★ GBAゲームレビュー ★

昔懐かしの「信長」が寝っ転がって楽しめる
信長の野望

  • ジャンル:戦術シミュレーションゲーム
  • 発売元:コーエー
  • 価格:6,800円
  • 対応機器:通信ケーブル
  • 発売日:9月28日


 ひょっとするともう1,000回ぐらい全国制覇したかもしれないコーエーの「信長の野望」シリーズ。「信長のどこがそんなにおもしろいの?」と聞かれても少々困ってしまうが、強いて言えば「戦国時代という濃密な時代を、史実の枠を超えて自由に想像の翼を広げられるゲームだから」といったところだろうか。
 私の場合、遊び始めて1時間もすると戟剣の響きや馬蹄の轟きが徐々に脳内を満たし始める。2時間するとわらじ擦れして足を引きずりつつ走る農民兵の姿や、山中をこだまする鉄砲の射撃音や武将の雄叫びなども加わり、脳内が完全に「戦国時代」で満たされてしまう。この瞬間が好きだから、というよりこの状態にトランスするために、私は信長をやり続けるわけである。というような話はどうでもいいとして、今回晴れてゲームボーイアドバンスに移植された「信長の野望」は、同作の魅力を過不足なく収めた大人も本気で遊べる1本だ。


■ 携帯ゲーム機初の全国各地域をカバー、ユニーク要素も盛りだくさん

GBA版「信長の野望」のメイン画面。画面内に必要な情報を見やすく表示している
 GBA版「信長の野望」は、PCを始め数々のコンシューマ機に移植されている「信長の野望」シリーズを、携帯ゲーム機でも遊びやすいように数々のアレンジを加えたオリジナル版となっている。内政はコマンド選択式で、戦闘はヘックスによるターン制を採用。目立った特徴としては、「文化」と「技術」というふたつの要素が挙げられる。前者は茶器蒐集という大名道楽や茶会による武将間の交流を再現し、後者は鉄砲や鉄甲船といった新兵器を用いた新しい合戦模様を再現している。サウンドは、信長第1作から第6作「天翔記」まで担当した菅野よう子氏。

 と、ここまで書けばシリーズのファンならおわかりのとおり、GBA版はシリーズ第4作「武将風雲録」にかなり近い内容となっている。鉄砲が絶大な威力を発揮し、いかにも文化の香りを漂わせる雅で柔らかい印象の名曲がひしめく、あの4作目だ。マップは、携帯ゲーム機向けとしては初となる鹿児島から青森まで含めた全国マップを採用。本編シナリオは「戦国の動乱(1555年)」、「信長包囲網(1571年)」、「本能寺の変(1582年)」の3本。難易度設定は、入門(初級、中級、上級)、実力の4段階となっている。

 GBA版では、これらの要素に加え、通信ケーブルを用いた最大4人までの対戦プレイを搭載。マルチプレイのシナリオは本編シナリオとは別に用意され、「京を目指せ」「信長を討て」など、いずれも比較的短い時間で終わる共通の目標を全員で目指すというものになっている。

【ゲームの始め方】
シナリオ、ゲーム難易度、担当大名、ゲーム環境を設定するとゲームスタートとなる。慣れてくると電源オンから10秒足らずでゲームが開始できる


■ 直感的に国家を切り盛りできる秀逸なインターフェイス

武将一覧は全画面表示となる。左右キーでソートする項目を選べる
 ところで、実際にプレイしてみて一番驚いたのがインターフェイスだ。コンシューマ版のように、カーソルキーで内政項目を選択してAボタンで決定していくのではなく、すべてのキーをフルに用いる直感的で短い操作を実現している。カーソルキーが大項目で、下キーが内政、上が外交、左が軍事、右が人事といった具合。いずれかのキーを押すと画面下に詳細項目がずらりと並び、そこからはカーソルキーで選んでAボタンで決定していく。R、L、START、SELECTボタンは機能キーになっており、使用ケースによって機能が異なる。たとえば、Rは領国一覧の表示、Lは武将一覧の表示、STARTで城内マップの表示、SELECTで所有茶器の一覧といった具合で、とにかく無駄なキーがひとつもなく、慣れさえすれば瞬時にしたい行動がすぐ行なえるのが嬉しいところだ。

