今回は私の気まぐれでビールが飲みたくなったので、キリンの元祖と定番を飲み比べたいと思います。

今回比較するのは、元祖として「キリンラガービール」、定番として「キリン一番搾り」となります。
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キリンラガービール

キリンラガービールはキリンビールの元祖になります。元々は外国人によって設立(元々あった企業を再建)されたジャパン・ブルワリー・カンパニーによって1888年に発売されたビールのブランドで、後に麒麟麦酒が設立された後にブランドが引き継がれました。

戦後に入ってからトップシェアを得るビールとなりましたが、1987年にアサヒビールがスーパードライを発売してから人気が逆転するようになりました。
麒麟麦酒は独自にドライビールを販売しましたが振るわず、転じてキリンビールの名称を「キリンラガービール」に改め、多くの有名人をCMに起用してブランド力の回復を追求しましたが、それも叶いませんでした。

1990年になって、後述する一番搾りを販売して2正面作戦に挑みますが、今度は一番搾りにも人気を奪われるようになりました。

1996年には、長らく熱処理で作られた製法を改め、生ビールとなり、アルコール度数も5度に引き上げられ、スーパードライと同じ度数となりました(これによって従来売られていた青ラベルの生ビールを廃止)。

しかしライトな味わいにしたことで従来からの愛飲者が離れる事態を引き起こしたため、2001年に熱処理タイプのクラシックラガーが販売されるようになりました。

近年ではほとんど宣伝がされず、認知度が低くなってはいますが、現在も販売が続けられています。

キリン一番搾り

1987年に販売されたアサヒスーパードライに対抗しようと、翌年にキリンドライを販売するも覆すことが出来ず、麒麟麦酒は独自のキレのあるビールを追求することになりました。

その結果、発酵が進んだもろみからビール原酒を絞り出す際に、自然と絞り出されるものだけを使ってボトリングをしようと考えました。
一般的なビールでは、自然に絞り出された原酒(キリンの言う一番搾り麦汁)と、あとからお湯を加えてもろみに残った成分を更に出す(二番搾り麦汁)事をしますが、二番搾りでは渋味などが出てしまうことで重い印象があるとのことです。
また、当初はアルコール度数は5.5度とスーパードライよりも辛口に仕上げていました。

通常よりも仕える原酒の量が減るために、当初はプレミアムビールとして出すことも検討されましたが、当時の社長の決断によってレギュラービールとして販売されました。

こうして発売されたキリン独自のドライビールとなった一番搾りは、徐々にキリンの定番として人気を得るようになりました。

2009年には、麦芽100%に原料を変更し、アルコール度数も5度に引き下げられ、ドライ感を抑えてピュア感を上げるリニューアルが行われました。

2020年には青いボディの「糖質ゼロ」が発売され、注目を集めました。

テイスティング

まずキリンラガービールですが、ホップの香りが広がったあと、麦芽や米などの甘い香りが広がります。
味わいは、ホップからの苦みは強めで、後々になって麦芽や米などからのうま味が広がる印象です。

一方で一番搾りは、ホップの香りは薄く、麦芽の香りがしっかり広がります。副原料を使ってないこともあって、米の香りはあまりしません。
味わいは、キリンラガービールよりも苦みは弱いですが、しっかりと苦みは感じるレベルで、薄っぺらさはあまり感じられません。ただしうま味はキリンラガービールよりも少ないです。

まとめ

現在、キリンラガービールも一番搾りも、アルコール度数は5度で、辛口、ドライビールを謳っていたアサヒスーパードライと同じです。
実は現在大手ビールメーカーが販売するビール自体、アルコール度数が5度というのが一般的になり、辛口というイメージはすでになくなっているのが現実です。
むしろプレミアムビールやクラフトビールの方が度数を上げてよりドライに仕上げていることもよくある状況です。
そういう意味でも、アサヒスーパードライがドライビールではなくなっているとも言えます。

残されているのは、淡麗、つまりはキレの良さを売りにするか、芳醇、コクのある味にするかの違いになっていると言えるでしょう。

キリンの二つのビールを比べると、キリンラガービールはコクのあるビール、一番搾りはキレのあるビールを求めた作り方だと言えるでしょう。

キリンラガービールは、生ビールの製法に切り替えてもコクがあってキリンならではのホップをきかせた香りと味わいを維持していて、元祖の名を失ってはいないと言えるでしょう。

一方で一番搾りは、スッキリした味わいを追求しつつもホップの苦みは削らず、さらには麦芽のみを使うことでの一点突破のような香りが実現できているように思えます。

一番搾りはキリン流のドライビールの考え方の集大成と言えますが、昨今のコクを求める嗜好の変化によって、キリンラガービールが復権する可能性も十分あると言えるでしょう。