共有持分

共有名義不動産を共有者が独占したらどうなる? 家賃請求方法と共有関係解消方法を紹介

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2人以上の名義で不動産を所有している場合、あらゆるトラブルに巻き込まれることがあります。その中の1つとして考えられるのが、「共有不動産を他の共有者が独占していて、使うことができない」というケースです。

そこで今回は、共有者が共有名義の不動産に住んでいる場合どうなるのかをご紹介します。

また第三者と賃貸借契約をした場合の家賃請求方法や、煩わしい共有関係を解消する方法もあわせてお伝えいたします。

■共有者が共有不動産に住んでいる場合どうなる?

不動産を共有している共有者が、その不動産を独占して居住している場合、どのような対処ができるのでしょうか?ご紹介します。

 

・明渡し請求はできない

共有持分を持っている人は不動産を使用する権利があるため、その不動産に住んでいる共有者に対して「出て行ってほしい」と考えたとしても、退去を要求することはできません。共有者は他の共有者の権利を妨げることはできないのです。

 

・家賃請求は共有持分に応じた請求ができる

明渡し請求はできませんが、自分の持分に応じた使用が妨げられている場合、その分の金銭を請求することができます。これを「不当利得返還請求」と言います。

不当利得返還請求とは、法律上の正当な理由がないにも関わらず利益を得て他人に損失を及ぼした人から、その利益を返還してもらうよう請求することを言います。

 

 

■共有持分権者ができることとできないこと

上述したように、共有名義の不動産を持っている人は権利を持つ反面、お互いの権利を制限し合っている状態となります。

 

・共有持分権者とは?

共有持分権者とは、不動産などの財産を複数の人で共有している際、その共有持分やそれに伴って発生するさまざまな権利を持つ人のことを指します。

不動産の共有持分権者は、共有持分に応じて権利を持っていますが、「共有持分が2分の1ずつだから、建物の半分が自分のもの」という物理的な考えではなく、「不動産全体に対して2分の1の割合の権利を持っている」という概念的な考えとなります。

 

それでは、共有持分権者が持つ権利とはどのようなものがあるのでしょうか?単独で「できる」ことと「できない」ことについて、ご紹介します。

 

・変更(処分)行為は全員の合意が必要なので「できない」

不動産を売却する行為や大規模な修繕行為は重大なため、共有者全員の合意がなければ成立しません。共有者が複数人おり、大多数が賛成している場合でも1人が反対の状態であれば実行することができないのです。変更(処分)行為とは、具体的に下記の通りです。

 

【変更(処分)行為】

・売却

・贈与

・長期賃貸借

・増築、改築

・大規模な修繕

・抵当権の設定

・解体

・建て替え

・分筆・合筆

 

田畑から宅地へ変更したり土地の上に建物を建てたりするなど、物理的に変化をさせる行為が「変更行為」に当てはまります。

処分行為とは、物理的に壊したりするような事実的処分行為と、所有権を第三者に移転するような法律的な処分行為があります。

 

・管理行為は共有者の持分価格の過半数の合意がなければ「できない」

「管理行為」は、共有持分の価格の過半数が合意しなければ成立しません。

民法第252条で「共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する」と、定められている通りです。

共有持分権者が3人おり、3分の1ずつの持分だった場合、3人のうち2人が合意すれば決行することができます。管理行為とは下記の通りです。

 

【管理行為】

・賃貸借契約締結

・共有物の使用方法決定

・賃料の減額

・賃貸借契約解除

 

賃貸借する場合、借地借家法の適用を受けず短期賃貸借(一般的に土地なら5年、建物なら3年)の範囲を超えなければ「管理行為」とみなされます。

それ以外は「変更(処分)行為」となるため、共有者全員の合意が必要です。

管理行為は、実際には線引きが難しく、争点となることも多々あります。

 

・保存行為は各共有者の判断で「できる」

他の共有者が不利益にならないことを前提として、共有物の物理的現状を維持する「保存行為」は、他の共有者の合意なしで行うことができます。民法でも「各共有者が保存行為をすることができる」とされています。保存行為とは、下記の通りです。

 

【保存行為】

・修繕

・無権利者に明途請求・抹消登記請求

・法定相続による所有権移転登記

 

例えば、共有不動産の塀が倒壊したり木が伸びて道路にかかったりした場合、共有者の合意を待たずして独自の判断で対処することができます。

また知らない間に知らない人に駐車場として使われていた場合など、単独で立ち退きを要求することができます。

 

 

■賃貸借契約をした場合の家賃受け取りはどうなる?


共有名義の不動産は第三者に貸すことも可能です。

それでは賃貸借契約をした場合、家賃請求はどうなるのでしょうか?ご紹介します。

 

・持分割合ずつ請求できる

共有名義の不動産で賃貸借している場合、家賃は「可分債権」となります。

可分債権とは分けることが可能な債権のことで、金銭はこれに当てはまります。そのため、賃料は各共有者が持分に応じた額を貸借人に請求することができます。

例えば、AとBが2分の1ずつ共有持分を持っている不動産で8万円の賃料で貸すとした場合、それぞれ4万円ずつ請求することができます。

 

・代表者が受領し、分配する

貸借人が複数の賃貸人(共有者)に家賃を支払うと手間がかかるため、通常は1人の代表者に支払い、その後代表者が共有者に持分に応じた賃料を分配します。

家賃を受け取る代表者の変更は「管理行為」にあたるため、独自の判断で行うことはできません。

 

・共有者が第三者に勝手に貸し、家賃を独占している場合

AとBが共有する不動産を、Bが知らない状態でAがCに貸した場合、どうなるのでしょうか?