 命令の反応も非常にクイックで、実に心地よくプレイできる。Bボタンを押せばターン終了だが、大名の思考速度がこれまた早く、天災やイベントが発生しない限り、実測2~3秒で次の月のプレーヤーターンが回ってくる。感覚的には待ち時間なしで連続プレイしているような印象だ。これなら退屈な時間にプレイしても、さらに退屈してイライラすることもない。まさしく携帯ゲーム機に完全カスタマイズされた新生「信長」といっても過言ではない出来映えだ。


■ 3本のシナリオを収録したシングルプレイ 目指すは全国制覇

有能な武将に優先して仕事を割り振っていく。大名が直接実行すると倍以上の行動力を消費するので注意
 さて、GBA版は武将風雲録に近いといっても、何せ今から11年前に発売されたタイトル。当時ユーザーだった人の中にはすっかり内容を忘れている人もいるかもしれない。そこでそのあたりの情報を若干補足しつつ、GBA版の印象をお伝えしたい。

 GBA版の基本パターンは、ひと月に一度、配下武将の能力に応じて開墾、商業といった命令を割りあて、少しずつ数値を上げて国を富ませ、収入を増やしていくというものだ。一方で戦闘の高い武将には訓練をさせ、魅力の高い武将に(兵に)施しを行ない、戦闘態勢を整えていく。で、ここからがポイントなのだが、米の売買で用いる相場はひとつしかないので、相場が安いときに米を買い、高いときに売れば、その差額がそのまま丸儲けになる。信じられないぐらい高い鉄砲や茶器を買うためにはこのテクニックは必要不可欠だ。

 また、尾張や摂津など全国制覇のための足がかりとなる重要拠点では、技術を徹底的に上げておくといい。技術が100になれば、「金山」を掘り当てられ、250以上で「鉄砲」の自家生産が可能になり、500台まで上げれば全国制覇間違いなし(だが、べらぼうに高い)の超兵器「鉄甲船」の生産が可能になる。このうち決定的に重要なのが鉄砲で、250以後は技術を上げるたびに生産価格はどんどん下がっていく。さらに、鉄砲や鉄甲船の生産を行なうコマンド「製造」で必要な金は、技術値に加えて、実行武将の政治・教養のパラメータにも左右されるため、これらがおしなべて優秀な、たとえば羽柴秀吉、竹中半兵衛といった一流武将でコマンドを実行すれば、鉄砲の生産に掛かるコストはグッと安くなるわけだ。

【内政】
内政の様子。ちなみに武将は「教育」を施して能力を強化できる。好みの武将を重点的に教育させると幸せ気分に浸れるが、その分戦死した際のガッカリ度も大きい。合戦は常に圧倒的な戦力で行ないたい

こうやって鉄砲隊をずらりと並べられるのが一番やばい。雨を待つか、複数の騎馬隊を手前で待機させて行動力を溜め、しかるのち一気に踏み込むのが上策だ
 もちろん、GBA版でもこういったセオリーはそのまま適用できる。武将風雲録同様、鉄砲隊は、雨の時は射撃不可ながら、被攻撃時に一方的に反撃でき、さらに鉄砲隊を並べて攻撃させると一斉攻撃が可能など、鬼のような強さはGBA版でも健在だった。鉄砲が300丁もあれば、どんな大軍が押し寄せてきても防ぎきることができるだろう。これに対しては騎馬隊の突撃戦法があるが、野戦でもやや厳しいぐらいのシビア調整になっている。

 と、こう書くとバランスが悪そうなゲームに思えるかも知れないが、兵科に何を選んでも大して効果が変わらないような、ぬるぬるの調整に比べれば格段の緊張感があり、「大量生産する前に敵を滅ぼさないととんでもないことになる」という他のシリーズでは味わえない凄まじい緊迫感がゲームを通して味わえる。また、この鉄砲システムでは、練度の高い鉄砲隊で射撃を行なうと結構な確率で敵大将を直接しとめられる。それゆえ配下にしたい一流武将が流れ弾に当たって討ち死にするのを恐れて、射撃をためらわせるのだ。

