自民党の「組織防衛」
故人の業績を最大限に称え、弔意によって不都合な真実をうやむやにしようと断行した国葬儀だったが、逆に世論の返り討ちに遭った。なまじ国葬という大袈裟なサーカスを演出しようとしたがため、その法的根拠を問題視され、国葬に全く相応しくない故人の過去の悪行に関心が向いてしまった。
結果的に岸田政権の支持率の急激な低下を招いたが、自民党議員たちが自分達の党内事情しか見ず、組織防衛に徹するという常套手段を取ったがために、自民党との癒着により中抜きし放題だった電通、パソナの黄昏も近づいた。逆説的な意味で、安倍氏の死は政治の暗部を明るみに出し、結果的に国政に貢献することとなった。
もし安倍氏が死ななかったら、神格化はもっと進んでいたに違いない。生きていれば、オリンピックや統一教会をめぐる疑惑には蓋がされたままで、テロからの生還を英雄視され、世論に支持されて清和会の独裁体制が強化され、一気に改憲と軍備増強に突き進んでいただろう。
統一教会に関与していると見られる自民党議員が三分の二を占めるといわれる中、山際大志郎氏の大臣辞任に続くドミノ倒しは萩生田、下村、菅、細田の各氏をも巻き込むのか、暗にそれを願っている向きもあろうが、自民党議員の思いを邪推すれば、教団とは一蓮托生なのだから、調査したり、行政指導を行うのはポーズだけにとどめ、互いの生き残りのため、妥協するほかないという一点に落ち着くだろう。
教団は自民党を脅迫し、不都合な真実を暴露すると脅しつつ、組織の存続のために血道を上げる。自民党は不都合な真実の隠蔽のためには統一教会と協力関係を続けなければならない。この悪循環が続く限り、信者の詐欺被害は拡大するばかりか、政治中枢への影響力を保ち、防衛、経済、文化教育政策に関与し続けることになる。それが安全保障上、治安維持上、どれだけ大きな不安要素となるか、今一度、有権者は考える必要がある。