イイダはスーパージャンプではなく、●●で移動!?

――テンタクルズは、 ヒーローモードにも登場して彼女たちの謎が描かれるのかと思ったのですが、 今後、 彼女たちのお話はどこかで語られる機会があるのでしょうか?

野上 いまのところは、とくに語っていませんね。そもそも彼女たちに謎があるのかどうか。……みんな、気づいていませんけど。

――え!? そ、そうですね!

天野 なんで、気づかないんでしょうね?

――……えっと、じゃあ、以前にもおうかがいしましたけど、イイダはタ……。

天野 あれ? 僕、何か言いましたっけ? すみません、お茶のおかわりください!

――……。ヒーローモードにテンタクルズを出す話はなかったのでしょうか?

佐藤 シオカラーズももともとの役割は、バトルの案内とフェスの進行役だったんですね。それが、ヒーローモードに出張していったという経緯でしたので、今回もヒーローモードの役割は引き続きシオカラーズで、テンタクルズがバトルやフェスの案内役をしています。

野上 遊びがメインなので、複雑になりすぎないようあまり登場人物は増やさず、シオカラーズのふたりに焦点を当てました。

――テンタクルズのふたりはとても仲がいいようですが、どういった関係なんですか?

井上 ふたりとも個人としては尖った人たちなんですが、波長が合っているんですね。シオカラーズは小さいころからずっといっしょだったこともあって、ボケとツッコミみたいなバランスが取れていますが、テンタクルズはふたりとも天然だけど奇跡的なバランスで成り立っていますね。

野上 関係としては、先輩と後輩ですね。

『スプラトゥーン2』イイダの移動手段、ダウニーとスパイキーの関係性、死を超えたグリルの存在……イカ世界の深淵に迫る濃厚インタビュー!_25
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――ああ、なるほど。先輩と後輩というのは、同じ学校だったりしたんでしょうか?

井上 いえ、先輩気質……というだけで。

――気質!

野上 あとは、ヒメが先に活動をしていたというのもありますね。

――「ぬりたくーる...テンタクル!!」の決め台詞はどうやって決まったんですか?

井上 もともと、前作が『スプラトゥーン』というタイトルに決まる前のタイトル候補のひとつに、“ぬりたくるテンタクル”というのがあったんです。

――あれ、タイトル候補だったんですか!

井上 語呂はよかったんですが、タイトルには選ばれず。それを僕が覚えていて、復活させたんです。 だから、もしかしたら『スプラトゥーン2』は“ぬりたくるテンタクル2”になっていたのかもしれません。

野上 それが通っていたらね(笑)。

――テンタクルズ絡みでおうかがいしたかったことがありまして……。前作のインタビューで、マヒマヒリゾート&スパなどの街から遠いステージには、イカたちはスーパージャンプで行くということをうかがったんですが、じゃあイイダはどうやって移動しているんだろうと。

井上 ……電車移動ですね。

一同 (爆笑)。

井上 DJセットとか、荷物が多いんで。

佐藤 ガチホコ持ってたら、イカも飛べないですからね。

天野 あのDJセットは、つねにゴロゴロ移動させてるはず。

――予想外すぎる答えでした(笑)。あと、テンタクルズはフェスのお告げなども引き継いでいますが、シオカラーズから引き継ぎなどはあったのでしょうか?

井上 引き継ぎがあったどうかはわかりませんが、ハイカラニュースのパーソナリティーが変わりますというタイミングがあって、番組のほうでは2週間くらいダイジェストが流れる期間があって。

――ダイジェスト(笑)。

井上 それを経て、受け継いだんでしょうね。

野上 京都の祇園祭には“お稚児さん”という役割があって、一連の作法に決まりがあるんですが、それはお稚児さんが伝承しているわけではなくて、まわりの人が伝えているんですよね。だから、フェスの作法もそういうふうに決まりがあって、受け継がれる方法があるんだと思います。

――フェスで言うと、今回ミステリーゾーンが登場しましたが、あれはイイダが「用意しました」と言っているんですよね。ミステリーゾーンは、イイダがどういうふうに作っているんでしょうか?