 同様に騎馬突撃でもしとめる場合が多く、とにかくこのゲームでは武将がよく死ぬ。何も考えずに猪突猛進スタイルで全国制覇を狙おうものなら、ゲーム後半には有能な武将がどこにもいなくなってしまうほどだ。それを防ぐためには、敵を攻撃する際に、細心の注意を払わなければならない。この独特の感覚がたまらなくいい。ある意味でGBA版のおもしろさの核とさえいっていい要素だ。

【合戦】
敵の情報をきちんと把握して、敵を圧倒する戦力で敵領に攻め込む。野戦にするか攻城戦にするかは攻め込まれた方が決める。野戦が海上を含むマップでは、鉄甲船がまさに敵を寄せ付けない圧倒的な強さを発揮する


■ シナリオは充実しているものの意外と遊びにくかったマルチプレイ

マルチプレイ用のシナリオはこの6本
 それでは最後にGBA版オリジナルのマルチプレイモードの印象に触れておきたい。GBA版のマルチプレイは、人数分の本体とカートリッジを用意し、それぞれの本体に対戦ケーブルを繋いで、青い端子に接続したプレーヤーが「Multiplay」を実行すると行なえる。残念ながら本体1台での持ち回り対戦には対応していない。

 ゲームシステムは、シリーズでの対戦方式と同じで、すなわちひとりがコマンドを実行している間は、他のプレーヤーは待機するというもの。誰かがCPU大名に攻め込んだら、戦争が終結するまで待ちっぱなしで、ショートシナリオといえども、たっぷり2~3時間は必要な印象だ。

 ゲーム画面は、CPU戦そのままの印象で、互いに異なる視界の中で交互に部隊ユニットを動かしていくことになる。ただ、この際に双方のデータは完全に同期を取っているようで、1部隊を動かすたびにデータ転送のためのわずかな待ち時間が発生し、4、5部隊といった大部隊で出陣していると、1ターンのコマンドを実行するにも結構な時間が掛かり、かなりのストレスを感じた。このケーブルを使った対戦方式の最大の特徴は、プレーヤー対プレーヤーでの合戦の際に、相手の視界が絶対に見えないことだが、同期によるたびたびの待ち時間の発生という大きなデメリットに比べればわずかなメリットでしかない。

 結論として、有視界程度の対戦相手とわざわざ中途半端に短いケーブルを使って対戦を行なう必要性はまったく感じられず、これなら本体1台で持ち回りによる対戦にしてくれたほうが遊ぶ機会が多かったように思う。最後に慌てて付け加えておかなければならないが、シングルプレイに関して言えば、シナリオ、ゲーム性共に重すぎず軽すぎず、まさに携帯ゲーム機に適した内容となっているため、シングルプレイ目当てに購入してもまったく損はない1本だ。管野よう子氏のサウンドも微妙にアレンジが施されているものの、相変わらず抜群に聴かせてくれる。ぜひヘッドホンを装着してステレオ環境でじっくり楽しみたい作品である。

【内応】
GBA版では、合戦で捕らえると意外と簡単に仕官に応じてくれたりする。が、忠誠度を低いままにしておくと、合戦で必ず敵の内応に応じて、戦闘前にこちらの戦力がガタガタになる。この仕官に応じやすい一方で裏切りやすいというシビアすぎる設定も本作の魅力のひとつだ

【茶器・茶会】
忠誠度の急激な向上が見込めるのが茶器。これぞと思う武将にはガンガン与えておくと効果的。また、茶器を所有していると茶会を開くことができ、ちょっとしたイベントが見られる

(C) 2001 KOEI Co.,Ltd.


□コーエーのホームページ
http://www.gamecity.ne.jp/
□「信長の野望」の公式ページ
http://www.gamecity.ne.jp/products/products/ee/Rlnob_gba.htm
□関連情報
【7月19日】最大4人までのケーブル対戦を実現 コーエー「信長の野望 ゲームボーイアドバンス版」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010719/nobunaga.htm

(2001年9月28日)

[Reported by 中村聖司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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