【練り直し中】ゴヲスト・パレヱド — Record of Vanishing Life —
雅彩ラヰカ@文:イラスト比率4:6
【序】金の糸
プロローグ バニシング・ライフ
バニシング・ツインという言葉がある。
生まれてくるはずだった双子の片割れが、胎児段階で死んでしまう、あるいは双体妊娠するが片方が流産などによって死亡し、死んだ子はそのまま母体の子宮に吸収され消滅する。この現象が、片割れが消滅したかのように思われるためバニシング・ツインと呼ばれているものだ。
進行如何によっては奇形——いわゆる寄生性双生児として生まれるが、それは後述するので一旦置いておく。
ある学者は全ての人間には生まれてくるはずだったもう一人を犠牲にしている、本来は多胎受精をしているはずが、妊娠が発覚するときにはたいていが単胎と認識される=共通して人類全てがバニシング・ツインと考えているらしい。
僕はそこに加え、さきほど記した『消えた子が残った子に取り込まれている』——つまり、全人類が奇形ではないかと考えていた。
遺伝的なそれとはかけ離れた特徴や才能、外見であれ内面であれ、そういった突然変異的な才覚や技能はこれが原因ではないかと思うのだ。
消えていった命を僕は〈バニシング・ライフ〉と呼ぶ。本来機能すべき生命力が霊的な力となって発露した結果が、僕たちが妖力と呼ぶものの正体ではないか。
そしてそれをはじめとするエネルギーが妖術や、もしくは奇跡とか因果とかという摩訶不思議な力の源であるというが僕の持論だが、妖力に限らず妖怪と言う存在それそのものが、この現象がきっかけで生まれたと僕は考える。
さて、僕が生み出す〈金糸〉がそれにどう関係するかだが、それは発案した僕自身が未だに信じられない。
消えた命を励起させ、純粋な妖怪として覚醒させる力を持つ金糸は万病の特効薬、死者蘇生をも可能とすると僕は考えている。しかしそれは本来の用途の副次効果に過ぎないし、その程度のものを研究するほど僕は浅はかでも、暇を持て余しているわけでもない。
この金糸によって本来あるべき妖怪の力を十全に取り戻せた場合、それはもはや妖しい怪異などではなく、神の使いとすらいえるほどの絶大な力を持つと考えられる。
僕が求めるものはまだ完成には程遠いが、しかし金糸によって得られる力に偽りはない。
人類が一つ上の次元にいくための鍵であり、はしごだ。
僕たちが神という存在の領域に踏み入れるヘビーステップ、それを後押しする起爆剤でもある。
なにがあってもこの金糸を完成させる。僕の生涯をかけてでも、どれだけの犠牲を払おうとも、必ず成し遂げてみせる。
金森要一の手記より一部抜粋
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