特異点(読み)とくいてん(英語表記)singular point

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「特異点」の解説

特異点
とくいてん
singular point

(1) 曲線について 平面曲線 f(xy)=0 の上で,fx(ab)=fy(ab)=0 となるような点 (ab) をこの曲線の特異点という。曲線が自分自身と交わっている点 (結節点) ,曲線から孤立はしているが,その座標が曲線の方程式を満たしている点 (孤立点) ,曲線の方向が逆になる点 (尖点。2つの分枝が1本の接線を共有する) などは曲線上の特異点である。しかし特異点という一般的な言葉のなかには,一般性が失われて,特異性が現れる点という意味があるので,以上の3つ以外にも,平面上で特異点と呼ばれているものがある。たとえば,曲線が自分自身に接する点 (自己接触点) ,曲線が急に方向を変える点 (角点。尖点とは異なって,その点に 2 本の接線が引ける) ,曲線がとぎれる点 (終止点) ,曲線が回りながら限りなくそこへ近づくような点 (漸近点) などである。特異点は,そのほか,曲面上の点についても定義される。 (2) 関数について 関数の正則性が破れる点をいう。特に複素関数について,解析的にならない点,つまりその点のまわりでべき級数展開ができない点である。 f(z)=1/z では z=0 が極,f(z)=√z では z=0 は分岐点,f(z)= log z では z=0 は真性特異点といわれる特異点である。 (3) 微分方程式について 解の一意性が成立しなくなったり,その他の異常が生じる点を特異点という。微分方程式によっては,全体としては異常はないが個々の解が無限大に発散するなどの特異性を示す動く特異点をもつものもある。

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世界大百科事典 第2版「特異点」の解説

とくいてん【特異点 singular point】

数学ではきわめて広い意味に使われる概念で,曲線,曲面,多様体,関数,微分方程式などが,一般のところに比べて異常な形態を示すところを意味する。関数論においては,関数fが0<|za|<rでは1価正則だが|za|<rでは正則でないとき,af孤立特異点という。このとき,0<|za|<rで, (c円周zar′,(0<r′<r)を正の向きに まわるもの)が成り立つ。これをローラン展開という。また,添字のもののみの部分,のことを,ローラン展開の主要部という。

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世界大百科事典内の特異点の言及

【代数曲線】より

f(x,y)の次数がnのときn次曲線という。f(x,y)=0で定義される平面代数曲線c上の点(a,b)は,のとき特異点と呼ばれる。のときは正則点と呼ばれる。…

【力学系】より

Xの各点xに対し,{φt(x)|-∞<t<∞}をxを通る軌道という。とくに1点となる軌道を特異点または平衡点といい,閉曲線となる軌道を周期軌道という。力学系の理論では,特異点や周期軌道の存在,t→+∞またはt→-∞のときの軌道の挙動,軌道の大域的状態の小さな摂動による変化などがトポロジーの立場から研究される。…

※「特異点」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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