• 2020-08-11

事例|ヤマサ總業株式会社
大規模災害へ備え、BCP対策を30 日で完了

名古屋市に本社を構えるヤマサ總業株式会社(以下、ヤマサ總業)は、1947 年の創業以来、半世紀以上に渡って名古屋地区で事業を展開している老舗企業です。事業の中心は各種燃料類の卸し売りで、愛知県と長野県全域、そして岐阜県の一部エリアを対象に、約300 の販売店を通じて10 万件弱もの顧客に LP ガスを提供しています。

これに加え、同社では近年、住宅リフォーム事業やエコエネルギー事業、家電製品・日曜雑貨販売事業など、グループ会社とともに多角的な事業も推進しています。エネルギー事業を中核に据えつつ、こうした生活関連ビジネスを展開することで、同社では総合的な暮らしのサポートを提供する「人と暮らしのサポーター」を自負し、地域社会への貢献をより一層深めていくとしています。

 主力ビジネスを一手に支える IBM i の災害対策に課題が

創業以来、長い歴史を誇るヤマサ總業ですが、業務へのIT活用もかなり早い段階から進めていました。同社常務取締役 山下敏朗様によれば、同社のIT活用の歴史は約40年前まで遡るといいます。

「当時、法令の変更によって、主力商品である LP ガスの販売形態を『質量売り』から『メーター売り』に変更したのですが、メーター売りの場合はお客さまの需要予測に基づいて配送しなくてはなりません。この需要予測の計算作業を人手でやるのは大変なので、IBM のオフコン『System/3』を導入しました」

その後、時が経つにつれてこのシステムには販売管理や購買管理、さらには配送情報や顧客情報の管理まで、さまざまな業務システムの機能が徐々に搭載され、今や同社の業務にとって必要不可欠の重要な基幹システムとなっています。またハードウェアも、当初のSystem/3から AS/400、そして現在ではPower Systems (IBM i)と、その時々の最新機種へと順次リプレースされています。

しかし、これだけミッションクリティカルなシステムであるにもかかわらず、システムの災害対策には不安を抱え続けてきたと山下様は述べます。

「これまで自分たちで開発してきたRPG Ⅱ、RPG Ⅲの業務プログラムを有効活用するために、自社内のオンプレミス環境でシステムを運用してきました。しかし、遠隔バックアップなどは行っていなかったため、災害時のシステム復旧と事業継続に一抹の不安がありました。もちろん、日次でテープバックアップを取ったり、免震装置を導入したりと、必要最低限の対策は講じていました。しかし、いざ大規模震災に見舞われたとき、本当に事業を継続できるかどうかは、正直心許ないところがありました」

ヤマサ總業株式会社 常務取締役 山下敏朗 様

ちなみに前述のシステムでは、毎晩ディスクにデータバックアップを実行し、翌朝に人手でそれをテープに落とすというバックアップ運用を行っていました。しかしこれだけの対策では、南海トラフ地震など大規模な震災で本社オフィスが損壊した場合、システムの復旧に相当な時間を要します。さらに災害時の事業継続は、地域社会への貢献という意味でも重要なテーマだったと、山下様は指摘します。

「電気や都市ガスは、震災でインフラが機能不全に陥ると利用不能になりますが、LPガスは容器を持っていけばすぐに使えます。だから災害時のライフラインとしては極めて重要な存在なのです。しかし配送システムが停止した場合、いざというときにLPガスをお客さまにお届けできません。こうした事態を避けるためにも、システムの災害対策強化が急務でした」

 IBM iの遠隔バックアップを安価に実現

そこでヤマサ總業は、IBM 製品のSIに定評があり、かねてからIBM i を使った同社のシステム運用を支援してきたトッパンエムアンドアイ株式会社(以下、トッパンエムアンドアイ)に、システムの災害対策強化の提案を依頼しました。

ここで、トッパンエムアンドアイが提案した災害対策の実現方法には、大きく分けて 3 通りありました。

1つは、現在のシステムを丸ごとデータセンターに移行し、データセンター側の災害対策サービスを利用するというもの。しかし前述のとおり、同社のシステムはオンプレミス環境での運用が前提となるため、この案は却下されました。

もう 1 つの案は、ストレージのデータレプリケーション機能を使って、遠隔地のデータセンターにシステムの複製を作るというものでした。しかし、これを実現するには膨大なコストと時間がかかるため、これも費用対効果の観点から採用見送りとなりました。

そして最後が、三和コムテックが販売するIBM i のバックアップソフトウェア製品「LaserVault Backup」と、IBM のリモートバックアップサービス「IBM リモート・データ保護サービス」、そしてIBM i の復旧支援サービス「IBM i DR Express サービス」を組み合わせた提案でした。

