![[ACCシルバーを獲得した 「ヤクルトレディ」の誇りを伝える ブランドクリエイティブとは]](/2023/images/works/2/1.07613b368f53d27fb3d67566ecaa49f209392a701c2193ff7c941bfd85c99295.jpg)
ACCシルバーを獲得した「ヤクルトレディ」の誇りを伝えるブランドクリエイティブとは
人々の毎日と健康を支えている企業の一つ、ヤクルト。「終身医療」をテーマにしたドラマ『神様のカルテ』のCM枠において、東急エージェンシーは、ヤクルトを各家庭に届ける「ヤクルトレディ」をテーマにしたCM施策を自主提案しました。コロナ禍だからこそ、対面で“届ける先の価値”を積み重ねてきたヤクルトとヤクルトレディ。そこで伝えられた事実と実際に働くヤクルトレディの心の声に裏付けされたメッセージは、ヤクルトのお客さまのみならず、ヤクルトレディを含め多くの反響を呼んだといいます。プロジェクトチームの皆さんに当時のお話を伺いました。
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- 野澤 直龍
- クリエイティブディレクター/プランナー
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- 神谷 啓介
- コピーライター
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- 上野 英之
- アカウントプロデューサー
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- 宮本 碧美
- デザイナー/CMプランナー
メンバーと役割
野澤
クリエイティブディレクターの野澤です。主にプロジェクト全体の方針や、課題の発見、コアアイデアの開発をメンバーと行い、トータルでのクリエイティブのクオリティをリードしています。
神谷
コピーライターの神谷です。今回は、主にナレーションとキャッチコピーなどの言葉まわりを担当しました。また、メンバーで議論した際に、表には出て行かずとも、そこで出た意見やアイデアを言語化したりもしました。

上野
営業の上野です。クライアントと対話しながら、どういったことが課題なのか、どうお力になれるのか、最初の窓口、きっかけをつくる役目ですね。誰よりもクライアントのことを365日考えています。
宮本
宮本です。今回はCMプランナーとしてアサインしていただきました。普段は美大出身なのでアートディレクターとしての仕事が多いのですが、新卒のころにCMの案件が多かったのがきっかけで、そちらの仕事にも携わるようになりました。この案件ではアイデア出しや絵コンテを描いています。


国民的企業の節目に、メッセージをゼロからつくる
上野
ヤクルトの中期経営計画に変更があり、新しいビジョンを刷新するタイミングで、ステークホルダーの人に「ヤクルトで働いていてよかった」と思えるような施策を自主提案することにしたのです。ディスカッションを重ねる中で、神様のカルテというドラマのCM枠で流すにふさわしい、ヤクルトの素晴らしさを感じられて、かつ、このコロナ禍において人々に寄り添うような、温かいものをつくろうということにいきつきました。CMは普通15秒や30秒で制作されますが、流す時間の長さも、そこで何を伝えるかも、全部ゼロからみんなで考えようというところから、スタートしました。
野澤
まずヤクルトが、このコロナ禍において何を発信すべきか。それぞれの視点でブレストを行い、意見を出し合いました。その上で注目したのが、我々の生活を支えるエッセンシャルワーカーの存在でした。もちろんヤクルトレディはエッセンシャルワーカーではありませんが、ただ訪問販売をする存在でもありません。一人暮らしの高齢者宅にヤクルトを届けながら安否確認や話し相手になる「愛の訪問活動」など、ヤクルトレディにはさまざまなCSR・CSV活動が存在し、我々の生活を支えています。そんなヤクルトレディの営みは、我々の生活に欠かせないエッセンシャルな存在に思えて。だからこそ、彼女たちの営みをエンパワーメントするアクションが必要だと思い、ヤクルトレディを題材にしたブランデッドムービーを作ることにしました。
クリエイティブのポイント
野澤
宮本さんから、ヤクルトレディの日常の営みを伝える舞台として「ドア」をモチーフにした企画コンテを見せてもらったときに、もうこれでいいよ、とすぐOKサインを出しました。彼女たちとお客さまの日常が繋がる「ドア」があることで、ありのままのヤクルトの気持ちをコピーやストーリーで表現できる、とてもいいポイントだったなと思います。
宮本
尺が決まっていなかったことがすごく大きくて。いつもつくるCMは15秒や30秒が多く、今回いただいたお題が長尺ということもあり、やったことがなかったのでどうつくればいいのかわからなかったのです。演出が制限されたのも大きいのですが、その中で伝えたいテーマがきちんと伝わるようにできたのは良かったなと思っています。
神谷
この仕事にかかわらず、コピーを書くときは嘘をつかないようにしています。本当にそういう気持ちがそこに存在するのかというのは大事にしています。今回は特にそうです。ヤクルトレディへのインタビューを通して、どなたも楽しそうに前向きに仕事をしていた。それがCMが共感を集めるポイントになっているのではないかと思っています。
野澤
CMの終わりに、ヤクルトレディの活動を説明する長いコピーを入れています。いわゆる広告的な文法だとあまりとらないアプローチで神谷さんもコピーを書くことに悩みがあったと思います。しかし、ヤクルトレディが社会的にこんなにも意義のある仕事をしているという事実を伝えることに重きを置いていたので、撮影ギリギリまで、トライしていただきました。
ヤクルトレディから評価してもらえたことが一番うれしい
上野
ヤクルトレディから「これまで私たちが言葉にしたかったけどできなかった部分を言葉にしてもらえた」と言っていただけました。それが一番うれしかったですね。本社側もヤクルトレディのことを今まで以上に胸を張ってしっかり伝えていこうという気運に変わったのがこの施策で、のちに第二弾のお仕事にもつながりました。
野澤
これからも、私たちが誇りを持って働くためには働くことの本質的な意味が大事になってくると思っています。ヤクルトレディの知られていない素晴らしい営みに焦点を当てたことこそが、多くの方々に共感していただき、さまざまな賞※を受賞するに至ったのだと思っています。
※ACC ブランデッドコミュニケーション部門 PRカテゴリー シルバーJAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール メダリストAD STARS 入賞
野澤
クリエイターにとって、ただ依頼されたCMをつくるのではなく、物事の本質に立ち返り、誠実にクライアントに向き合う姿勢が大事だと確信しています。
もしもこのプロジェクトに新人を招くとしたら
神谷
間違ってもいいので、勇気を持って自分の視点で物事を語ってほしいです。そこに経験の差などはないはずなので、そういう人に来てもらいたいですね。
上野
愛がある人がいいです。仕事における愛って、クライアントや相手のことを誠実に考えること。それは能力関係なく誰でもできることです。それぞれの立場があり、ぶつかったりもするでしょうが、相手をもっと知りたい、力になりたいという想いがあれば乗り越えられるはずです。
宮本
ゼロベースで考えられる人ですかね。カッコいい広告っぽいものは割と簡単につくれてしまうので。オリエンを受けたときに、まずはその会社の歴史を調べたり、人に話を聞いてみたり、とにかく自分の広告をつくりたいという欲を捨てて、いかに誠実にクライアントの課題解決と向き合えるかだと思います。
野澤
相手をいろいろな角度から見て好きになれる人はこの仕事にすごく向いているのではないでしょうか。特に広告クリエイティブに携わる人はクライアントやサービスを愛することから企画が生まれるケースも多いと思うので。素敵じゃん!と思えるのはとても大事な資質かもしれませんね。