日本人の15%、与党支持者の3割が「民主主義は大事じゃない」と思っている…驚きの調査結果

秦 正樹 プロフィール

党派性ごとにみた民主主義観

続いて、党派性(支持政党)ごとに分けた場合も確認しよう。本実験の前に尋ねた支持政党の質問から、与党支持者(自民+公明)・野党支持者(自公以外)・無党派層に3分類した。三つの層ごとに、図1と同様に、「最小二乗法」という手法で推定した結果を図2に示した。

図2 党派性別のリスト実験の結果

まず、図2右側の「民主主義は重要ではない」の方から確認しよう。DQ方式では、どの層でも10%未満とかなり少ないが、リスト実験で尋ねた場合、とくに与党支持者(赤線)は28.3%まで増加している

灰色で囲った「差分」は、リスト実験結果からDQの結果を引いたもの(ホンネの増加分)である。この差分を見ると、与党支持者の26.0%が、(建前ではそう答えないが)「ホンネ」では日本が民主主義であることは重要でないと考えているようである。

なお、無党派層(青線)の差分は16.9%と比較的大きいが、野党支持者(緑線)は2.7%とごく小さい。もう一つの図2左側の「強権的な政治の仕組みが必要」では、どの層でも10%未満であり、DQ方式とリスト実験の結果の間の差分もほぼないと言える。とくに一部の与党支持者と無党派層にある民主主義に対する懐疑は、必ずしも強権主義・権威主義的な志向性を高めるわけではないようである。

 

日本の民主主義の行方

筆者の実験結果より、日本人全体の約15%、さらに与党支持層の約3割が、日本が民主主義であることは重要でないと考えている一方で、強権的な意思決定方法に肯定的な意見はほとんどないことも明らかになった。

さて、ここでの「15%」という割合については、「こんなにいるのか」と感じる人もいれば、「その程度しかいないのか」と感じる人もいるだろう。有権者の「15%」といえば(単純計算で)およそ1500万人であるが、たとえば、2021年総選挙での自民党の比例得票数が全国で約1991万票であることを考えると、相当な規模で「民主主義は重要でない」と考える人々が日本にいると言えるだろう。

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