補給物資を運ぶトラックの絶対数が少ない
次に実際に補給物資を運ぶトラックだが、ここでは効率のいい40フィート・コンテナ(全長約12m)1個を牽引するトレーラー(最大積載量30トン)がカバーしたと考えてみよう。
40フィート・コンテナとは日本でもよく見かける、やたらと長いコンテナのこと。また「30トン」は理論上の最大積載量で、荷物がかさ張ることを考慮すると実際は半分の15トン程度しか運べない。
すると「1万5000トン÷15トン」で「1000台/日」という値が導き出される。一方、送り先の最前線は近いところもあれば遠い場所もあるので、M14国道部分を300km走り、さらに枝分かれ道路に入って150km北上すると考える。すると走行距離は片道「450km」となり、さらにここを走るトレーラーのスピードは渋滞や信号待ち、道路のデコボコ、事故などを考えると平均時速30kmが無難だろう。片道で15時間かかる計算だ。
ドライバーは2人体制で2~3時間ごとに交代で運転し続ける。前線に到着後は荷物の降ろし作業を任せて、ドライバーは睡眠・休息をとる。これを8~9時間と考えれば片道はちょうど24時間。つまりトレーラーは1往復で「2日」必要となり、毎日絶え間なく前線に物資を補給し続けるには最低でも1000台のコンボイをもう1組、つまり「トレーラー2000台、ドライバー4000人」が必要となる計算だ。

ちなみにトレーラーの燃費は一般的に2km/リットルで、片道450kmで消費される燃料は225リットル、往復で450リットルとなる。そして1000台のコンボイで1万5000トンの物資を運び再び戻ると考えると、何と45万リットル=450キロリットル(重量約360トン)という莫大な軽油の消費量がはじき出される。
この「40フィート・コンテナ・トレーラー」はあくまでも理論上の話で、実際は幹線道路のM14国道を使った拠点間輸送をトレーラーが受け持ち、「ラスト・ワンマイル」に相当する各拠点~最前線は、オフロード走行ができる軍用トラックが受け持つと見ていいだろう。また、トレーラーは全輪駆動ではないので、幹線道路以外はデコボコ道や泥道が多いので走らないほうがいいだろう。
それでもトレーラーはやはり千台規模で必要となるはずだが、果たしてこれだけの数を国内で確保できるのか甚だ疑問だ。というのもロシアの輸送体系は「貨物鉄道」が圧倒的で国内物流の実に6割(トンキロ換算)を占め、逆にトラック輸送(道路)は7%ほど。国内のトラックの絶対数がそもそも少ないのである。しかも周辺国から融通しようにも協力する国すら限られる。
もしかしたら全ルートを前述の軍用トラックがカバーしているかもしれない。最大積載量はだいたい6トンで、実際は半分の3トンと仮定し「1万5000トン」を毎日輸送するには何と5000台、しかも往復を考えれば「1万台」という規模になる。ロシア軍といえどもこれだけの軍用トラックをやりくりするのは極めて困難だろう。