東京五輪・パラリンピックのテスト大会をめぐる入札談合事件で大手広告代理店の電通や博報堂に家宅捜索が入ったことが大きな話題となっている。世界中で感動を呼んだスポーツイベントの裏側が〝真っ黒〟だったとなればショックを受ける国民も多いはず。札幌五輪招致の機運にも水を差すどころか、障害になりかねない。

 東京地検特捜部と公正取引委員会は29日、独禁法違反(不当な取引制限)の疑いで広告業界3位の「ADKホールディングス」のグループ会社と電通のグループ会社を家宅捜索した。これまでに電通、博報堂のほかにイベント制作会社「セイムトゥー」、番組制作会社「フジクリエイティブコーポレーション」なども捜索されている。テスト大会の計画立案業務を落札した9社のうち8社が捜索対象となった。

 この計画立案業務の一般競争入札は2018年に競技会場1~2か所ずつ計26件実施され、半数が1社しか応札しなかった。9社と、うち2社による共同企業体が落札し、契約総額は約5億3800万円。9社と共同企業体はその後、随意契約でテスト大会や本大会の運営を担当。契約総額は約200億円に上るといい、特捜部などは巨額の随意契約締結を見据え、談合が行われた可能性があるとみている。

 特捜部らの動きとは別に東京都も調査チームを設置して調査を始めている。大会組織委員会に出向していた職員は多く、聞き取りを進めているという。都議会関係者は「都議会も動かないといけない。その場合は組織委会長だった森喜朗氏を参考人招致するくらいのことをするべきだが、都議会第一党が自民党であることを考えると揉めそう。それでも早くやるべきでしょう」と都議会でも調査は必要だと指摘した。

 談合が指摘されているのは18年の件だ。大会組織委員会の理事には都議会議員も名を連ねるなど、都議会との接点はあるだけに不審な動きの情報は出回っていなかったのだろうか。ある都議は「正直、気付かなかった。出向していた都職員も気付けたかどうか疑問だ。組織委には意思決定の場に理事会があり、都議会議員も出席していたが、理事会の前に、物事を事前に決める話し合いのようなものがあって、さらにその前に決まっていることもある。実際に物事が決まっていく過程はブラックボックスになっていて理事でも分からないことがあると聞いた」と振り返った。

 幸い、都議会では「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に係る文書等の保管及び承継に関する条例」を成立させており、組織委内部の文書は残っているはずだ。「成立させておいてよかった。捜査や調査の役に立つんじゃないか」(前出の都議)

 談合疑惑がもたらす影響は大きい。立憲民主党の柚木道義衆院議員は29日の衆院文科委員会で「由々しき事態だ。こんなことでは札幌五輪の誘致は国民や道民の理解を得られない」と指摘。前出の都議も「こんな不祥事があると北海道知事も道民に札幌五輪をやろうとは説明できないだろう」と談合疑惑は札幌五輪招致の障害になると嘆いた。

 全容解明されるまで招致活動は動きが鈍くならざるを得ない。