佐藤 イチから組み立てているというわけではなく、場所を押さえているんだと思います。機械いじりが好きなので、ある程度は自分で作業もやっているかもしれませんね。

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――もしかしたら、イイダが重機を動かしていると(笑)。ヒメも知らないあいだに。

井上 そうですね。パパっとやっちゃってます。きっと。

野上 それで、ヒメもよくわかってないけど、「イイダ、すげえな!」と(笑)。

天野 イイダもみんなに楽しんでもらえるのがうれしいタイプなんで、けっこうパパっと。

――パパっと(笑)。

佐藤 パパっとやりながらもこだわってると思うんですよね。一度作ったものを、やっぱりこっちに動かそうとか。

――楽しそうに(笑)。あのミステリーゾーンの背景は、ヒーローモードで見た場所っぽいですが……。

佐藤 どこでしょうね?(笑)

野上 ちょっと違うところに行ってるっぽいんですが、イカもよくわかってない(笑)。

天野 ロビーから移動してるんですけど、ガバって目を開けると、よう知らん場所にいると(笑)。

――ミステリーゾーンの構造は、ふつうのステージよりも実験的な試みを感じるのですが、どのように作られているのですか?

佐藤 開発中にはたくさんのステージが作られるんですが、その中には「これ、ナワバリバトルだとおもしろそうだけど、ガチマッチはちょっと」というものや、「ちょっと遊ぶならめっちゃ楽しいけど、1年間ずっとあったらどうだろう。でも、捨てるのはもったいないなー」というものが前作からたくさんあったんですね。私たち開発スタッフがテストプレイするときは、すごく楽しんでそれを遊んでいるんですが、この経験を私たちだけのものにしておくのはもったいないな、というところで、お祭りのいましか味わえないものとして登場させるというのが、もともとのスタートですね。

――では、ストックはたくさんあると。

佐藤 ネタのストックはたくさんあるんですが、世に出すときはちゃんとしたものになっていなくてはならないので……。

野上 いざ再度試してみると、意外とそのまま使えないなってものもあって。

佐藤 ですから、あくまでもベースのものが多くあるというイメージですね。

――一度登場したミステリーゾーンが、今後再度遊べるようになったりするのでしょうか?

野上 しばらくは一度きりですね。いずれ遊べるようにはするかもしれませんが、いまのところはそのときしか遊べない特別感を重視したいと思っています。

とあるアイドルの影響を受けまくったタコたち

――ヒーローモードのお話もうかがいますが、『スプラトゥーン』公式Twitterで、ヒーローモードのステージを使ったタイムアタック動画が公開されましたが、ああいったアプローチは開発中に試していたりしたんですか?

野上 テストはもちろんしていますが、とくに秒単位などで競えるように仕込んだのは、いくつかのステージだけですね。

――あの動画はすごいプレイでしたね。

天野 あのステージでタイムアタックをするのが、開発内で流行っていたんですよね、

佐藤 「今日はこんなにタイム縮めたぜ」とかみんなで言い出して、そのうちに「あそこはチャージキープを使ったほうが早い」とか研究が進んでいった結果があのステージで実を結んで、動画を撮ったんですね。その過程がとても楽しかったので、お客さんにもやってほしいなって。

野上 それで、動画がけっこういいタイムだったので公開することにしました。「この記録を超えられるかな?」という若干挑戦的な気持ちもあったんですが、わりとすぐに超えられてしまいました(苦笑)。

――なるほど(笑)。そのヒーローモードですが、とあるアイドルの影響か、タコの世界にいろいろと変化があるように見えます。

井上 とあるアイドルが、「これはかわいくない! もっとかわいくして!」と出した注文に、タコが真面目に応えた結果です。

――とあるアイドルは実際に口を出しているんですね。

井上 はい。そのヒトの指示書みたいなものが、ミステリーファイルにあるんですね。

――ああ! それにしても、タコはとあるアイドルに忠実なんですね。

井上 タコワサ将軍が連れてきたので。

野上 タコは真面目なので、階級には弱いんです(笑)。

――今回、一度クリアーしたステージでは、またデンチナマズのぬいぐるみが登場しますが、あのぬいぐるみは前作からの在庫ですか? それともホタルが縫っているとか?

井上 あれは在庫ですね。前作のヒーローモードで、アタリメ司令の家の裏に、ぬいぐるみがたっぷりあったと思いますが、あれです。たぶん枯渇するまで、まだだいぶかかると思います。

――そんなに(笑)。ミステリーファイルにはアタリメ司令からの手紙もありましたが、どういった調査を3号としているんでしょうか?

天野 パトロールですね。

井上 3号とちょっと奥のほうまで行っている。もしかしたら迷子になっているかもしれないですね。

――では、アタリメ司令と3号は、今回起こっている事件はまったく把握していない、と?

