警察による交通取り締まりに関するニュースの中で、暴走族やルーレット族、ドリフト族について取り上げることは少なくない。それぞれタイプが違う、”迷惑・危険走行”の当事者なのだが、実は、みんな「暴走族」として扱われているのだ。
暴走族15人を検挙
今月も、昔ながらの”暴走族”が、神奈川県警に検挙された。検挙されたのは、川崎市を拠点とする暴走族「ワイルドソウル」「ワイルドソウル若竜会」「YTM44」「044スタイル」のメンバーら少年15人。
この記事の画像(22枚)「YTM」はメンバーの名前の頭文字から名付けられたという。「044」は、川崎市の市外局番だ。調べによると、15人は、去年9月25日午後9時半ごろ、川崎市高津区から宮前区にかけて、およそ5.6キロに渡り、暴走行為を繰り返したとされる。
容疑は、道路交通法の「共同危険行為等の禁止」。バイクに乗って、信号無視や、蛇行運転、反対車線にまで広がって走行するなどしたという。当時、暴走行為には、16人参加していたが、バイクの後ろに乗っていた少女1人については立件が見送られた。
「本当の暴走族になりたかった」
検挙された少年1人の誕生日を”記念”して、集団暴走に及んだという。暴走族の間で、「バースデー暴走」は、恒例行事のようになっているそうだ。調べに対して、この少年は、「俺の誕生日を祝ってもらうための走りだった、一生の思い出に残るバースデーだった」と供述。
さらには、「パトカーと鬼ごっこすることを“おまわり”と呼んで、わざとパトカーの前で暴走した。一般の人たちに迷惑をかけようが、暴走をやめない」と話しているという。
また、別の少年は、「俺が昭和の時代に生まれていたら鉄パイプや金属バットを持って、本当の暴走族になりたかった」「テンションがあがってスカッとした」「最初から交通ルールを守ろうなんて思ってない」と容疑認めている。
「暴走は日本の文化」「人生は一度だけ」
このように、暴走族の検挙に際しては、とんでもない”供述”が、飛び出すことが少なくない。例えば、先月、同じく神奈川県警が摘発した「横浜愚連隊」のメンバーは、「死ぬ可能性があるけど楽しさが勝った、人生は一度だけだから、ヤンチャしておきたい」と話していた。
また、別のメンバーは、「俺にとって暴走は生きがい、日本の文化。ルールなんて知らない。」とも口走っていたそうだ。警察当局は、これら昔ながらの暴走族について、「爆音を伴う暴走等を集団で行うもの」として、”共同危険型”暴走族と位置づけている。
これに対して、車のタイヤを鳴らしながら危険な走行を繰り返す「ドリフト族」や、東京の首都高環状線を、まるでルーレットのようにグルグル周回しながら、速さを競う「ルーレット族」については、”違法競争型”暴走族と位置づけている。
”違法競争型”暴走族とは
不良少年らを中心とする”共同危険型”暴走族と、スピードなどを競う”違法競争型”暴走族。いずれも、その違法な”走り”により、他のドライバーを危険にさらし、近隣住民などに迷惑をかけていることに違いはない。
警察当局に対して、”対抗心”を燃やす姿勢も同じだ。今年、警視庁に摘発された「ルーレット族」の男は、取り調べに対して、堂々と、「私はルーレット族だ」と供述。事故を起こした車を廃車するなど、まるで証拠隠滅のような行為にまで及んでいた。
さらに、別のルーレット族の男は、2年前、首都高を160キロで走行して事故を起こし、その後、免許を取り消されているにもかかわらず、車を運転した挙げ句、”炎上事故”を起こした。当サイトでも取り上げたが、男の車には、「かかってこいよ警視庁」とペイントされていた。
この男は、千葉県警に逮捕された際、「首都高はサーキットだ。もっとスピードを出したこともある」と供述していたという。あえて警察当局を挑発する姿勢は、昔ながらの暴走族と何ら変わりはない。
「ルーレット族の方が悪質」
一方で、ある捜査関係者は、「ルーレット族、ドリフト族の方が、(昔ながらの暴走族と比べて)、より悪質」とも指摘する。
首都高を、違法な速度で走行して、追突事故を起こし、ゴミ収集車を横転させたとして、先月、ルーレット族の男が、警視庁に逮捕された。ごみ収集車の運転手は、全治3カ月の重傷を負った。
また、栃木県では、今月、ドリフト走行中の車に、見物人の女性2人が巻き込まれる事故が起きた。2人とも重傷を負っていたが、車を運転していた川口瑞貴容疑者(30)は、救護措置を取らずに、そのまま逃走。のちに、ひき逃げ容疑で逮捕される事態となった。
調べに対して川口容疑者は、「救護はした」と、容疑を一部否認しているという。一歩間違えば、命が失われていた恐れがある。
全国の警察による、暴走族の摘発が絶えないのは、共同危険型であろうが、違法競争型であろうが、その無責任な行為により、重大事故が起こりかねないからだ。「若気の至り」では、済まないのだ。