活動を“再開”した中島みゆき(写真は2020年)
みゆきに合わせてコーラスを入れよう
一方の中島は2020年1月に「ラストツアー」と銘打った全国ツアーをスタートさせた。しかし、新型コロナの影響で翌月に中止を発表。以降、表立った活動から遠のいた。2021年3月に吉田がラジオ番組で引退の意向を明かすと、活動休止状態の中島にも引退を心配する声があがった。
だが、中島は今秋から活動を再開。9月からオンエアされたサントリーのコーヒー『BOSS』のテレビCMに出演すると、翌月には12月14日に通算47枚目のニューシングルを3年ぶりにリリースすると発表。さらに一部メディアの直撃取材に、来年の2?3月発売の予定でニューアルバムのレコーディングをしていると答えた。
このアルバムが、冒頭、吉田がラジオ番組で明かしたもの。吉田が中島のレコーディングに参加するのは、これが初めてだ。吉田によれば、2010年に放送された吉田のラジオ番組に中島がゲスト出演した際に、中島のバックバンドとして演奏すると約束したことがきっかけだという。
「今回、中島さんサイドがオファーしたのは、当時の約束だけが理由ではないでしょう。拓郎さんの引退宣言に寂しさを感じている音楽関係者は多く、中島さんもそのひとり。少しでも長く一緒に音楽シーンにいてほしい、という思いで、すでに“隠居状態”だった拓郎さんを、熱烈なラブコールで引っ張り出したイメージです」(別の音楽関係者)
吉田も、彼女の「思い」を酌み取ったようだ。吉田は自身の独特なシャウトにこだわりを持っていたが、近年は思うように声が出せなくなった。それが引退を決断した理由のひとつとされている。そのため、レコーディングの参加はギター演奏のみの予定だった。
「スタジオでレコーディングが進む中で奇跡が起こったんです。ギターを弾いていた拓郎さんが突然、“みゆきのボーカルに合わせて、バックコーラスを入れたい”と提案したんです。拓郎さんのきれいな歌声は健在で、周囲は“もっと聴いていたい”“引退はさせたくない”という思いになったようです。その思いを誰より強く抱いたのは、拓郎さんの背中をずっと追ってきた中島さんでしょう」(前出・別の音楽関係者)
吉田は冒頭のラジオ番組で、レコーディングの後に中島から直筆の手紙をもらったことを明かした。その手紙には、次のような一文が綴られていたという。
《颯爽としたお姿もつやつやのお声もお変わりなく、うれしく、安心いたしました》
これが吉田の最後の歌声となるのか。2人の友情が奏でる“エンディングテーマ”はきっと美しいだろうが、だからこそ惜しい。
※女性セブン2022年12月8日号