タバコを吸うのっていろいろ良いことがありますよね。
リラックスして頭を切り替えられるし、仕事をしていると喫煙所で喫煙者同士のコミュニケーションを図れるのは圧倒的な強み。
食欲が減るから自然とダイエットになるし、何よりおいしい1)。
今の世の中はどこへ行っても「禁煙」「禁煙」で吸える場所を探すのも一苦労。ようやく見つけた喫煙所でも狭い場所に押し込められるありさま。
喫煙者はいつも肩身が狭い思いをしています。
今後もずっとタバコを吸っていくにあたって「自分はタバコの良いところも悪いところも理解している。理解した上でタバコを吸うという選択をしているんだ」と胸を張れるよう、今回はタバコが歯におよぼす影響について、「どう悪いのか」「どれだけ悪いのか」お話をしていきたいと思います。
歯周病のリスクが4倍
お口の中の二大疾患の一つ、歯周病。
歯周病は虫歯以上に歯を失う原因となっています2)が、歯周病のリスクは非喫煙者の4倍とされています3)。
※喫煙有のリスクを100とした場合
きちんと予防に取り組めば?
とはいえ、きちんと予防ができる医院に通い、教えに従って自分自身もしっかり予防に取り組めば、タバコ以外の部分のリスクは相当下がります。
タバコはやめられないにしても、それ以外のことを頑張ればどのくらい改善するのかちょっと考えてみましょう。
実際に日本で予防にしっかり取り組んでいる医院と、取り組んでいない一般的な医院のデータを比較するのが一番なのですが、そういったデータを収集し分析した報告がうまく見つからなかったので、ここでは
日本の歯科のデータ → 予防にそれほど取り組んでいない患者さん
スウェーデンの歯科のデータ → 予防にしっかり取り組んでいる患者さん
と仮定をおいて考えることにします。
スウェーデンは歯科予防大国だからです。
両国の80才以降の歯の本数を比較してみましょう4)。
これだけ違います。
歯は全部で28本なので(親知らずを除く)、失った歯の本数でいえば、日本は14.4本、スウェーデンは6.9本ですから2倍以上の差。
喫煙の有無・予防の有無でリスクをグラフに表すとこんなふうに整理できます。
※喫煙有かつ予防なしのリスクを100とした場合
タバコを吸っているとどう頑張ってもハイリスクになってしまうんですね…。
喫煙者と非喫煙者の比較症例
グラフだけだと分かりにくいですし、正直「本当なの?」と疑わしいところもあるので、喫煙者と非喫煙者の比較症例を見てみましょう。
ここで比較する二人は双子、一卵性双生児です。
遺伝子が同じ二人、タバコを吸う吸わないでどれだけ違うのか。
ご覧ください5)。
もう一つの事例は、日本で最もきちんと予防に取り組んでいる歯科医院の一つである、大西歯科(兵庫県神戸市灘区)に通っていた患者さん。
「超一流の予防型歯科医院にきちんと通い、本人もものすごく頑張っていた」喫煙者の症例です5)。
この2種類の症例からあらためて分かるのは、「タバコを吸うか吸わないかで非常に大きな差が出る」こと、そして残念ながら「超一流の予防をほどこしてもタバコを吸っている人の歯は守ることができない」ことです。
歯を失ったあとインプラントもできない(?)
タバコを吸っていると歯を失ってしまうので、失ったあとにどうするかが問題になります。
歯を失ったあとの選択肢は基本的にこの3つ。
1. ブリッジ
2. 入れ歯
3. インプラント
基本的にはお金が出せるのであれば6)、インプラントが機能的にベストなのですが、喫煙者はインプラントができません。
そうはいっても実際に喫煙者でインプラントを入れてもらった方もいると思います。
ご安心ください。
その歯医者さんは、インプラントが喫煙者に適応でないことを知らない低技術なヤブ医者か、知っててやっちゃう詐欺師的なヤブ医者のどちらかです。
ですので、実際にはインプラントをまったく入れられないわけではありません。
ただ、治療してもらえるのがヤブ医者限定になる、ということです。
親がタバコを吸うと子供も虫歯に
もう一つはオマケでお子さんへの影響です。
こちらについても国内外で報告が出ていますが、例えば2015年に発表された国内の論文7)では
親が喫煙者でお子さんが受動喫煙していた場合: 虫歯のリスク2.14倍
親が喫煙者でお子さんが受動喫煙していた形跡がない場合: 虫歯のリスク1.46倍
という結果が出ています。(3歳児時点のリスク)
もちろん大多数の親御さんはお子さんに健康被害が出ないよう日頃から目の前でタバコを吸わないようにしていると思いますが、残念ながら目の前で吸っていなくても、虫歯のリスクを1.46倍に高める程度には健康被害を出してしまうようですね。(喫煙後にも親御さんにはタバコの有害物質がまとわりついていたり、呼気の中に含まれていたりする影響と思われます)
まとめ
以上、タバコが歯に与える影響についてご紹介させて頂きました。
タバコを吸っていると、どう頑張っても歯を残すことはできませんし、ご家族の歯も失わせることになります。
とはいえタバコの快楽にあらがうのは難しいもの。
「これだけ悪いことが起きる」ということだけは理解した上でタバコを吸い続けるのも良いですし、もしやめたいのであれば禁煙外来に行くのも良いと思います。
喫煙は中毒症なのでプロの手を借りないと普通はうまくやめられないからです。
きちんと歯を守りたい、予防に取り組みたい方は、都営三田線 志村坂上駅徒歩5分、板橋区志村坂上ゆき歯科医院まで。お電話でご予約の上お越し下さい。
ゆき歯科医院の場所や診療時間:
https://www.yuki-dc.jp/access/
ゆき歯科医院の予防歯科の流れについて:
https://www.yuki-dc.jp/prevention/
1) 事務長はタバコを吸ったことがないので、喫煙者から聞いた話を書いています
2) 公益財団法人8020推進財団『第2回 永久歯の抜歯原因調査』(平成30(2018)年11月)より
3) Smoking-attributable periodontitis in the United States: findings from NHANES III. National Health and Nutrition Examination Survey. Thomar SL, Asma S. (J Periodontol 2000 ; 71(5) : 743-751.)
4) スウェーデンのデータはSwedish dental journal vol.39 2015、日本のデータは厚生労働省 平成28年度歯科疾患実態調査による。
5) 『歯周病の病因論と歯周治療の考え方 (HOME DENTIST PROFESSIONAL)』より症例を引用
6) 1本40万円くらいのお金が出せて、なおかつ健康上の問題がなければ