熱力学(3):熱と仕事とエネルギー
みなさん、ご機嫌いかがお過ごしですか。大変ご無沙汰しています。応化4回生のA.Mizunoawaです。今回は前記事に引き続き熱力学のお話でもしてみようと思います。
「熱と仕事とエネルギーの違いを説明してください」と言われたらあなたはどう答えますか?
熱とはエネルギーの形態の一種です。光エネルギー、音エネルギー、化学エネルギーなどと同列で、エネルギーそのものを指します。ですから、熱が物体から別の物体へ移動するとエネルギーが移動したことになります。このエネルギーの移動に対して物理用語としての名前は特についていませんが、このエネルギー移動が「(手や膨張する気体が)物体を押す」ことで行われた場合のみ、「仕事をした/された」という言い方をします。つまり、仕事とはエネルギーのことではなく、エネルギーの移動のことを指した用語です。
それを踏まえて、熱の移動と仕事にはどのような違いがあるのでしょう?
分子レベルのミクロな視点で考えると、それは簡単に説明することができます。熱は、多ければ多いほど温度が高くなります。温度が高いならば原子はより大きく振動しています。熱が移るとは、その振動が伝播して別の原子に移るということです。要するに「原子の不規則な運動」による運動エネルギーが移動していくわけです。
一方、仕事では気体や固体(おもりなど)が他の系を押すことでエネルギーを移動させます。押すということは全ての原子が同一方向に向かって移動するということを意味するので、これは「原子の規則的な運動」による運動エネルギーの移動と考えることができます。
つまり、系の内部エネルギーをU,吸収熱をq,なされた仕事をwとすれば「⊿U=q+w」であるという高校の熱力学で学習するこの式が意味するところは、(増えたエネルギー)=(分子の不規則な運動によって系に流入してきたエネルギー)+(分子の規則的な運動によって系に流入してきたエネルギー)という、きわめて当たり前の事実なわけです。
なお、大学に入ってからは「⊿U= Q+Win」と考えることしかなくなりますが、高校ではしばしば「Q=⊿U+Wout」と説明されることもあるかと思います。この式の場合の解釈は、(加えた熱量)=(内部エネルギーとして気体に蓄えられるエネルギー)+(気体の膨張に使用されるエネルギー)という意味です。内部エネルギーの上昇はU=(3/2)nRTから温度の上昇を意味しますから「気体に加えた熱エネルギーは必ず、気体の温度または体積を大きくするためにだけ使われる」と言い換えることもできますね。
熱力学は物理・生物・化学のどの分野に進む場合でも理系なら大学でほぼ必ず学習する重要な単元です。高校生で苦手意識をもっている人は将来必要だと思って頑張って勉強していきましょう。
それでは、今回はこの辺で。See you again!