Bは不当利得返還請求をすることで、AとC両方、またはどちらか一方に対して、賃料相当額を共有持分で割った金銭の請求をすることができます。しかし、Aが不動産の使用を認めている状態であるため、BはCに対して明渡し請求をすることはできません。

 

■共有名義の不動産で家賃請求できないケース

上述したように家賃相当の金銭請求をすることができるケースもあれば、そうではないこともあります。請求できない場合とはどのようなときなのでしょうか?

 

・占有することを合意している場合

AとBの共有不動産を、Aが独占することをBが合意している場合、金銭請求をすることができません。

 

・共有していた内縁のパートナーが死亡した場合

内縁の夫婦であるAとBが不動産を共有していて、Aが死亡した場合、Aの相続人Cは残されたパートナーであるBに対して金銭請求ができません。

立ち退きを要求することもできません。ただし分割請求はできるため、共有関係を解消し分割をすることがいいでしょう。

 

・被相続人と同居していた相続人が住んでいる場合

所有権のある親が死亡し、生前同居していた相続人(子供)がそのまま住んでいる場合、他の相続人(兄弟)は、明渡し請求も金銭請求もできません。これは「遺産分割が終了するまでの間は、親子間で契約がなくても無償で使用させる旨の合意があったと推認される」という判例が出ています。

遺産分割協議が成立すればその協議内容通りとなりますが、それまでは家賃請求などはできないと言えます。

 

 

■共有関係の解消方法

不動産を2人以上の名義で所有していると、あらゆるトラブルを招くため「共有関係を解消したい」と思うことがあるでしょう。

それでは、どのようにしたら共有状態を脱することができるのかご紹介します。

 

1.不動産を売却する

不動産を手放すことで共有関係も解消することができます。

ただし、上述したように共有不動産の売却には共有者全員の合意が必要です。さらに手続きや立ち会い等にも全員が関与する必要があります。共有者の中に1人でも非協力的な人がいれば、売却は難しいでしょう。

 

2.共有者に共有持分を買い取ってもらう

自分の共有持分を他の共有者に買い取ってもらう方法も一つです。

自分の所有権はなくなりますが、共有関係を解消できます。共有持分の買い取り金額は、基本的に話し合いで決めることができます。その際には、不動産の時価を基準にするといいでしょう。

 

3.自分が相手の共有持分を買い取る

自分に資力がある場合、相手の共有持分を買い取り自分の単有にすることもできます。

しかし、相手が持分を売却することに同意しない場合、強制的に買い取ることはできません。他の共有者が本来払うべき費用(固定資産税や管理費など)を支払わず1年を経過した場合、「共有持分買取権」を行使して強制的に相手の持分を取得することは可能です。

 

4.持分放棄をする

共有者が話し合いに応じない場合など、持分放棄をすることができます。

民法第255条において「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」と定められている通りです。

例えば、AとBが共有名義で持っている不動産をAが持分放棄した場合、自動的にBにその権利が移行します。Bの同意なしに持分放棄をすることはできますが、登記手続きの際にはBの協力が必要になります。

 

5.共有物分割請求をする

共有物分割請求とは、共有持分権者に法的に認められた権利です。

共有状態を解消するために、共有者同士で話しがまとまらない場合は訴訟を起こすことができます。調停によって解決しなければ、裁判所が客観的に分割の方法やその内容などを決めます。分割の方法は3つあり下記の通りです。

 

①現物分割

不動産を物理的に分ける方法です。

この方法は建築物が建っていない土地のみの場合に適用されることがほとんどです。

AとBで共有持分が2分の1の土地の場合、その土地を半分で分けます(分筆)。

しかし、ただ分けただけではAとBそれぞれの単有にはならず、両方ともAとBが2分の1ずつ所有している状態になります。自分の共有持分を相手に譲り合うことで、登記上2つに分配することができます。

 

②価格賠償(代償分割)

共有者の誰か1人がすべての持分を買い取り、他の共有者に代償金を支払う方法です。

現物分割が不可能な場合や、共有者の中の一人が取得を希望している場合、または取得者に資力がある場合などに価格賠償が選択されます。

しかし、資力がない状態で「借金してでも買い取るように」という要求をされることはありません。

 

③換価分割

第三者に売却して、経費を差し引いて残ったお金を共有持分に応じて共有者全員に分配する方法です。

現物分割も物理的に不可能で、代償分割は資力がなく難しいと判断された場合、換価分割が選択されます。「第三者への売却」とは「競売」です。

競売となると市場価格よりも低い金額で売却されたり、全国に公開された競売情報を確認するため不動産会社が直接見に来ることでプライバシーを侵害されるおそれがあったりします。デメリットが多い方法だと言えるでしょう。

 

6.買取業者に買い取ってもらう

共有者と話し合いができなかったり連絡が取れなかったりするなど、話し合いで解決することが難しいケースがあります。

その場合、自分の共有持分のみを専門の買取業者に売ることも方法です。

自分の共有持分のみの売却であれば、他の共有者の同意が必要ありません。一般の人に売ることは難しいですが、専門業者であれば積極的に買い取ってくれることがあります。

市場価格の売却額よりは低くなるかもしれませんが、訴訟となって弁護士費用がかさんだり競売で売却益が低くなったりするよりは良いかもしれません。

■困った場合はプロに相談を

1つの不動産を2人以上で共有すると、あらゆる問題や悩みが生じることがあります。

「自分も所有している不動産なのに、共有者が独占している」というケースでは、上述したように金銭請求はできても立ち退き要求はできません。

また賃料収入を得られる不動産であれば、賃料や管理費などをめぐってトラブルが起きることもあるでしょう。

共有関係を解消することで、そのような問題を解決することができます。

ただし共有者と話し合いがスムーズにできない場合、さらなる問題を生むことになる可能性もあるため、やはりプロに相談することをおすすめします。

 

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