2006年9月、日仏のイラストレーターであるジェラルド・ゲルレと堤大介は、パリに来ていた。ゲルレは堤の持っていた真っさらのスケッチブックに想像力を掻き立てられ、堤と友人になったばかりの絵本作家レベッカ・ドートゥルメールに絵を描いてもらうよう依頼。打算もなく、熱意に満ちた若いアーティストのほんの思いつき――これが4年半、71人のアーティスト、12か国を巡った“スケッチトラベル”の始まりだ。  

スケッチブックは常にアーティストの手から別のアーティストに手渡され、“旅”をしていった。参加したのは「木を植えた男」のフレデリック・バック、ディズニーの“伝説のアニメーター”グレン・キーンなど、世界的に著名なイラストレーター、アニメーター、マンガ家たちだ。

日本人では「バーチャファイター」や「神宮寺三郎」のデザインで知られる寺田克也、「ポポロクロイス」シリーズのキャラクターデザインを担当した福島敦子、文化庁メディア芸術祭やマルチメディアグランプリなどに輝いた森本晃司、「ピンポン」「鉄コン筋クリート」の松本大洋、アニメの世界のアカデミー賞として知られるアニー賞受賞者の上杉忠弘、「ICO-霧の城-」(講談社文庫)やその他多くの装画を手がける丹地陽子、ニューズウィーク誌の「世界が尊敬する日本人」に選ばれたニューヨークを拠点に活躍するアーティスト・清水裕子などなど、錚々たる顔触れが並んでいる。そして、最後のページはゲルレと堤の尊敬する宮崎駿の絵によって埋められ、スケッチブックは完成を迎えた。