M-1グランプリ | クリエイティブ×メディアで、どこまで熱量を高められるか

CHALLENGE

PROJECT

朝日放送テレビ M-1グランプリ

クリエイティブ×メディアで、どこまで熱量を高められるか

ひとつの番組の域を超え、一大コンテンツとして近年ますますの盛り上がりを見せているM-1グランプリ。コロナ禍での開催となった2020年、参加する漫才師たちの背中を少しでも押せればと公開された「Creepy Nuts『板の上の魔物』×M-1グランプリ」の動画は、M-1ファンの間で「アツすぎる」と大きな話題となった。その動画をはじめ、M-1を唯一無二のお笑いコンテストにするべく、メディアとクリエイティブのコラボレーションに力を注ぐ電通のM-1チームがある。彼らは、何をモチベーションに、何を目指してM-1グランプリ向き合っているのか。チームを代表して高木・有元・水本・上田に話を聞いた。

最高の大会を、
最高の熱量で届けたい。

INTERVIEW

  • 高木 智広
    高木 智広
    MEDIA
  • 有元 沙矢香
    有元 沙矢香
    CREATIVE
  • 水本 晋平
    水本 晋平
    CREATIVE
  • 上田 美緒
    上田 美緒
    ART
INTERVIEW /01

すべては、「好き」から始まった

━━ そもそも、有元さんは、かなりのお笑い好きだとか?

有元有元

そうですね。特にM-1グランプリ(以下、M-1)は、人生で1番好きなコンテンツといっても過言ではなくて。2001年のM-1の第1回大会には、一般応募の「会場審査員」という制度があったのですが、それに審査員として参加していたくらいです(笑)。

━━ いわゆる「ガチ勢」ってやつですね。

有元有元

はい(笑)。だから、初めて朝日放送テレビさんとお会いして、ラフにブレストする機会があった時には、M-1への溢(あふ)れる想いを企画に詰め込んで持っていきました。すると、気持ちが伝わり、M-1のプロモーションをお手伝いさせてもらえることになったんです。一緒に仕事するスタッフも、お笑い好きがいいなと思って、水本を誘いました。

水本水本

僕も大阪出身なので、M-1は本当に大きな存在で。2001年からのM-1初期の10年間は、僕が小学4年生〜大学1回生。優勝した芸人さんたちが、一夜にして人生が変わる瞬間をリアルタイムで目撃して、憧れずにはいられなかったですね。そんな大会が復活して、仕事として微力ながらも貢献できるとしたら、なんてうれしいことだろうと思って、参加させてもらいました。

━━ この仕事に関わる上で、お笑い好きであるかどうかって重要ですか?

有元有元

私はふだんからコンテンツに関わる仕事が多いんですが、M-1に限らず、いつも感じるのは、「好きに勝る技術はない」ということ。好きの度合いに差はあっても、好きという気持ちがないと、コンテンツのファンの気持ちを理解できないし、ファンを巻き込んだ話題作りもできません。個人的には、コンテンツの仕事をする上で、「好きであること」は必要条件な気がしています。

上田上田

私も、ビジュアルをつくる時は、広告のプロとしての感覚以上に、ファンとしての感覚や気持ちを大切にしていますね。私もお笑いは好きでしたが、それにしても有元さんの愛は異常です(笑)

高木高木

僕は、実は、M-1に挑戦したことがあるんです。

━━ (一同)え!?

高木高木

2004年に。一回戦であっさり負けましたけど(笑)。だから、改めてこの仕事で久々にM-1と向き合えて楽しかったですよ。

INTERVIEW /02

「M-1にはこうあってほしい」という想い

━━ そもそも、M-1の課題はどういうところに?

有元有元

初年度は「若年層の視聴率アップ」でした。それで2018年に実施したTikTokさんとの連動企画がうまくいって。結果、2年目からは全体のコミュニケーションを任せてくださるようになったんです。そこからは、より大きな視点で、自分たちが理想とするM-1らしさを、世の中に対してどう伝えていくかを考えるようになりました。

━━ これまで実施した施策の中で、印象深い企画はありますか?

