みなさまには、日頃より当社の活動にご理解とご支援をいただき、誠にありがとうございます。今般の公表で、通期予想を赤字見通しへと、大きく下方修正することとなり、また中期経営計画も未達に終わることとなり、誠に申し訳ございません。下期以降は、身を削ることも厭わず、業績回復に取り組み、自らの掲げる未来の実現に向けて邁進いたしますので、引き続きご理解ご支援のほど、よろしくお願い申しあげます。
コロナ禍からの回復の糸口を掴めないうちに、ウッドショックによる急激な原価高騰に飲み込まれ、大きな痛手を受ける中でも、前期は基本戦略へは確かな手ごたえを感じ取りました。これを受け、2023年3月期は、これまでとは異なる角度からのマーケティング力を高め、未来への道筋を描く回復の期としてスタートしましたが、残念ながら上期受注が大不振となり、通期予想を赤字見通しへと大きく下方修正することとなりました。
一般的に、顧客の希望を現実化するフリープランを主力とする住宅業界では、その都度のコストで見積もりを出すことができますが、BESSの場合、なるべくお求めやすい価格でお届けするために、予めコンセプトからデザインした標準型プランの「情報先出しの価格表」を提示するスタイルをとっています。それは損得をものさしとした売り手・買い手の視点ではなく、「自分らしい暮らし」の実現のための作り手・使い手という関係を目指しているからです。
とは言え、家を建てるには、検討から現実化まで様々な手続が必要で、その期間は長いもので1年以上かかります。その間の原材料価格の変動リスクをすべて当社が負う仕組みの中で、今回、折り重なった価格高騰を吸収しきれず、遅ればせながら価格政策を前に進め、新たな価格を出すに至りました。しかし、それが大幅値上げという結果となり、顧客予算との乖離が大きくなったことで、計画の現実化にブレーキを掛け、集客数減以上の受注減を招いてしまいました。
そこで下期からは、改めてBESSファン層にマッチするマーケットプライスに近づける方向で事業力の回復に向かう取り組みを開始します。まずは緊急対応として、顧客層の広いワンダーデバイスに、収益は確保しつつも価格を抑えた特別モデルを10月15日より投入しました。ワンダーデバイスは、BESSシリーズの中でも特に自ら工夫したい客層に支持を得ている商品で、顧客自ら手をかけられる余地をより多く残す仕様としています。11月にはログハウスの特別モデルも発売しました。これらの特別モデルを足がかりに集客力・営業力・商品力の三位一体となる展開を回復させると同時に、一層の知恵を重ね、来期以降に向けた新商品開発も進めていくこととします。
BESS事業をスタートさせた際、「ポスト情報、意識の時代」と言いました。意識の「意」は、心の音と書きますが、見えないけれどある、それが心です。見えないから、これを発信するのはなかなか難しい。しかし、価値観が似た者同志であれば、互いに感じ合い、事実とすることができます。ニーチェも『事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである。』と定義していますが、私は、行動は意思の現れであり、行動の共有が事実となり、互いに心に共感し、感動も生むものと考えます。
だからこそ、容易に繋がることのできるようになった情報化の進んだ現代、表面的な繋がりが広がるほど、心の繋がりのなさに寂しさを感じ、真に親しい価値観を持つ人と繋がりたいという欲求を持つ人同士が惹かれ合う、そうした「情緒」に重きをおいた意思の広がりが加速していることに嬉しさを感じます。
昨今は、特に若い世代を中心に暮らしをイメージ、デザインし、自分を発信する人が増えてきました。それは決して目立つことや人からの評価を求めているわけではなく、「自分はどうしたいのか」の意識を定点とした、自分の中の満足に焦点を当てる時代が近づいてきていることを意味します。
