一般に、女性のピアニストは男性のような豪快さよりも、繊細さ、柔和さで魅力的な演奏をす ると言えるのですが、ここにご紹介するアルゲリッチは正反対で、男性顔負けの豪快な演奏を するタイプのピアニストです。 アルゲリッチはまだ現役の女性ピアニストで、天才肌のピアニストとしても知られます。いえ、 天才そのものと評する人も多いです。 現役ながら、推薦盤には、既に細かくご紹介しきれないほどの名盤が並んでいます。レパート リーは広く、特にお得意の作曲家はないのですが、推薦盤はほとんど、その他の演奏を圧倒し て断然の評価を得ているものばかりです。既に歴代最高の名盤制作ピアニストと言ってもいい ほどです。 アルゲリッチは即興の鬼です。天才ゆえに気分次第の面はあるのですが、気分がのったときは 凄まじいです。ダイナミズムの極と言いますか、まさに鬼気迫る凄演を展開します。 それゆえ、協奏曲では時に、指揮者に喧嘩をうるほどの壮絶な演奏を聴かせます。 天才ならではのリアリズムの極みです。とても女性とは思えない気迫に満ちたタッチのピアニ ストですので、どちらかと言いますと協奏曲に適性があると言えるのではないでしょうか。伴 奏のオーケストラをも喰ってしまうくらいの凄味があります。 アルゲリッチもさすがに高齢ですが、まだまだ頑張って欲しいです。 チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」 ☆推薦盤☆ ・サン=サーンス 動物の謝肉祭/クレーメル(Ⅴn)他(85)(デッカ) SS ・シューマン 子供の情景/(83)(グラモフォン) A ・ショパン ピアノ協奏曲第1番/アバド(68)(グラモフォン) SS ・ショパン ピアノ協奏曲第2番/ロストロポーヴィチ(78)(グラモフォン) A ・ショパン ピアノ協奏曲第2番/デュトワ(98)(ワーナー) A ・ショパン 前奏曲全曲/(75、77)(グラモフォン) S ・ショパン ピアノ・ソナタ第2番「葬送」/(74)(グラモフォン) SS ・ショパン ピアノ・ソナタ第3番/(67)(グラモフォン) S ・チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番/アバド(94)(グラモフォン) S ・ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番/アバド(04)(グラモフォン) A ・モーツァルト ピアノ協奏曲第20番/アバド(13)(グラモフォン) SS ・リスト ピアノ協奏曲第1番/アバド(68)(グラモフォン) SS ・リスト ピアノ・ソナタ/(71)(グラモフォン) A ・プロコフィエフ ピアノ協奏曲第3番/アバド(67)(グラモフォン) SS ・ラヴェル 夜のガスパール/(74)(グラモフォン) SS *ショパンとリストのピアノ協奏曲は同じCDです。 <即興派><情熱><協奏曲◎><レパートリー広>
女性で世界的な演奏家になると、結婚して女性としての道を選ぶか、ひたすら音楽の道を選ぶ かが非常に難しいです。もちろん、大部分の女性は結婚し、母親としても演奏活動を続けては いますが、アルゲリッチのように何度も離婚を重ねているケースもあります。妻、母親として の道を選ぶと、どうしても音楽活動に影響してしまうのでしょう。 クララ・ハスキルは、20世紀に活躍した女性ピアニストの代表格ですが、あえて生涯結婚を せず、音楽に身を捧げることを選択しました。その献身ぶりに、信奉する女性ファンが多いと 言われています。 ハスキルは当代随一のモーツァルト弾きでした。ここでよく考えてみますと、同じくここでご 紹介しているピリスもモーツァルト弾きですし、日本が世界に誇る内田光子もモーツァルト弾 きのピアニストです。 そうしますと、女性ピアニストとモーツァルトというのは何か関係があるのでしょうか。繊細 な音楽ですので、女性ピアニストに合っているということなのでしょうか。 ハスキルは、ソロとしても活躍しましたが、室内楽でヴァイオリンなどの伴奏者としても大活 躍しました。ソロの時は、いかにも孤独な女性を感じさせる繊細なタッチを見せ、伴奏の時は、 ソロの時にはない優しい微笑と大きなぬくもりを感じさせたと言われています。 伴奏としては、ヴァイオリニストのグリュミオーとのデュオが有名でした。 モーツァルト「ピアノ協奏曲第20番」 ☆推薦盤☆ ・モーツァルト ピアノ協奏曲第20番/マルケヴィチ(60)(デッカ) A ・モーツァルト ピアノ協奏曲第27番/フリッチャイ(57)(グラモフォン) A ・モーツァルト ヴァイオリン・ソナタ集/グリュミオー(56、58)(デッカ) 伝 <タッチ繊細><モーツァルト〇>
ピリスは現役の女性ピアニストです。1990年代までは、モーツァルトのピアノ・ソナタく らいしか評判の高いCDはなく、モーツァルトが得意なピアニスト程度の印象しかなかったの ですが、ヴァイオリニストのデュメイとの一連のヴァイオリン・ソナタの絶妙なデュオが大好 評を博し、一躍世界の第一線に躍り出ました。それからというもの、シューベルト、ショパン にまで名盤を残し始めました。 タッチが柔らかく(体が小さいらしいです)、音色に気品がありますので、小品向けなのでし ょう。依然、世界有数のモーツァルト弾きのピアニストと言えます。 今後も録音があるのか、年齢的に厳しいかもしれませんが、ぜひご注目下さい。 1998年10月、アバドと共にタワーレコード渋谷店にてサイン会 モーツァルト「ピアノ協奏曲第20番」第3楽章 ☆推薦盤☆ ・シューベルト 即興曲集/(96、97)(グラモフォン) SS ・シューベルト ピアノ・ソナタ第21番(11)(グラモフォン) A ・ショパン ピアノ協奏曲第2番/プレヴィン(92)(グラモフォン) S ・ショパン 夜想曲全曲/(95、96)(グラモフォン) A ・モーツァルト ピアノ協奏曲第21番/アバド(93)(グラモフォン) A ・モーツァルト ピアノ協奏曲第26番/アバド(90)(グラモフォン) A ・モーツァルト ピアノ協奏曲第27番/アバド(11)(グラモフォン) A ・モーツァルト ピアノソナタ第11番「トルコ行進曲つき」/(90)(Gフォン) SS <タッチ繊細><伴奏派><小品○><モーツァルト◎>