どこの誰とも知らぬ本丸を引き継ぐことになったさにわ、引継ぎ先にはそれなりの刀がいたが、審神者としては自分の本丸を持ちたかったので既に不満。でも仕方ないのでこれからがんばるかー、くらいの気持ちだったが、本丸の内の刀の一振りがやたら絡んでくる。膝丸だ。
会話
返信先: さん
それも不思議なことにやたらと喧嘩腰だ。聞けばこの本丸には髭切がいないという。膝丸はやたらと髭切をよぶように就任したばかりの審神者に再三訴えた。なんでも、先代の審神者には彼ら以上の刀を顕現する力が無く泣く泣く髭切を諦めていたのだとか。今度こそよんでもらう、膝丸は強い口調で訴えた
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審神者としては知らんがな、という気持ちでいっぱいだが、まあ兄弟に会いたいという気持ちはわからんでもない。兄弟おらんけど。粟田口だってほかの刀だって縁のある刀がいても我慢してるだろうに、と思わないでもなかったが、就任したての審神者はどうにも立場が弱い。
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どうせこんのすけにも戦力の強化を迫られていたので、鍛刀をすることは悪いことではない。今や髭切は検非違使からドロップする刀の一振りとしても有名だから、まあそのうちくるんじゃないかな、と思って頷いた。その日から、膝丸が近侍についた。兄者のためだ、訳の分からない理論で押し通された。
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本丸の仕切りは本来は先代の初期刀である歌仙兼定だったが、彼は先代について本丸を出ているため、この本丸の仕切りは特に決まっていなかった。刀が既にいるところに配置されるからと初期刀も得られなかった審神者は、割とどうすることもできずに言われるままに膝丸を近侍に据えるしかなかったのだ
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膝丸は幸いにも近侍の仕事が良くできた。次の審神者に髭切を顕現してもらうため、恩を売るために培ったのだと彼は鋭い目と威圧的な口調で言った。赤裸々だな、と思った。裏表が無さそうなところは好感が持てなくもないが、そう言われていい気はしなかった。割と審神者はむかついていた。
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けれどどうにもやっぱり立場は弱く、仲の良い刀剣というのも作れないまま膝丸に言われるまま形ばかりの審神者として今日も働いている。普通にストレスだったし毎日に嫌気がさし始めていた。膝丸の態度は一貫してクールで、割と高圧的だった。しかも何故か割とべったり付き添われる。
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そんなに兄者が恋しいかと思った。世間で言われる膝丸の鳴き声は兄者だと有名だ。一分一秒でも早く審神者に髭切を顕現させるため、膝丸は今日も審神者が適切に審神者業をこなし、髭切を呼べる時を待っているようだった。審神者としては、仲の良くない高圧的な先輩にいびられているような心地だった。
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髭切を呼べる機会は一日の内で決まっている。政府の求める鍛刀の三回と出陣した際の検非違使のドロップ品のみ。鍛刀は資材がある限り可能だったが、適切な本丸運営のため一日三回までと決まっていた。太刀レシピは中々に重い。手入れや刀装のために無茶はできない。
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膝丸は些か不満そうだったが、資材の大切さはわかっているようでそれについてはそれほど無茶は言わなかった。ただし、一日三回はきっちりと審神者を引きずって鍛刀部屋に赴いたが。出陣についてはもはや運だ。膝丸は近侍を勤めているため出陣回数が多くない。疲労のことを考えても
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一日の内で出陣できる回数は決まっていた。その中で検非違使に遭遇できる回数は決して多いとは呼べず、皿に髭切がドロップする可能性はもっと低い。先日は五振目の膝丸がドロップした。唸る膝丸を横目に、お疲れさまでしたとさして仲の良くない先代の刀をねぎらう審神者の目は死んだ魚に似ていた。
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