第3話 懲罰塔のお仕置き
仕置き館の林の奥に、古い塔がある。
対外的に知られていないその塔は、仕置き館のマザー達に「塔罰塔」と呼ばれていた。
そこに入れられたが最後、小さな独房で、毎日お尻に罰を受けて過ごす。
ただし、毎日お尻を叩いていれば、お尻は鉄のように強くなり、その効果が薄まる為、一ヶ月置きに、「お尻への戒め方法」が入れ替わるのである。
懲罰塔に投獄されたリズを例にご紹介しよう。
懲罰塔に入れられたリズは、そこでの服に着替えさせられた。
仕置き館では簡素なシャツにズボンという作業着だったのに、ここでは、お尻の部分に布がないグレーのドロワーズをはかされた。
いつでもお尻に戒めを与えられるよう、いつも丸出しにしていなければならないのだ。
スースーするお尻は、毎日午前と午後の2回入ってくる管理官の男性によって、衣服に包まれた肌よりも、ずっと熱くされた。
平手を据えられ、時には道具でぶたれ・・・。
あまり抵抗すると、壁の拘束錠やベッド代わりのお仕置き台に拘束されてのお仕置きとなり、その後も次のお仕置きまで、そのまま放置された。
一回に必ず百叩き。
それ以下もそれ以上もなかったが、毎日それが続けば、その肉体的苦痛も精神的苦痛も、想像を絶する辛さだった。
独房のドアの向こうから、リズと同じく懲罰塔送りになった女性の泣き声が聞こえてくるのも、その苦痛を増大させた。
ひとつ不思議だったのは、叩く音と交互に泣き声が聞こえる時と、泣き声だけが響く時があること。
一ヵ月後、何故泣き声だけ響いていたのかを、リズは自分のお尻で知ることになる。
ある日、いつものようにやってきた管理官は腰袋を下げているだけで、ケインもパドルも持っていなかった。
――――良かった・・・。
長年たくさんのお尻を叩き続け、板のように硬くなったあの平手でも十分痛いけれど、それでも、お道具を振られるよりマシだった。
「そこに四つん這いになりなさい」
赤く腫れたお尻を擦ることもできず拘束されて過ごすのは、とても辛い。
リズは、言われるままに四つん這いになり、管理官にお尻を向けた。
管理官はリズの背後に片膝をついた気配に、リズは硬く目をつむった。
だが、いつもの痛みはこず、代わりに、お尻の穴に、冷たい何かが当てられた。
「えっ・・・!」
「じっとしていなさい」
冷たい何かの正体はわからないが、お尻の穴をこじ開けるように侵入してくる。
初めて味わう感触に困惑していると、突如、体を引き裂くような痛みが走った。
「――――ぎゃあああああ!!」
前に跳ね退くように四つん這いを潰したリズは、またジンジンと痛むお尻の穴の痛みに歯を食いしばりながら、管理官を見た。
彼が手にしていたのは、小さな男根を模したガラス製の張り型だった。
「まだ入れてないぞ。戻りなさい」
――――入れる? あれを、お尻に・・・!?
無論、売春で稼いでいた身だ。女性器に大小様々な男根を受け入れてきたし、こんな張り型を入れたがる男性も相手にしてきた。
けれど、お尻の穴にそんなものを味わったことはない。
「や・・・いや・・・」
さっきの頭の先まで走るような未知の痛みを思い出し、リズは震えて首を横に振る。
「そうか」
管理官は、お尻を叩かれるのを嫌がった時と同じく、リズを容易く膝に腹這いにさせた。
そして、腰袋から取り出した軟膏の瓶の中に、ガラスの張り型を差し込み、滑りを帯びたそれを、無造作にリズのお尻の穴に押し込んだ。
「~~~~ぎゃああああーーー!!」
その想像を絶する痛みに、リズは動くことすらできなくなった。
だが、更に無情に、管理官はそれをリズから引き抜く。
「ぅああーーー!!!」
一番硬い括約筋部分を通る瞬間は、挿入時と同じに激痛。
しかも、内臓を引きずり出されるような、なんとも言えない不快感を伴う。
「抵抗した罰だ。後5回繰り返す」
「いやーーー! いやーーー!」
「まだ逆らうなら、次までそれを入れて磔だぞ」
「~~~ひいーーー!」
リズは5回、あの張り裂けるような痛みに泣き叫んだ。
とても大人しくなどしておられず、お尻を何度も逃がそうとしたリズは、それを入れられたまま、壁の拘束具に拘束され、次のお仕置きの時間まで放置された。
根元に少し窪みがある張り型は、リズのお尻に食らい込んで外れず、火がついたような熱い痛みで、お尻の穴を否が応でも実感させて、彼女は哀れなほどにすすり泣いていた。
