今回は広島生まれのクラフトウイスキー、シングルモルトジャパニーズウイスキー桜尾を飲みます。

ウイスキー事業復活の布石

_DSC5053_01桜尾のウイスキーを手がけるのは、広島県廿日市市にあるサクラオブルワリーアンドディスティラリーです。
この会社はかつて「中国醸造」という社名で、2021年に改称しました。

元々は焼酎甲類を手がけ、ダルマ焼酎の名で発売されました。
その後日本酒も手がけていて「一代」のブランドで長らく地元に親しまれています。

実は同社においては、1938年にグローリーウイスキーという名前でウイスキー事業にも手を伸ばしていましたが、1989年に一度撤退した歴史がありました。
その後ハイボールブームを発端としたウイスキー需要の高まりに合わせるかのように、本格的なウイスキー作りの再開のために段階を追うことになりました。

まず広島県安芸太田町戸河内に、鉄道用トンネルを流用した貯蔵庫を設け、そこに海外のバルクウイスキーを購入してオーク樽に入れて貯蔵、熟成を行ったブレンデッドウイスキー、「戸河内」を2008年に発売し、ブレンドと熟成のノウハウを築いていきました。

次いで2017年、本社工場内に桜尾蒸溜所を開設、ポットスチルを設置してウイスキーやジンの蒸溜を開始しました。
2019年にはグレーンウイスキー用の蒸留器、貯蔵庫も設けました。

そして2022年、桜尾蒸溜所で蒸溜された原酒を使ったシングルモルトとして「桜尾」「戸河内」をリリースしました。
「桜尾」は桜尾蒸溜所の近くの貯蔵庫で熟成、「戸河内」は戸河内貯蔵庫で熟成したモルトを使っています。
樽については「戸河内」はバーボン樽ですが、「桜尾」は4種類の樽としか公表しておらず、具体的な樽についてはわかりません。
どちらも3年以上の樽熟成を行った原酒になります。

限定品を除くと、現在同社が自社で蒸溜を含めて製造するウイスキーはこの2種類のみとなっていて、これらが今後のウイスキー事業を占っていると言っても過言ではないでしょう。

テイスティング

グラスからの香り、液色

グラスからは白ブドウのような爽やかな香りが感じられます。
液色はシャンパンゴールドです。

ストレート

白ブドウ、青リンゴ、ライムのフレッシュな香りが広がります。軽いスモーキーな香りもあとから加わり、カカオの香ばしさも奥からやってきます。

味わいはアルコールからの辛みは少なく、酸味がメインで渋味も得られます。

ロック

スモーキーな香りが広がったあと、青リンゴ、白ブドウ、ライムの香りが続きます。
味わいは、苦みがメインになり、後から酸味が続きます。

ハイボール

ブドウの香りが広がり、バニラの香りのあとに軽いスモーキーな香りがあとに続きます。
味わいは軽い甘味があり、あとから苦み、酸味が続きます。

年数以上の熟成感がある

ボトルそのものは700mL、アルコール度数43度で、定価が6600円になります。
ネットだとプレミアがついて8000円弱が相場になっています。

シングルモルトとはいえ3年熟成のウイスキーとしてはかなり割高であることは否めませんが、温暖な瀬戸内海沿岸で熟成されたことで年数以上に進んだ感があり、アルコールからのとげとげしさが少ない、熟成感のあるウイスキーに感じられました。

また、ほどよくスモーキーな香りがあり、そしてフレッシュなフルーティさもあり、今やのんピート主体のスペイサイドモルトとは一線を画すような個性を感じられました。

今後8年、12年と熟成が進むことで新たな個性を期待できるようなポジティブな印象をいけました。これからの同社には期待するしかないです。

<個人的評価>

  • 香り B: ピートからのスモーキーさはそれなり。白ブドウ、青リンゴ、ライムの爽やかな香りがメイン。
  • 味わい C: 3年熟成ながらアルコールの辛み、刺激は少ない。酸味メインで加水で苦みが目立つ。
  • 総評 C: 3年熟成、クラフトウイスキー故の割高感があるが、将来が楽しみになる一本。