現役官僚インタビュー 法務省
~国民の安心・安全・利便のために~
三枝 稔宗
Toshimune Saigusa 民事局民事第二課 補佐官
入省後の略歴と職務内容
・2004年 法務省民事局民事第二課
不動産登記制度(権利の登記)を担当。採用時は、明治32年に制定された不動産登記法の大改正を実施している時期で、
法律改正に伴う一連の流れ(法律・政令・省令・通達の改正)を経験。
・2005年 名古屋法務局民事行政部法人登記部門
地方機関である法務局において、商業・法人登記に関する業務を担当。法務省で決定した施策がどのように現場で運用されているか
を経験し、現場で使いやすく分かりやすい制度設計をすることの重要性を実感。
・2006年 法務省大臣官房秘書課
・2007年 外務省総合外交政策局人権人道課
初めての他省庁出向。英語に悪戦苦闘しつつ、人権理事会や国際人権規約に関連した業務を担当。人権理事会が開催される
スイス・ジュネーブへの海外出張も複数回経験。
・2009年 法務省民事局総務課
・2010年 法務省民事局商事課
・2011年 国土交通省土地建設産業局地籍整備課
・2012年 法務省人権擁護局調査救済課
・2013年 法務省人権擁護局人権啓発課
法律で作成が義務付けられている「人権白書」の取りまとめ(法務省以外の府省庁の人権関連施策について、原稿作成を依頼)・
作成や報道でも大きく取り上げられたヘイトスピーチ対策の検討を担当。
・2014年 法務省大臣官房訟務部門(現:訟務局)訟務企画課
・2015年 横浜地方法務局法人登記部門
・2016年 法務省民事局民事第二課
・2018年 外務省大臣官房在外公館課
2回目の外務省出向。在外公館で締結する契約書のリーガルチェックや相談対応、海外で日本政府を被告として提訴される
訴訟対応を担当。
・2021年 法務省民事局民事第二課(現職)
不動産登記制度(表示の登記)、土地の所在位置・境界を明確にした精度の高い地図を整備する施策(登記所備付地図の整備)、
報道でも大きく取り上げられることがある「所有者不明土地問題」に関する施策のうち、相続によって取得した不要な土地を
国が引き取る制度(相続土地国庫帰属制度)を担当。
Q1 国家総合職(入省先)を志した理由を教えてください。
インタビューのタイトルにしました「国民の安心・安全・利便」に関わる仕事、法律を使った行政の仕事に携わりたいと考えていました。法務省を志望したのは、「法務」と名前が付いていることもあり、上記のイメージに最も近いと思ったというシンプルな理由です。
法務省に入省以降、採用局である民事局を中心に、国民が安心することができる制度・安心して利用することができる制度、国内的にも対外的にも安全と評価してもらえる制度、国民にとって利便性が高い制度に関与する機会に恵まれ、採用時に思い描いていたイメージどおりの仕事に携わることができたと思っています。
Q2 今まで経験されたお仕事で、最も心に残っていることはなんですか?
一つは、入省直後に経験した不動産登記法の大改正です。採用されたばかりでほとんど役には立てなかったのですが、法律の改正から施行に至るまでは、改正法が成立したらそれで終わりではなく、政令・省令・通達を改正・制定し、実際に制度を運用する地方機関(法務局)と様々な調整をした上で改正法の運用が開始されます。この一連の流れを採用1年目で実感することができたことは大変貴重な経験でした。また、改正の際に作成した書類の様式が全国の法務局で使用されたことも思い出の一つです。
もう一つは、外務省に2回目の出向をした際に、ラトビアの民間企業と土地売買契約の交渉を担当した事案です。現地大使館での交渉がなかなかまとまらず、一人でラトビアに出張して、企業のCEOと直接交渉をしました。交渉の論点は、日本とラトビアの法制度や登記制度の違いをお互いどこまで受け入れられるかと売買金額の2点でしたが、法務省での経験、特に不動産登記制度を担当していた経験が最大限活きる展開となりました。交渉の結果、日本政府が提示した条件を最終的には受け入れてもらい、CEOから「Accept」と言われた時のことは忘れがたい経験で、法務省出身者ならではの交渉をすることができたと思っています。
Q3 これから取り組みたいお仕事はどんなことですか?
私が所属する民事局では、政府の最重要課題の一つである「所有者不明土地問題(不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地。所有者が分からないと円滑な土地取引が阻害される)」に関し、前例にとらわれない様々な施策を打ち出しています。例えば、これまでは任意だった相続登記の義務化や相続によって取得した土地を国に引き取ってもらえる新制度がスタートする予定で、少し前では考えられなかった施策が次々と始まります。
上記のように、現在の社会情勢や時代のニーズに応じた機動的かつ効果的な施策の立案を行い、それによって国民の安心・安全・利便に資するような仕事に関与していきたいと思っています。
Q4 キャリアをめざす受験生へ熱いメッセージをお願いします。
国家公務員(総合職)の仕事は、全国的に影響を及ぼす仕事が多く、時には各府省庁を代表する仕事、時には日本政府を代表する仕事もあります。こうした影響の大きい仕事をしたときに得られる達成感や高揚感は、国家公務員(総合職)ならではの醍醐味です。
法務省は、法の運用に固いといったイメージを持たれがちですが、伝統的な法の運用に留まらず、時代のニーズに応じた柔軟な運用も兼ね備えた省庁です。職場では、日々の業務で常に法律に触れ合うこと、そして、霞が関の中でも法律の知識・解釈力に優れた職員が多く、そうした中で経験を積み重ねることによって、法的思考力、説明力や交渉力など様々な能力のレベルアップが可能ですので、皆さんに自信を持ってお勧めできる職場です。
本インタビューをご覧になった方が、国家公務員(総合職)、そして法務省に興味を持っていただければ大変嬉しく思います。皆さんと一緒に働ける日が来ることを楽しみにしています!