2 妹に会いに
女神様が離れた後、お師匠様は白銀のローブをたなびかせ、白銀の髪をかきあげた。
「あと、百日で全てを終わらせよう。十二の世界には、この世界も含まれる。まずは、この世界で仲間を集めるのだ。その者らの協力を得つつ、十一の異世界を巡って百人の仲間を探そう。異世界へは私が案内する」
そう言ったお師匠様の右手に『勇者の書』の百一冊目が現れる。物質転送の魔法だ。
「お前の『勇者の書』だ。これからお前は、勇者としてこの書を綴るのだ。おまえは、私の跡を継いで賢者となるのだ。これから移動する。荷物を持って来い。私はおまえの家族や、要所の顧問たちにテレパシーで連絡をとっておく」
「俺の家族? 家に帰れるのですか?」
「おまえの妹に会いに行く」
カルネに……?
「お前の妹は『兄の力になりたい』とこの十年、修行を積んでいた。萌えられるなら、仲間にしてやれ」
10年間この山の中で暮らしていた俺とは違い、お師匠様は転移魔法でいろんなところに来ている。
だけどカルネに会っていたとはしらなかった。
小さかったカルネも、もう16かあ……大きくなったかな……
「2、3日中に王宮や魔術師協会も訪れる。魔王の出現は国、いや世界中の大ニュースだ。この世界を救う勇者のために各機関が、戦力となる女性を集めてくるだろう。なるべく戦闘力のありそうな人間を選んで、萌えろ。おまえが萌えた瞬間、相手は仲間枠に入るのだ。その後もっと強そうな相手に会ってもジョブが被っていたら、仲間にできん。それに、仲間にできる相手に条件はない。腰の曲がった老女でも、ナイフやフォークより重い物を持った事がない令嬢でも、赤ん坊でも、おまえが萌えたら仲間だ。戦えぬ者ばかりを集めるなよ」
そうか……そうだった……
萌えた瞬間、相手は仲間入り……
仲間枠は、百。
不用意に萌え続けたら、戦闘力の低い仲間ばかりが増えてゆき……
魔王の1億のHPを無くす為に、俺は究極魔法を使わざるをえなくなるのだ……
改めて事態の深刻さを意識しつつ、オレは扉を閉め、自分用の部屋へと戻って行った。
『勇者の書 101――ロラン』 覚え書き
●女性プロフィール(No.000)
名前 シエル
所属世界 勇者世界
種族 人間
職業 賢者(魔王を倒した勇者専用のジョブ)
特徴 お師匠様・無口・無表情・超美人
勇者の教育係。協力者。現在、不老不死。
神降ろしができ、憑依体となって神様の意志を伝える。
異世界を自由に行き来できるらしい。
移動魔法・物質転送・テレパシーなどの魔法を使える。
オレを強制自爆させられる。
戦闘方法 戦闘はしない(賢者は勇者の助言者って立場)
年齢 五代前の勇者だったから、百歳ぐらい。
容姿 腰までの白銀の髪に。色白。白銀のローブ姿。
口癖 『おまえは、私の跡を継いで賢者となるのだ』
好きなもの 不明
嫌いなもの 不明
勇者に一言 『あと、百日で全てを終わらせよう』
◆作者からの大事なお願いです◆
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