その日から、毎日それを挿入されるお仕置きが続いた。
その大きさにお尻の穴が慣れ、痛みに鈍感になってくると、その反応でそれを察した管理官は、更に大きめの張り型をリズのお尻に埋め込んだ。
それでも慣れてくると、短く切った細めの籐の棒を、リズが失神寸前まで何本も挿入し、お尻の穴を広げられる。
「い・・・痛い・・・痛い・・・」
大きな声で泣き叫びたくても、それをすると、お尻の穴に響いて余計に痛みが走ることを知ったリズは、小刻みに震えながら、それを抜いてもらえる時を待つしかなかった。
お尻の穴へ受ける戒めが終わったのは、一か月ほどしてからだった。
終盤には、痛みより、むしろ切ないような子宮の疼きを実感しており、まるで体を売っていた頃の悦びを思い出し、お尻をぶたれるより、これの方がいいとすら思い始めていたのに。
また、毎日朝夕のお尻叩き。
叩かれ慣れたはずのお尻が、平手すら辛くなっていた。
お尻が腫れ上がって、仰向けで眠れない日々が続く。
だが、これもまた、数週間後には痛みに鈍感になってくる。
ありがたい。
痛くない訳ではないが、辛くて仕方ないほどではなくなってきた。
「慣れてきたようだな。明日は、違うお仕置きを用意しよう」
きっとまた、お尻の穴を広げられる。
けれど、最後の方に感じたあの恍惚とした感触なら、むしろ楽しみですらあった。
「~~~ぎゃあぁああ! ああーーー! いやぁあああぁぁあ!!」
やはり、お尻の穴への戒めであったが、あの恍惚感は、消え失せていた。
最後の方に受けた大きな張り型より、ずっと小さいのに。
どうして。どうしてまた、初めてこのお仕置きを受けた時のように激痛が襲うのか。
「痛いよーーー! 痛いよぉーーー!」
「お仕置きだから、痛くしてるんだ」
「ああーーー!」
「わかっているぞ。気持ちよくなれると思っていたのだろう。残念だが、一定期間休憩を与えれば、お尻の穴は元通り引き締まり、最初の大きさの張り型でも激痛になる。お尻叩きも同じだ。あえて叩かない期間を作ることで、叩くお尻は柔らかく戻って痛みに敏感になる。我々は、お前たちの反応で、それを見抜いてお仕置き法を変える」
「ぅあーーー! あーー!」
「お前たちは、痛みに慣れることは許されない。お仕置きに泣き続けて過ごすんだ」
「――――ひぃーーー!!」
お尻を叩かれる方法も様々だった。
お尻の穴へのお仕置きが終わり、明日からまた毎日お尻を叩かれると思っていたある日。
午前中、管理官が現われなかったのだ。
管理官が現われたのは、昼食も済んでしばらくしてからだった。
彼はおもむろに壁に据え付けられた道具箱から、ありったけの道具を取り出して、リズの前に置いた。
「今日は、夕食の時間まで終わらないぞ」
「そんな・・・!」
ずっと叩かれ続けることはなかったが、百叩くと、壁を向いて長いこと立たされた。
叩かれては立たされ、また叩かれては立たされを繰り返される。
痺れて感覚を失っているお尻に、また痛覚を蘇らせる為の、残酷な休憩だった。
やっと夕食の時間が来た頃には、リズのお尻は元の何倍も腫れ上がり、大きく丸々と形を変えていた。
残酷な休憩は、その日ばかりではなく、そういうお仕置きの時は、数日お尻を叩かれなかった。
叩かれた翌日、まだ腫れの引いていないお尻で、硬い木の椅子に座らされる。そして、「起立! 着席!」の号令で、立ったり座ったりを繰り返された。
叩かれるのとはまた違う痛みが、リズのお尻を襲う。
「痛い・・・、痛い・・・」
泣きながら、管理官の号令に従う。
動けなくなると、腕を掴んで無理矢理座らされるから、自分でなるべくそっとお尻を下ろすより、何倍も痛むからだ。
お尻の腫れが引いて柔らかく復活してくると、お仕置き台に拘束され、目の前で沸いたお湯を、一滴一滴、ゆっくりと垂らされた。
「熱い! 痛い!」
火ぶくれにならないギリギリの温度だと、管理官は言った。
確かに火傷はしなかったが、ちくちくと針を刺されるような痛みがリズを泣き叫ばせた。
そして一週間ほどすると、再び、また何倍にもお尻を腫れ上がるまで叩かれるのだ。
お尻に痛みを感じない日はなかった。
与えられるばかりの日々。
唯一与えられなかったのは「ごめんなさい」と泣き叫ばず済む日だけであった。