野上 そうですね。今回の事件は、時間的にはそれほど長くはないので、アタリメたちがパトロールに行っているあいだにちょっと起きた事件、というイメージです。

――3号は、ずっといっしょにいるんですか?

天野 そうですね。お手伝いをしています。

野上 2年のあいだに、パトロールに行ったり帰ってきたり、行ったり帰ってきたりと、ずっとくり返しているイメージですね。

――ヒーローモードの各ワールドが、進んでいくにしたがって、どんどん廃れた場所になっていっている気がするのですが、どういった意図があるのでしょうか?

井上 今回、どんどん底に行くというか、ストーリーの核心に迫っていくという部分の、まさに“核心”をグラフィックでも表現したくて。前作はどんどん上っていくものだったので、今回は逆に深く潜っていくという。ストーリーを踏まえたデザインにしています。

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――ヒーローモードのBGMは、 前作の曲を踏襲しつつ、ポップなものも増えていますね。

峰岸 これも、とあるアイドルの影響で「女子っぽく」なったわけです(笑)。タコたちを統制するためのテクノ的なビート感は維持しつつ、ボサノバや歌謡曲、ディスコなどの要素で“デコった”感じにしようというのがコンセプトです。

――BGMをかけているのはDJタコワサですか?

峰岸 そうですね。もしくは、好きな曲をかけていいよって言われた、とあるアイドルが流しているのかもれません。

野上 タコワサも、とある事件をきっかけに新しい音楽の効果に目覚めたんだと思います。「このサウンドは使える!」と。自然に踊り出してしまうくらいですから、タコたちをより統制できると思ったのかもしれません。

――そして、クライマックスが、バトルや曲、演出を含めて、ものすごく一体感のある盛り上がりになっていますが、あのシーンはどのように作られたのでしょうか?

井上 いろいな要素が詰まっていて、個別に積み上げていくとまとまらなかったので、セリフやカメラ、音楽の演出も含めて、マンガで描き起こしたんです(下の写真参照)。36ページの。

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クライマックスシーンが描かれた井上氏直筆の マンガ。細かな描写やセリフまでしっかりと描き込まれ、ページ数はなんと36ページに及ぶ!

――36ページ!?

井上 短編読切くらいのボリュームで、「これがやりたいんです」と伝えて。ですので、クライマックスシーンはこのマンガに沿って作ってもらうようにしました。

――絵コンテ代わりのマンガ……。そんなことって、ほかのゲームでもあるんですか?

野上 あんまりほかの現場ではない……というか、ここだけですね(笑)。

井上 流れを伝えるには、これがいちばんやりやすかったんですね。ガチホコのところもそうですし、曲の移り変わりも書いてあって。セリフの収録のときにも使ったんですが、こういう盛り上がりなんだなって伝わるので、よかったですね。細部は変化していますが、ほぼこれをベースにしています。

峰岸 サウンドチームもそのマンガを資料に曲を作っていきました。ただ、じつは前作のラストフェスの時点で、どちらか負けたほうが本作のヒーローモードの終盤に登場して、その彼女のソロ曲がアレンジされてバトルBGMになる……という計画が決まっていたので、ふたりのソロ曲はそれも想定しつつ作った曲だったんです。

佐藤 だから、計画としてはラストフェスより前の、ソロ曲を作った時点で想定していたんですね。

――そんなころから……! 結果的には、両方のアレンジ版を流すことになったと。

峰岸 そうですね。掛け合いでは両方使いましたが、最初に登場するのは『トキメキ☆ボムラッシュ』で。また、「ふたりのソロ曲を絡み合わせることもできますよ」と簡単なデモ音源を作って伝えたところ、 井上がそれをうまくマンガに取り入れてくれて、『ボムラッシュの夜』となって実を結んだんです。

井上 まあ、助けに来たのにずっと歌ってるってことになっちゃってますが(笑)。

野上 助けるために歌ってるから(笑)。

井上 だから、4号ががんばってる。

――(笑)。サウンドチームもマンガを見て、さらにアレンジを進めていったわけですね。

峰岸 はい。まとめていく段階では、マンガを大いに参考にしつつ仕上げていきました。

――今回の『トキメキ☆ボムラッシュ』には、なぜオーケストラを組み込んだのでしょうか?

峰岸 このうえなく、“ラスボスっぽい”からです(笑)。

佐藤 いかに黒幕感を出すかを、タコワサととあるアイドルのふたりで考えていった結果、オーケストラになったんでしょうね。