医師が憂慮する事案(臓器売買・臓器狩り) 中国は臓器売買の恐れがあるからダメです。または、生きている人から臓器を取っている(臓器狩り)等の理由から帰国患者に対して診療を拒否される医師がいます。 古くは20年前の法輪功学習者への迫害、近年ではウイグル族から臓器を取っているなどの、生々しい写真(両肩からYの字に切開跡)がネット上に掲示されたりしています。 移植医が見ればメスの入れ方が臓器の摘出ではなく検死の開胸であることは明白ですが誰も反論しません。 医師の多くは、患者が病院を去り渡航する事に賛同しません。また透析病院の先生方や看護師の方も、風評に同調されている様に思います。 移植医療の現場を説明したいと思います。 移植センターは問診から退院するまで、以下①~⑥記述のようにすべて欧米と同様の分業体制になっています。 ① 問診の専門医が診療情報を精査後にヒアリングします。 ② 次に移植の各種適応検査が各専門医により実施をされます。 ③ 検査結果を精査して移植が適正と内科医が承認すれば所見とエビデンスが外科医へ提示されます。(内科医の判断に外科医は原則、介入できません) ④ 外科医は、あらためて移植手術の可否を判断し、適応なら移植手術が実施されます。 ⑤ 術後はICUの専門医がダメージ・コントロールします。外科医は関与しません。 ⑥ 次に病棟へ移動し各フロアーを管理する専門医が退院までフォローアップします。 上記の各過程に於いて各専門医が対応するので日本の「主治医制度」とは異なります。欧米へ留学された先生は、ご承知かと思います。 年間500例を超す各種臓器の移植に対応する大規模な移植センターは世界的に同様のシステムを採用しています。一人の外科医が取り仕切る主治医制度では多くの患者に対して移植治療ができません。(米国では病院に所属しない独立した外科医が主導するケースあり) 事例の紹介 7年程前ですが、クリニックを経営する院長(60歳・男性)から「現在、透析中です。海外で腎移植をしたい」旨の電話が入り説明に来るように言われ自宅兼クリニックを尋ねました。 面会した瞬間に私は「これは無理かも知れない」と感じました。 極度の肥満体形で身長170センチほどに対し体重100Kg近くはあるように見えました。 私は肥満体形の方は移植の適応検査で不可となる事を説明しましたが、院長は意に介さず「すぐに出発する。透析をしてたら仕事にならん(透析3年)」と渡航を決められました。 現地に到着した翌日に問診を受けましたが、彼は腎移植の適応検査を受ける事もなく不可の裁定となってしまいました。 問診した内科医(女医)の所見は「体重オーバーです。自己コントロールできない方は腎臓を貰う資格がありません」わざわざ日本から来たことに対し配慮する気配もなく、あっさりとした対応でした。 私自身は予想していた事ですが、当人には受け入れ難いと察したので、その場で言わずホテルへ戻り説明する事にしました。 その理由は前年、71歳の院長(福岡)が現地で移植を断られ憤慨し、その日の夜に行方不明になった一件があったからです。 (日本の基準では適応でも移植センターは不可と判断) 予想通り院長は「留守中の医師も手配しているので簡単には帰れない・・」上から目線で威圧的な発言を繰り返されました。 日頃からお世話になっている腎移植の執刀医(女医・米国にて博士号取得)にも尋ねましたが「あと10Kg減量したら、また来てください」との回答でした。 院長から「さらに500万円上乗せするから何とかしてくれ」と言われ、私は「500万円は不要です。明日、副院長に頼んでみます」と答えました。※裏金で判断を変える人達ではありません。 翌朝、副院長(肝移植外科医・京大医学部、田中教授に師事)の見解は「現場の判断を私が曲げてしまったら組織運営に支障を来すので、残念だが変えられません」と日本語で回答されました。 常識的な対応であり年間、数百例の移植を切り盛りする現場に個別の心情が入り込む余地は無いのです。 帰国中の機内で院長は「移植をしなければ君たちも商売にならないじゃないか・・」とても失礼な言葉を私に浴びせました。 