共有名義の不動産で、共有者が亡くなった場合、その不動産はどのように扱われるのでしょうか?
相続人がいる場合には、不動産は相続人に引き継がれますが、相続人がいない場合は、非常に複雑になります。残された共有者が不動産を取得できる場合もあれば、取得できない場合もあります。
今回は、不動産の共有者の一人が亡くなった場合に、その共有者がどうなるかについて説明します。
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■亡くなった共有者に相続人がいる場合
亡くなった共有者に相続人がいる場合は、相続人が持分を引き継ぎます。
相続人が1人の場合は、単純にその人に持分が移るだけですが、相続人が複数いる場合には、「法定相続分」に応じて、それぞれの相続人に共有持分権が帰属します。また、相続人が複数でも、相続人たちが遺産分割協議に合意すれば、相続人の一人が単独で相続人となることもできます。
遺言者の遺言により、一人の相続人が共有持分の承継者として指定されている場合は、その相続人が共有持分の単独所有者となります。
■亡くなった共有者に相続人がいない場合
共有持分の所有者が死亡し、相続人がいない場合は問題が生じやすいです。
・相続人がいない場合とは?
亡くなった共有者に相続人がいないケースは、以下の通りです。
・配偶者、親、子、兄弟姉妹がいない。
・相続人が相続放棄をした。
子、孫、ひ孫、父母、祖父母、兄弟姉妹、甥姪がおらず、法定相続人がいない場合は、相続する人がいません。
また、相続人がいたとしても、全員が相続を放棄してしまえば、相続人がいないのと同じ状況になります。この場合、共有持分を相続する人がいなくなってしまいます。
・相続人がいない場合、共有持分はどうなるのでしょうか?
民法には下記の通りの規定があります。
民法第255条
(持分の放棄及び共有者の死亡)
共有者の一人がその持分を放棄したとき、又はその者が死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
民法第255条では、「共有者の一人が死亡して相続人がいないときは、その共有持分は、他の共有者の財産となる」と規定されています。
これによると、共有者が死亡して相続人がいない場合、その権利は他の共有者に移ることになります。
これは、不動産の所有権をできるだけ一人に集中させることが望ましいことから、このような規定が設けられています。
民法第958条の3
(特別縁故者に対する相続財産の分与)
前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を一にしていた者、被相続人の療養看護をしていた者その他被相続人と特別の関係にあった者の請求により、清算後に残存すべき相続財産の全部又は一部をその者に与えることができる。
民法第958条の3では、「特別縁故者への財産分与」が認められています。これは、内縁の配偶者など、被相続人と特別な関係にあった人が、相続財産を受け取ることができるということです。
人が亡くなった場合、基本的には法定相続人のみが遺産を受け取ることができます。その人の内縁の妻や献身的な介護者には相続する権利がないので、遺産を受け取ることはできません。
しかし、相続人がいない場合に、そのような近親者が全く遺産を受け取れないというのは理不尽な話です。
そこで、相続人がいない場合には、被相続人と生前に密接な関係にあった人は、「特別縁故者」として相続財産の一部を受け取ることができます。
この2つの規定があるため、共有者が死亡して相続人がいない場合、「共有者」と「特別縁故者」(内縁の妻など)のどちらに遺産の一部を受け取る権利があるのかは明確ではありません。
・裁判所の見解は?
裁判所は、共有者が死亡した場合の民法958条1項と民法255条の問題について、以下のように判断しています。
958条3項の規定の趣旨は、本来国庫に帰属すべき相続財産を被相続人と特別な関係にある者に分割することにより、被相続人と特別な関係にある者を保護しようとするものである。
被相続人と特別な関係にある者に財産を分配する制度があるにもかかわらず、その財産が共有であるというだけで、被相続人と特別な関係にある者に財産を与えないというのは、被相続人の意思に反して不合理です。
共有者が死亡し、相続人がいないと判断された場合には、まず被相続人と特別な関係にある者への財産分配の対象となり、この手続きを終えても財産を引き継ぐ者がいない場合にのみ、255条により他の共有者に帰属すると理解すべきである。
したがって、民法958条の3と民法255条の間では、958条の3が優先されることになります。
共有者の中に相続人がいない場合、共有持分はまず特別縁故者への分配の対象となり、分配が行われない場合は他の共有者の所有物となります。
■共有者の死亡後の具体的な手続きについて
不動産の共有者が亡くなった場合、その後はどうなるのでしょうか。
ここでは、共有者が亡くなった場合の流れをご紹介します。
・相続人がいる場合
1、相続人が遺産分割協議を行う
相続人がいる場合は、相続人同士で遺産分割協議を行い、共有持分を誰が相続するかを決めます。
2、相続人による共有持分の登記
共有持分を誰が相続するかが決まったら、相続人が自分で共有持分の名義変更登記を行います。すると、前の共有者と新しい相続人の共有になります。
・相続人がいない場合
共有者は、「相続財産管理人」の選任を申請します。
共有者が死亡した場合、他の共有者が共有権を取得するためには、まず家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申請する必要があります。これは、先に説明したように、特別縁故者は共有者よりも優先されるため、相続財産管理人が特別縁故者に財産を分配する手続きをするまでは、被相続人の共有持分を他の共有者の名義に移すことができないためです。
相続財産管理人の選任方法については、後の項目で詳しく説明します。
相続財産管理人は、相続人の捜索、債権者や受益者への支払い、特別受益者への財産の分配などを進めます。
最後に、共有者が残っていれば、その人たちに不動産の取得を依頼することになります。
遺産管理人が必要な支払いを行い、不動産の価値を認識した後、共有者の権利があれば、他の共有者に帰属します。
共有者が不動産の共有持分を取得した場合、自分の名前で所有権変更の登記をしなければなりません。これにより、第三者から相続した共有持分を主張することができるようになります。
■亡くなった共有者の持分を取得する方法
共有者が亡くなった場合、他の共有者がその持分を取得する方法は2つあります。
・死後の相続財産管理人の選任
なぜ、相続財産管理人を任命する必要があるのでしょうか?