LaserVault Backup は、IBM i のデータバックアップを、Windows PC のディスク上に取得します。IBM i 上のテープバックアップのオペレーションを一切変更することなく、バックアップ媒体だけをテープからディスクへと簡単に切り替えられます。また、データに高効率の圧縮をかけて保存するので、バックアップディスクの利用効率にも優れます。

一方、IBM リモート・データ保護サービスは、PC やサーバー上のデータをIBM のデータセンターにあるストレージ上に、自動的にリモートバックアップを取得するサービスです。自前で機器やデータセンタースペースを確保する必要がないため初期導入コストなしで、従量課金のみで遠隔バックアップを実現できます。このサービスと前記のLaserVault Backup を使って取得したバックアップデータを、IBM のデータセンター上にバックアップするというわけです。

ヤマサ總業株式会社様のBCPの仕組み


「この方式であれば、当社のシステムに求められる可用性を比較的低いコストで実現できると考え、LaserVault Backup とIBM リモート・データ保護サービスの組み合わせを採用することにしました。また、仕組みを構築する期間が短く済むのも決め手の1つでした。実際のところ、導入作業はLaserVault Backup のバックアップサーバーの設置とIBM リモート・データ保護サー ビスの設定のみで、期間にして1カ月足らずで完了しました。さらには万一の際のシステム復旧作業も、IBM i DR Express サービスでIBM の専門家に直接支援してもらえるので、より安心感の高い災害対策が実現できたと思います」(山下様)

 運用工数・コストの負担増なしに安心の遠隔バックアップが実現

こうして、IBM i の遠隔バックアップを安価かつ迅速に実現できたことに、同社の経営陣も大いに満足していると山下様は述べます。

「もともと当社の経営陣は、災害時の業務データ消失のリスクを大いに懸念していましたが、今回の災害対策の仕組みにより、おそらくIT以外を含めた事業継続全体の取り組みのうち、7~8 割は完了したと見ていると思います」

またシステムの運用を預かる IT 部門にとっても、今回のLaserVault Backup とIBM リモート・データ保護サービスによる災害対策の仕組みは、さまざまなメリットがあるといいます。

「LaserVault Backup を導入してバックアップの方法を変えたにもかかわらず、運用方法を一切変える必要がなかったため、運用面での負荷はまったく上がっていません。また遠隔バックアップを行う場合には、データを転送するための通信回線のランニングコストが心配ですが、これも LaserVault Backup がデータを効率よく圧縮して、転送データ量を小さく抑えてくれるので、回線コストの節約にも役立っています。総じて、今回導入した災害対策システムの費用対効果には極めて満足しています」(山下様)

LaserVault Backupの処理フロー

なお、同社では現在のところ、この新たな仕組みで取ったバックアップデータからシステムを復旧せざるを得ないような事態には、幸い至っていませんが、山下氏はそのような事態に対しても比較的楽観的に構えているといいます。

「自分たちでテープバックアップを取得している場合には、いざというときに果たしてきちんとリストアできるのか、またそもそもバックアップデータは完全な形できちんと取得できているのか、どうしても不安な面がありました。しかしその点、今回採用したIBM リモート・データ保護サービスの場合は、IBM という信頼できるベンダーの製品とインフラを使ってバックアップを取っていますから、安心感がまるで違いますね」

 将来の展望|モバイルデバイスを活用したサービスも計画中

今回、基幹システムの災害対策を大幅に強化し、災害リスクを大幅に下げることに成功したことで、同社は今後、地域社会へのより一層の貢献を目指していくとしています。また、さらなるビジネス成長と地域発展への寄与に向けて、IT の活用もさらに促進していきたいと山下氏は抱負を述べます。

「現在当社では、リフォーム事業に力を入れていますが、タブレット端末をはじめとするモバイルデバイスをうまく活用することで、お客さまにより価値の高いサービスを提供できると考えています。たとえばリフォーム工事を行う前と、行った後の予想図などをタブレットで提示することで、よりお客さまにとって最適な製品やサービスを選んでいただけるようになると考えています」

またエコエネルギー事業などでも、機器を導入・設置する前と後とで光熱費の推移を比較・提示できるような機能をタブレット端末で実現したいとのこと。

このように同社は今後、エネルギー関連事業以外の分野でも積極的にITの力を活用していくことで、さらなる飛躍を図っていくことでしょう。

COMPANY PROFILE

本社:愛知県名古屋市
設立:1947年
資本金:9600万円
売上高:102億8000万円(2018年)
従業員数:155名(2019年3月末)
事業内容:LPガスをはじめとする各種燃料類の販売、住宅設備機器の販売、建設・不動産、ガス集中監視システムや飲料水の販売など
http://ygrp.co.jp/

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