物の所有を目的とすると、どこまでいっても満足は得られません。家そのものを物質、ハードとして扱うのではなく、その上位概念「何のために家が要るのか」に焦点を当てれば、そこには暮らしがあり、その暮らしのイメージを実現する道具として家があることが見えてきます。すでに2万を超える世帯がBESSの暮らしを楽しんでおり、「BESSと巡り合ったから、このご時世の中でも楽しく面白く暮らせている。BESSがある時代に生まれてよかった」というありがたいお手紙もいただいています。しかし、楽しく暮らしているのは、本人にその意志があるからであり、そこに反応する自分を見つけた、自分に気づいただけ、BESSはあくまでも触媒となっているだけです。その自分が価値観を共有する人たちとともに面白がり、より豊かになっている、それは、実のところ自分自身のファンであり、自分で自らの道を切り拓いている楽しさに他なりません。
勝ち負けに依存する資本主義経済の歪みは、あちこちで綻びとなって露呈し始めています。しかし、それに代わるものを見せることなく、もの言いしているだけで状況がよくなることはありません。だからこそ、それとは違う次元の暮らしの提案にBESSが役に立つのなら、それでいい。BESSが絶対的に正しいなどとは言いません。白黒つけなくていい、その曖昧さを受容する日本的な暮らしの中だからこそ、単一的なものさしから離れた自分らしさが出てくるわけです。
BESSでの暮らしの楽しさを実体験をもとに伝える、2,000組超のコーチャーたちの活動を見て、自分らしい暮らしを楽しむ、似た者同士は自然と仲良くできる、みんなの役に立ちたいという想いを持つ人の多さ、それらを実感しています。これからの時代は一層BESSが喜ばれる時代になりつつあるのだと大いに勇気づけられています。
BESSで暮らす仲間たちに共通して見られる「人とうまくやっていきたい」「人の役に立ちたい」といった人柄に依る暮らし方こそ、日本らしい暮らしなのではないかとも思います。度量が大きく、心が広い。そうした日本人が本来、携えていた「どうも戦や諍いは嫌だな」「自慢も嫌だな」といった感性からくる自然な振る舞い、本来の日本の暮らしのあり方をDNAレベルで呼び覚まされる人を増やしていく、我々が「程々」と呼ぶ価値観への原点回帰、これは決して日本を自慢するということではありません。
自らの中にある日本的な暮らしにどう気づいてもらうか、BESS事業の価値を改めて見つめ直すと同時に、資本主義経済の負の側面が見えてきている今こそ、この「程々」のバランシズムを世界に発信していくチャンスである、発信を強めていく、そのタイミングにあるとも捉えています。
ですから現状を真摯に受け止めると同時に、改めてこのBESSの道を進み続けることに腹を括り、この難局を確実に突破していかなければなりません。
当社は経営理念で「相互の利益」を謳っており、顧客の利益はもちろん、自らも利益を得なければならないと本能的にわかっています。私たちはBESSファンのためにいるのであり、私たちのためにBESSファンがいるわけではありません。これを仲間にもっともっとわかってもらうことが必要です。同時に、仲間の不安や迷いを払拭し、現場の士気を高めることを視野に入れ、私自身の動きも一層活発化していきます。まだまだすべてのことをやり尽くしたわけではありません。もう一度、知恵を使って工夫して、腹を括ってチャレンジし、再び顧客の手が届くBESSに近づけることをお約束します。
自らの意志で歩く人生ほど素敵なものありません。自らの感性に気づいて動き、その感性の中に正直に生きる、そうした意識の時代の現実化自体を阻むものはないとの手応えは十二分に得ており、「大きな時代の流れ」かつ「日本発」の視点から見れば、どれだけ検証してもBESSの戦略は決して間違っていないとの確信をさらに深めています。
しかしながら、内面に働きかけ、暮らしを組み立てるという相応の時間を要する事業であることも確かです。この下期は、必要な固定費の大幅削減をはじめ経営基盤の強化を実行しながら、収益力向上の道に先鞭をつける取り組みを進めていきますが、ステークホルダーの皆さまには、本当にこうした会社があることが世のためかどうかを勘考いただきながら、ぜひ見守っていただきたいと切に願います。BESSファンの気持ちを絶対に裏切ることも、灯った火を消すことも絶対にしない、覚悟を持って進んでいきます。引き続きご支援のほど、よろしくお願い申しあげます。皆様もぜひLOGWAYに足をお運びください。
2022年11月
株式会社アールシーコア
代表取締役社長 二木浩三