中二階にある遠藤の実験室の階段を降りたあたりに、様々な薬品や実験器具が置いてある棚があり、その下に容器に入れてハチミツが置いてある。
アストラル丹を作るときは、ここからハチミツを調達する。
そして、麻原の子供たちがおやつにハチミツが食べたくなった時に、遠藤に言えば遠藤がハチミツを少しだけ瓶に入れて持ってきてくれる事になっていた。
つまり、麻原の子供たちは、ハチミツがどこに置いてあるのか知らなかったのだ。
その日が来るまでは。(笑)
その日、僕はサティアン内の廊下を歩きながら、色々と考え事をしていた。
そして、遠藤の実験室の階段の前を通るときに、ハチミツが残り少なくなってきたので、ドラム缶から容器に移し替えなきゃいけないなと思っていた。
ちょうどそのとき、向こうからやってきたカーリーとすれ違った。
すれ違いざまに、カーリーは何気なくぽつっと口にした。
「ふ~ん、ハチミツって、そんなとこにあったんだ。」
はいっ?
何だ、今のは?
もしかして、心を読まれた?
まさかなあ。
という感じで、その場は終わった。
サマナはとにかくワークが忙しい。
余計な事を考えている暇などないのだ。
部屋に戻ってワークを続けていると、なんだか外が騒がしい。
かしまし娘たちが騒いでいるみたいだが、いつものことなので相手にしないでおこう。
しばらくたって、アストラル丹のハチミツを取りに行くと、
ない。
ハチミツがありません!
いや、多少は残ってはいる。
ハチミツは粘りのある液体なので、その粘りのある分だけ容器の底のほうに残ってはいるのだが、それ以外はごっそりなくなっている。
おそらく、容器を丸ごと持ち上げて、ひっくり返したのだろう。
それにしても、容器の中にはまだ2、3キロのハチミツが残っていたはずだが、そんなに大量のハチミツを一体何に使うつもりなのだろう。
恐ろしい奴らだが、その発端はカーリーの他心通だ。
おもわずこのとき、よく映画やアニメの超能力者が登場するストーリーのセリフが脳裏をよぎった。
「この、化け物め!」(笑)