「コロナ後遺症」は以前と比べると社会の理解は広がりつつある。一方で、医療機関が、その存在を認識しつつも、診療に積極的でない状況が浮き彫りになっている。行き場のない後遺症患者は、受け皿を求めてさまよい“後遺症難民”とよばれている。背景になにがあるのか?

■「これ以上治療できない」受け皿がない“後遺症難民”の実態

Aさんは、2022年1月にコロナウイルスに感染した。その後、立っているのもままならない倦怠感に襲われるようになる。これはコロナ後遺症ではないかと思い、医療機関を受診するが、ある思いもよらなかった困難に直面したという。


Aさん
「コロナの後遺症外来が周囲になかったので、手当たり次第に知ってる病院に行ったんです。でも『こんな重症な人はうちのクリニックに来てないから、これ以上治療はできません』って言われました。他の病院では『別にこれくらいよくあることだからね』って言われて、終わったこともありました」

病院からの“診察拒否”とも受け取れる対応だった。Aさんは、体調が悪い中、適切な治療を求めて医療機関を探し続ける“後遺症難民”となったが、その後も受け入れ先はなかなか見つからなかった。

Aさん
「どこか相談できるところはないかなと思って看護師さんだったりとか、ネットだったり、県のホームページを調べたんですけど、そのときは、コロナの後遺症については対応してません、といった文章が掲載されていて。自治体のコールセンターに電話したんですけど『今コロナ後遺症に対応できる機関はありません』と言われました」

コロナは第8波に突入したといわれ、感染者は増加。比例するように後遺症患者も増加傾向とみられるが、未だにコロナ後遺症を診療する医療機関は限られている。

厚生労働省の調査(2022年7月)によると、コロナ後遺症の専門外来があると答えた自治体は、23%にとどまっている。一方で、コロナ後遺症の専門外来がない自治体は38%。把握自体が進んでいないからかわからないと答えた自治体は39%にのぼっている。

医療機関では後遺症患者の受け皿が圧倒的に足りないために、行き場のない“後遺症難民”が生まれ、症状を悪化させている。後遺症患者への対応が後手に回っている背景には何があるのだろうか?取材を進めると、意外な理由が明らかになってきた。