諸経費を差し引いて残金を指定の口座へ返金すると院長から「本当に返金するのか・・他の病院を探せ」と電話が入りました。 その後、院長が亡くなった旨の連絡を奥様から受けたのは帰国後わずか3ヶ月後のことです。 臓器はパトカーに先導された救急車によってアイスボックスに入れた状態で24時間、昼夜の区別なく搬入されて来ます。その光景を11階(外国人専用フロアー)から見下ろしながら日々感じるのは、これらの臓器が日本で報道されている「臓器売買・臓器狩り」によって秘密裏に摘出したとは、どうしても思えないのです。 もちろん臓器を摘出している現場に立ち会っている訳ではないので断言はできませんが、明確な役割分担のもとに移植手術が実施されている現実や、移植の適応基準を厳格に遂行されている現場を知る者からすると違和感を持ちます。 私が聞く限り、臓器売買は限られた関係者が自分達の利益を得るために小さな病院の手術室を借りて、ドナーとそのブローカー・レシピエント(移植希望者)と仲介者・執刀医と麻酔科の医師が夫々タックを組み離合集散を繰り返し実行するものと認識しています。臓器狩りも同様かも知れませんが、実態は不明です。 国立移植センターの各専門医が個人的利益を得る仕組みにはなっていません。 医療機関に対し研究費名目の寄付金は必要となりますが、米国と対比すると極めて少額です。 脳死判定の臓器配分を優先的に受領する立場にある国立移植センターが臓器売買や臓器狩りに関与する必要性は希薄に感じます。 また、臓器売買に関しては2008年北京オリンピック開催の前年より各種犯罪の厳しい取り締まりが徹底的に実施され、その関係で臓器ブローカーの暗躍はまったく聞かなくなりました。 共産党は国家イメージ向上の一環として威信をかけて犯罪の取り締まり強化したのです。中国に在住してる方でしたら、どなたも承知されている事です。 支援活動に関心ある方へ 「助けられる命は助けるべき」この主旨に賛同して頂ける医療関係者のご協力もしくはご支援を賜わりたくお願い申し上げます。 移植センターへの現地視察は随時実施しています。渡航移植の実情をご自身の目で確認されたい方はご連絡ください。現場をご覧になれば新たな発見があると思います。(今年は7月以降の予定) また、担当されている患者様の中で移植治療を必要としている方がいましたら、視察に一緒に見えても差し支えありません。 今日まで大学の教授・外科医(消化器2名・泌尿器科1名)・が私どもの案内で移植センターを視察されています。 また、視察関係者の紹介で14名の命が助けられました。しかし、残念ながら1名が現地でもう1名が帰国後に亡くなられています。 14名の方はいずれも日本に居ては助けられなかった命です。 経済力のある患者様ばかりではありません。限られた資金内で移植治療を望まれる方も少なからずいらっしゃいます。目の前の患者が、生きる望みを繋ぐことは医師の情熱、本懐ではないでしょうか。 法令に渡航先の制限はございません。国内及び渡航国の法令を遵守し「助けられる命は助けるべき」この信念のもとに、適切な移植治療をサポートするのが私たちの活動です。 あとがき 私どもが案内した患者様の中で最も多い職業は医師です。 看護師・病院職員・医薬品メーカ・医療機器の製造、販売会社等も含めると20%前後は医療関係者です。 その理由は移植手術が最良の根本的な治療方法と熟知されている事や、所得の高い方が多いからだと思います。 多くの日本人はアジアを蔑視する傾向がございますが、渡航の有力な選択先として検討する価値はあると思います。 例えばインドの医療レベルは極めて高く、英国の外科医の40%近くは印僑系です。また米国の外国人医師枠(10%)の多くは印僑系が占めている事実があります。海外研修の経験者はご承知かと思います。 世界に目を向ければ、脳死判定しても摘出されない臓器があります。 それらの臓器を有効活用すれば助けられる命は数多くあることをご承知願います。 ※ 浜松裁判(医師の診療拒否)理事長挨拶を参照:難病患者支援の会 (npo-online.org)
(転載・配布自由) 令和3年2月10日
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