はそういうのがやりやすい時代になってるのかもしれない。それは喜ばしいことだね。2020/11/18
  • ゲーム開発サクナヒメ遊んでいて一番不思議なのはロード時間。Switch で遊んだけど、あのレベルのポリゴンを動かしていて、なおあのロード時間なのは何なの?2020/11/18
  • 7144勢としてはな2020/11/18
  • 日本のインディー界隈も頑張ってるなぁ2020/11/18
  • "「ラグナロクエンジン」はエンジンとは呼んでますが、Unityなどのような開発環境ではなく、C++のマルチプラットフォームライブラリ"とのことhttps://twitter.com/nyahhoiya/status/13277402593045790722020/11/18
  • こういうのワクワクするよね。昔、Bio100%や渡辺製作所やTYPE-MOONに抱いた憧憬を思い出す。2020/11/18
  • 技術力さえあれば作りたいものが作れるというね2020/11/18
  • CGWORLDはアニメの演出家インタビューとか主題の3DCGの周辺フォロー範囲が広いよね。 https://cgworld.jp/interview/2020/11/18
  • メモ2020/11/18
  • 音楽に絶対音感があるみたいに動きを関数化させる感覚的な才能みたいなのも出てくるのかなと思うと人間の適応能力はすごいなと思う。2020/11/18
  • この界隈全く素人なんだけどエンジンってそんなに簡単にマージできる物なの?2020/11/18
  • 買い物リストに追加。手の込んだ米作りシステムが話題になっていたし、面白いなと思って興味は持ってたけど開発の経緯からさらに敬意が生まれた。2020/11/18
  • 同人サークルということは、本業が別にあるのかな。すごい。2020/11/18
  • 一人でマルチプラットフォーム対応の3Dゲームエンジン開発とかすごすぎる。どのレイヤーから作ってるのかがすごい気になる。2020/11/18
  • 会社だろうと個人だろうと結局一人の有能がすべてをひっくり返すんだよなあ。なんつうか自分が凡人だという事実をまざまざと感じさせられてしまう2020/11/17
  • 一人でつくったエンジンってマジかよ神エンジニアじゃん2020/11/17
  • CGWORLD 12月号も買おっと2020/11/17
  • ゲーム開発独自エンジン、マルチプラットフォームに対応してたのね。2020/11/17
  • やってる感じ、あまり牧場物語には似てない。2020/11/17
  • 途中にマーベルって書いてるけど、販売はマーベラスね。2020/11/17

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