「わたしゃァ、今はやりの医用電子機器とかCTスキャンとかは信用しねえんだ」
(第225話「されどいつわりの日々」)
もちろん、現在では画像診断技術の進歩は正確な診断・治療において欠かせないものとなっており、画像診断医を主人公に据えた作品さえ存在します。
参考:モリタイシ著『ラジエーションハウス』(集英社)
しかしこれはブラック・ジャックないし著者である手塚本人の無知うんぬんということではなく、当時の画像診断の技術水準はまだ低く、そしてその時代に想像されていた以上にその後その技術は早く進歩し、またそれが一般診療の場に普及したことを示す事例と考えるべきでしょう。
ノーベル賞受賞者と邂逅するブラック・ジャック後年のリメイクやスピンオフ作品では、ブラック・ジャックも時代の進歩に合わせるかのように作中に登場する最新医療技術を使いこなし、また、それらの将来や可能性について的確に考察する様子が見られます。それが最も顕著なのは、2019年に発表された小説版『ブラック・ジャック』(誠文堂新光社)でしょうか。
SF作家として知られる瀬名秀明氏の手によるこの“小説版ブラック・ジャック”では、まさに平成の終わり、令和を迎えるこの時代の医療事情を色濃く反映した新作の物語が収録されており、そこでは、外科治療の行き着く先としてのロボット手術や、再生医療の進歩の中で、ブラック・ジャックの技術がどのように生かされていくのかが描かれています。