有元有元

2年目にやった、M-1の会場でもある六本木の駅構内でやった、M-1グランプリ「歴代王者展」かな。

上田上田

この王者展には、新王者の枠を白紙で用意しておき、優勝直後に差し替えるという企画も入れていて。M-1当日に、新王者となったミルクボーイさんの原稿を急いで作ったんです。優勝直後の3分間だけインタビューをさせてもらって、すぐに有元さんと水本さんがコピーを書いて、その場で撮った写真をすぐに私がレイアウトして…。始発前には掲載していたので、撮影から掲載まで、実質たったの数時間(笑)。現場で一気にワッとつくり上げる、文化祭みたいな仕事でしたね。

有元有元

実施の前は緊張しましたけどね(笑)。それでも大変だった分、芸人さんたちから直接うれしい反応もいただけました。私たちの企画が芸人さんのモチベーションを上げたり背中を押したりすることに少しでもつながっているなら、これ以上幸せなことはないです。

水本水本

どの企画も、真ん中にあるのは、出場する漫才師へのリスペクトですよね。2020年のCreepy Nutsさんの「板の上の魔物」とコラボした動画も、コロナ禍で戸惑いながらも、笑いと向き合い、M-1を通して必死に人生を変えようとしている芸人さんたちの背中を、少しでも押せるような映像を目指してつくりました。強烈な原体験を持つ一人のM-1ファンとして、どんな企画にも「M-1はこうあってほしい」という想いで取り組んでいます。

  • 六本木駅構内に掲出された「歴代王者展」

  • 初代王者から順に、歴代王者たちの言葉が並んだ

INTERVIEW /03

目指すは“お笑い界のスーパーボウル”

━━ M-1は、番組の合間に流れるTVCMもユニークですよね。

高木高木

そう言っていただけるとうれしいです。このクリエイティブチームとの協業をはじめ、ここ数年はM-1という番組そのものの価値向上にもチャレンジしてきました。将来的には、僕はM-1を“お笑い界のスーパーボウル”にしたいんです。

━━ “スーパーボウル”は、アメリカで最も視聴者が多い番組ですよね。ハーフタイムに流れるCMも、各ブランドが趣向を凝らして競い合っていて人気だとか。

高木高木

はい、まさにそんな状態を目指したくて。番組だけではなく、合間のCMを含め、「M-1という時間」すべてを楽しくしたいんです。そうすることで、番組のメディアとしての価値も高まる。実際、M-1の番組内で流れるTVCMの注目度は上がっています。

水本水本

僕は、日清食品さんなど、M-1のプレミアムスポンサーさんのTVCMをつくらせてもらうことがありますが、大会を盛り上げるために、みんながあの手この手で、その日その時にしか見ることができないTVCMをつくる。お祭り感があってワクワクしますよね。今年は各社どんなCMを用意しているのかも楽しみです。

高木高木

M-1で流れるTVCMを話題化することで、スポンサーであるクライアントさんにも注目が集まるし、何より見ている視聴者も楽しい。こうしたシナジーは、サッカーW杯やオリンピックなどのスポーツ分野の中継番組ではあるけれど、お笑い番組としてはM-1が唯一です。

有元有元

他社のプロモーションに刺激を受けたクライアントさんから、「次の年はこういうことをしてみたい!」と新しいチャレンジの種が生まれてくる。高木さんはじめ、ラジオテレビ局の方たちがクライアントさんを巻き込んでくださるから、すごくポジティブな流れができていますよね。その盛り上がりの土壌があるから、M-1の大会本体を担当している私たちも、毎年新しい企画にチャレンジできるんです。

  • 決勝当日まで、白紙で掲出されていた新王者の枠

  • 決勝翌朝、新王者ミルクボーイの原稿に差し替えられた

INTERVIEW /04

M-1が教えてくれたこと

━━ プロジェクトがスタートして、今年で4年目。みなさんそれぞれの仕事に向き合う姿勢にも影響はありますか?

上田上田

チームのみなさんや、現場の芸人さん、スタッフさんの熱量を直に感じたことで、自分自身の熱量もグッと引き上げられた感覚があって。コンテンツを好きになればなるほど、仕事がどんどん楽しくなっていくことも、私にとっては新鮮な気づきでした。

水本水本

僕にとってこの仕事は、1年の最後に自分の仕事との向き合い方を見つめ直す機会になっています。「このネタで人生を変えてやる」という芸人さんの覚悟を見ると、「自分はそこまで強い想いで仕事に向き合えているか…」と問われているようで、身が引き締まるんですよね。来年はもっと頑張ろう!と。

有元有元

私は、「打ち合わせをもっと楽しくしたい」と思うようになりました。クライアントである朝日放送テレビのみなさんは常にボケるので、打ち合わせがとにかく面白い(笑)。いい空気はいい仕事を作ってくれます。関西人であることを忘れがちでしたが、私もふだんの打ち合わせから周りを巻き込む楽しい空気をつくりたいと、いつも勉強させてもらっています。

高木高木

メディア局で働く私にとって、クリエイティブチームと連携できたことは、大きな収穫でした。ラジオテレビ局×クリエイティブという布陣でこの先もいろんなことに挑戦していきたいですし、M-1を通して感じたこの可能性を、他のライブコンテンツにも広げられるように、今後も力を注いでいきたいです。