子どものスマホにあるわけがない

もうお分かりでしょう。テレグラムは、いわば「消えるチャット」で追跡捜査が困難になるので、密売側からすると最良の交信ツールというわけです。

「ウィッカー」も似たようなアプリですし、最近では「ワイヤー(Wire)」というアプリも使われます。いずれも機密性が高いことから、ポルノ情報のやり取りや浮気相手との交信に使われ、特殊詐欺グループなどの犯罪組織やテロ組織が情報交換に用いているとも言われます。

もちろん、アプリ自体を危険と言い切ることはできません。それこそ、企業が先端技術に関わる極秘情報を扱う際に、漏洩や流出を防ぐためにこうしたアプリを用いることは十分に想定できます。しかし、それほど秘匿性の高いアプリを、中学生や高校生が利用する必要はあるでしょうか。言うまでもなく、彼らがそんな機密を持ち合わせているとは思えません。

流行りはTwitter→「テレグラムチャンネル」の誘導

そして、テレグラムを巡ってはもう一点、注視すべき点が浮上しています。それは「テレグラムチャンネル」の存在です。

【写真2】テレグラムのチャット画面
【写真2】ストロベリーコフ、ウエディングケーキ共に、大麻の品種の隠語(『スマホで薬物を買う子どもたち』より)

写真2をご覧頂ければ、ツイッターと同様の販売広告が、テレグラムにも掲載されていることが分かると思います。

2021年夏ごろから、このテレグラムチャンネルでの薬物密売が確認されるようになり、22年に入って以降は、より顕著なものとなっています。ツイッターを舞台に薬物密売に手を染めていた者たちが、マトリ(麻薬取締官)をはじめとする捜査機関の監視から逃れるため、テレグラムチャンネルに販売広告を移行させているのです。

テレグラムチャンネルは、テレグラムの機能のひとつで、ユーザーが画像やメッセージをアップロードできる広告板を指します。作成するために必要な「テレグラムチャンネルID」は、テレグラムのIDさえ持っていれば容易に取得でき、また、テレグラムIDを持つ誰もがテレグラムチャンネルを閲覧可能です。

密売人はテレグラムチャンネルに掲載した情報のなかに、自分のテレグラムIDを記載しており、客側はそのIDにメッセージを送信するという仕組みです。

悪知恵の働く密売人は、ツイッターには「色々あります」とだけ書き込み、「テレグラムチャンネルID」を記載してそちらに誘導する。

なかには「テレグラムチャンネルID」しか記さないケースもあります。「とりあえずテレグラムチャンネルを見てくれ」という意味です。客側も事情を理解しているため、そのテレグラムチャンネルを閲覧して「このチャンネルの発信者は信頼できるプッシャーだ。価格も申し分ない」などと判断。広告主のテレグラムIDにメッセージを送って商談に及ぶわけです。

テレグラムチャンネルを利用した密売は、ツイッターのようにアカウントから相手の素性を調べることができません。現状では情報の削除要請も不可能です。捜査側の立場からすると、今後に残された大きな課題と言えるでしょう。