共有者が死亡し、他の共有者が財産の取り分を希望する場合、家庭裁判所は「相続財産管理人」を選任する必要があります。
相続財産管理人とは、亡くなった人の財産を管理・処分して、最終的に財産を管理に帰属させる人のことです。
先に説明したように、亡くなった方の共有持分は、まず特別縁故者に帰属し、それができない場合は生前の共有者に帰属します。
したがって、まず特別縁故者への分配の手続きを経なければ、共有権を取得することはできません。遺産管理人は、特別縁故者に財産を分配する責任を負う人です。
不動産の共有者は、自分たちの間で話し合いや分割をすることができませんので、共有持分を取得するためには、まず相続財産管理人を選任する必要があります。
・相続財産管理人を選任する方法
被相続人の住所地の家庭裁判所に、相続財産管理人選任の申立をする必要があります。
その際、以下の書類が必要となります。
・被相続人、被相続人の父母、子、孫の出生時から死亡時までの戸籍謄本
・相続人の住民票または戸籍謄本
・被相続人の財産に関する書類(例:全ての不動産の証明書、固定資産の評価証明書、貯金や株式の残高がわかる書類)
・不動産が共有であることを示す書類(共有不動産に関する全ての事項の証明書)
・相続財産管理人の候補者を選任する場合は、その方の住民票または戸籍謄本
なお、不動産の共有者が自ら相続財産管理人になることも可能です。
申立にかかる費用は、収入印紙、通信用の郵便切手、「予納金」で800円です。
相続財産管理人選任の予納金は、20万円程度、場合によっては100万円を超えることもあります。
・相続財産管理人の選任後の流れ
相続財産管理人が選任されると、相続財産の換価・処分が行われ、特別縁故者への最終的な遺産分配が行われます。
その時点で共有持分が処分されずに残っていた場合、生きている共有者は、民法第255条に基づいて被相続人の共有持分を取得することができます。
・共有者への遺贈
前述のように、共有者が亡くなった後、他の共有者が自ら被相続人の共有持分を取得しようとすると、非常に時間と費用がかかります。
このような手間を省き、スムーズに共有権を移転するために、「遺言」を利用することができます。
遺言で共有持分を引き継ぐ人を指定しておけば、相続開始と同時にこの人が共有持分を取得することができます。
この場合、相続財産管理人を選任する必要がなく、特別縁故者に財産が分割される可能性もありません。
・遺言書の内容は遺言者が決定する
遺言書の内容は遺言者が自由に決めることができます。共有者が自分の共有持分を特別な人に遺贈した場合、共有持分は特別な人に帰属します。
あなたが不動産の共有者で、共有者の死後に自分の共有持分を取得したい場合は、生前に共有者と十分に話し合い、遺言書を書く前に共有持分を譲ってもらえるように説得しておく必要があります。
■おわりに
不動産を共有で所有していて、共有所有者に相続人がいない場合は、あなたの死後、自分の持ち分をどうしたいのか聞いてみるといいでしょう。
共有所有者に内縁の配偶者がいない場合やその他の特別な希望がある場合は、持分をあなたに残すための遺言書を残してもらうとよいでしょう。
遺言書を残さずに亡くなった場合は、家庭裁判所が共有者を引き継ぐ「相続財産管理人」を選任する必要があります。
どのようにすればよいかわからない場合や、今すぐ共有持分を売却したい場合は、専門の業者に依頼するのもよいでしょう。