「何人も、移植術に使用されるための臓器を提供すること若しくは提供したことの対価として財産上の利益の供与を受け、又はその要求若しくは約束をしてはならない。」
(臓器移植法11条より抜粋)
解説
臓器を経済取引の対象とすることは人々の感情に著しく反し、移植機会の公平性を損ない、さらに善意・任意の臓器提供という臓器移植の基本的な考え方にも支障を来すからです。
「業として移植術に使用されるための臓器(死体から摘出されるもの又は摘出されたものに限る。)を提供すること又はその提供を受けることのあっせん(以下「業として行う臓器のあっせん」という。)をしようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、臓器の別ごとに、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。」(臓器移植法 12条より抜粋)
解説
現時点で認可を得ている団体は「日本臓器移植ネットワークしかございません。取り出された臓器を誰に移植するか、その選択により生死を分けてしまうので、臓器の斡旋・仲介する者は公平・公正でなければなりません。厳しく管理監督する必要から厚生労働大臣の認可事業となっています。
渡航移植と法令について
また、移植を必要とする者が日本国内で対価を支払い、臓器を貰うことや日本移植ネットワーク以外の仲介者を通じて臓器を貰うことも禁止されています。
一方、臓器移植の目的で海外に行くことに関して、制限は無く海外の医療機関を自由に選択することができます。(但し、臓器売買は固く禁じられています)
WHO(世界保健機構)は自由な渡航移植を許せば経済力を有する者が貧しい国々へ臓器を貰いに行くことなり兼ねない恐れから自粛勧告をしています。
また、日本移植学会はWHOの勧告に従い「倫理指針」に於いて渡航移植に対して協力しない立場を取っています。
そのために多くの医師は臓器移植を必要とする患者に対して渡航移植の説明を積極的に行わず家族間の生体移植を勧めています。
しかし、WHOは生体間の移植について「健康な体にメスを入れる行為は医療本来の姿ではない」とも勧告しています。
WHOは海外渡航せずに自国内で脳死ドナーによる医療制度の確立を各国に促しているのです。この部分で大きく立ち遅れているのが日本の現況と言えます。
WHOの勧告並び日本移植学会の「倫理指針」には法的制約はございません。
最善の治療を求めて
医師は患者に対して最良の治療方法を説明する義務がございます。
また患者は最良の治療方法を選択する権利があります。
日本国内に限定せず海外での治療を含めた臓器移植を広く検討されるべきと考えます。
2006年5月12日 |