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人々の暮らしに役立つ宇宙開発利用を自分の手で実現する
有川 善久
2002年入社
工学系研究科 航空宇宙工学専攻修了
第一宇宙技術部門 先進レーダ衛星(ALOS-4)プロジェクトチーム
サブマネージャ
REASON入社の理由
時代を先駆ける「最先端技術」を活かす先とは?
大学の研究室では、一辺10cmキューブサイズの超小型人工衛星を制作し、世界で初めて宇宙に打ち上げました。学部4年と修士時代はほとんどこの開発に青春を捧げ、研究室内に作ったクリーンルームで夜を明かすことが何度もありました。
世界に先駆け宇宙でのランデブ・ドッキングに成功したETS-7「おりひめ・ひこぼし」のニュースを知って、そのような最先端の技術に携わりたいと考え、宇宙開発を志すようになりました。しかし、研究室の教授は大反対。曰く、「日本の宇宙開発は、単発の開発で終わっていて次に繋がらない」と。最先端技術の適用先がまだ明確ではなかった状況を憂いての言葉であり、だがそれは、裏を返せば、NASDA(当時)への大きな期待の表れでもあったのです。その教授と議論を重ねる中で、「社会に役に立つ衛星を開発したい、自分が日本の宇宙開発を変えていきたい」、という考えが募っていき、JAXAを目指すようになりました。
WORKわたしの仕事
宇宙開発技術で災害列島の未来を守る
超高速インターネット衛星「きずな」や陸域観測技術衛星2号「だいち2号」、そして現在開発中の先進レーダ衛星「だいち4号」に携わることにより、自然災害の対応に役立つ人工衛星の開発が信念通り実現できています。そして、これはまだ志半ばですが、災害犠牲者を一人でも減らし、未来型の防災減災に役立つ仕事をしたいという目標に向かっている実感もあります。
人工衛星は一度打ち上げると、修理することができません。地上から故障に対処できない事態もあるので、人工衛星に搭載したソフトウェアが自律的に故障を検知して対処する必要があります。そのプログラムの確認の為、ありとあらゆる故障ケースを想定し、一つ一つ挙動を確かめるといった細かい作業を繰り返します。このような地道な作業によって、高い信頼性が求められる衛星開発が成り立っているのです。
現在は、サブマネージャとして1つの衛星丸ごと責任を持つ立場であることにやりがいを感じています。数百億円の衛星開発費を考えると、責任の重さを感じますが、それと同時に自分が及ぼす影響範囲の大きさが、やりがいにも繋がっています。
FUTURE将来の想い
ONE TEAM 産学官の力を結集し日本型宇宙開発をリードする
宇宙開発に携わる者として、月面に基地を作ったり宇宙の神秘を解き明かしたりと、夢のあるミッションに関与したいと考えることもあります。宇宙飛行士として、火星に降り立ってみたいと考える時も。ただ、私の信念は「人々の暮らしの役に立つ宇宙開発利用」です。気象衛星ひまわりや、GPSに次ぐような、生活に密着した人工衛星を企画立案し、自分の手でそれを実現したい。朝晩の天気予報や、毎日のSNSなどで、「だいち」の人工衛星画像が登場する日を夢見ています。
新入職員時代から衛星の中の1つのサブシステムを任され、JAXA代表として現場で重要な決断を迫られることもありました。数々の場で経験を積み重ね、メーカーの方々に教えてもらいながら、成長の機会を得たことが今に活かされています。
今は管理職として、メンバーにもメーカーでの製造・試験現場の経験や、生のデータに直接触れて感性を磨く訓練を多く積むことを推奨しています。(人工衛星は会議室で作られているのではない。現場だ!)
人工衛星開発は、JAXAのほか、JAXA以外の企業や技術者の力を結集して成り立つもの。高い技術力を持つスペシャリストと力を合わせ、お互いをリスペクトし、ONE TEAMとして成果を最大化させなくてはなりません。
JAXAは日本の宇宙開発をリードする組織です。将来の日本の宇宙開発の道筋を作っていきたいと考えるなら、JAXAを是非選んでほしいです。
CAREER PATHキャリアパス
入社してからこれまでのキャリア
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1st year
WINDS(「きずな」)の開発
入社1年目から姿勢制御系サブシステムを任され、打ち上げ直前には4つのサブシステムを担当。
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7th year
内閣府派遣(総合科学技術会議事務局)
日本の科学技術政策の司令塔。宇宙専門家は私一人。海洋担当(深海探査等技術的に共通する)も兼任。
JAXAは世間から厳しく批判されることもあるが、それは高い期待値の現れであると痛切に感じた。 -
8th year
ALOS-2(「だいち2号」)プロジェクトチームへ配属
「だいち2号」は、地殻変動や浸水領域の把握など、大地の詳細な様子を宇宙から観測することができ、自然災害の多い日本にとって必要な人工衛星。その「システム」をまるごと担当した。
また本業の傍ら、JAXA内若手で新しいミッション検討チームを立ち上げた。20~30年後の実現を視野に(自分たちが40・50代)、“放課後”の時間を利用して3年間で10以上のミッションを検討した。 -
13th year
ドイツ宇宙センター(DLR)に1年間研修
独・仏・英は日本と同じような技術力、経済構造を持ちながら、実利主義で宇宙分野でも産業化につながるイノベーションを推進する先行事例。米国は巨大な民間資本による自由競争市場であるが、日本が参考にすべきは、産学官が密接に連携し、実効的な政策につなげる欧州であると考えた。
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14th year
経営推進部対外連携課に配属
産学官の連携に戦略性を持たせるため、理事長発案により新設された組織。ドイツ留学時代に得た知見を基に、宇宙ビジネス創出アイディアコンテスト「S-Booster」を立ち上げた。
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16th year
ALOS-4(「だいち4号」)プロジェクトチームに配属(現職)
2019年サブマネージャとなる。
THE OTHER SIDE OF THE MOON私の一面
プレッシャーには弱いタイプで、野球のバッターボックスでガチガチになったり、ボーリングのスペア狙いで手元が狂ったり、というのは日常茶飯事。でも、精神的なストレスはあまり感じず、「頑張ったのだから、ま、何とかなるでしょう」という、「人事を尽くして天命を待つ」的な考えを持つようにしている。