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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話 作者:ウィン

第七章:転生者と竜編

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第二百十三話:闘技大会の予定とルナの来訪

 テストを明日に控えた日。ひたすら復習を繰り返す授業を終えて帰路に着こうとしていると、ふと声を掛けられた。


「あ、ハク、ちょっといいか?」


 話しかけてきたのはクラウス先生。二年Bクラスの担任であり、火属性魔法の授業を請け負っている先生だ。

 風の噂で聞いたのだが、クラウス先生の授業はとにかく熱血で、熱が入るとすぐに学生に無茶をさせてしまうらしい。

 次の魔法の授業ではヘロヘロになっている学生も多く、他の先生からも注意を受けているらしいがあまり聞いていないらしい。

 今はまだ一年の時の復習で座学ばかりだが、後期に入って実戦練習をやるようになったらその片鱗を見せつけられるかもしれない。

 だから、いざという時は注意してほしいといろんな人から頼まれている。なんでみんな私に言うんだろうか。

 まあ、私はとても魔力が多くてこのクラスの中では一番耐えられそうだから、というのがあるのかもしれないけど。それに、学生は知らないけどクラウス先生は私がサリアのお目付け役として編入してきたことを知っている数少ない先生の一人だし、私の言うことは多少なりとも耳に入れてくれる可能性はあるだろうから間違っちゃいないんだけどね。


「はい、なんでしょう?」


「今度開かれる闘技大会に参加するメンバーなんだが、お前が候補に挙がっているから伝えておこうと思ってな」


 キーリエさんが話していた通り、学園から闘技大会に参加するメンバーが選ばれるらしい。

 参加するのは五人ほどで、学年関係なく優秀な成績を持つ者から候補を選び、会議によって決定するらしい。

 学年関係なくとは言ったものの、大体選ばれるのは高度な魔法の授業を受けている上級生ばかりで、クラスもほとんどがAクラスの学生。本来なら、二年生にはあまり関係ないイベントなのだが、どういうわけか私達も候補に挙がってしまったらしい。

 まあ、私は前回大会で準優勝っていう結果を残してしまっているし、成績だってそこまで悪くない。というか、平民にしたらBクラスに上がっているという時点で相当に優秀な部類になる。

 だから、二年生だったとしても候補に選ばれることに不思議はない。


「それ、断ることはできるんですか?」


「出来るが、場合によっては強制されることもある。他の候補が全部辞退したらとかな」


 闘技大会は基本的に殺しは禁止されているが、いくら注意しても死亡者が出る時はある。そもそも、闘技大会は基本的に一対一がルールであり、近接戦で不利な魔術師は勝ちにくい。

 だから、これは学生の力を伸ばすというよりは、力を付けて天狗になっている学生に現実を見せ、魔術師としての弱点を学ばせるという意味合いがあるのかもしれない。

 今までの結果を見ても、学生はみんな予選落ちしてるみたいだしね。

 ほぼ安全だとは言え、やはり危険なこともあり、辞退する人も多いらしい。だが、少なくとも一人以上は出さなければ学園のメンツが立たないため、全員が辞退した場合は最も優秀な者が強制的に参加させられることになるらしい。

 実戦を学ばせるだけだったら適当に冒険者を雇ってダンジョンでも潜らせた方が勉強になる気はするけど……まあそれだと不意の事故が怖いし、闘技大会の方がまだ安全か。


「お前、前回大会で準優勝したらしいが、リベンジする気はないのか?」


「今のところはありません」


 どちらかというと観戦の方がしたい。

 前は参加してしまったし、切羽詰まってたから碌に相手を見ることもなかったしね。今なら、落ち着いて試合を楽しむことが出来るかもしれない。


「そうか。まあ、決まったらまた連絡するから、頭の隅にでも留めておいてくれ」


「わかりました」


「それじゃな」


 そう言ってクラウス先生は去っていった。

 それにしても、闘技大会って確か来週だった気がするんだけど、こんなに遅くていいんだろうか。

 まあ、最悪飛び入りでもいいわけだから当日までに参加メンバーが決まっていれば参加自体はできるだろうけど、正式に学園として参加するならちゃんと登録しておいた方がいいと思うんだけど。

 それとも、既に登録だけは行っているのかな? 枠だけ取っておいて、後から名前を登録するみたいな。

 だとしても心構えとか必要だろうし、もっと早く伝えて欲しいけど。

 まあ、いいや。選ばれてしまったら辞退すればいいし、辞退出来なかったら適当に負ければすぐに終われるし。

 ……いや、それだといろんな人に怒られそうな気がする。サリアとかエルとかアリシアとかサクさんとかお姉ちゃんとか。私が既に戦えることを知っている人はがっかりしてしまいそうだ。

 あれ、これ意外に面倒? うーん……まあ、なるようになるか。


「ハクお嬢様、もし選ばれたら私応援に行きますからね!」


「僕もだぞ!」


「ああ、うん、ありがとね」


 その後、少し図書館で勉強をしてから寮へと戻る。

 そういえば、闘技大会の件エルは候補に入らないのか。

 まあ、エルは竜だし、選ばれてしまったら困るんだけど、エルも十分選ばれるだけの実力は持っている気がする。というか、エルだけでなくサリアも普通に強いと思うんだけどな。

 成績に関しても私と同じくらいだし、どうして選ばれなかったのかわからない。

 まあ、いいんだけどね? ちょっと気になっただけで。

 これがもし私が目立ちすぎているからというならちょっと申し訳ないけど。


「ハク、お休み」


「うん、お休み」


 ちょっともやもやしながらベッドに入り、眠りにつく。

 明日はテストだからしっかり寝ないとね。


 翌日、予告通りテストが始まった。

 問題はほぼ予想通りの場所が出題されたため、解くのにそこまで苦労はしなかった。ただ、私の魔法の理論は教えられているものと少し違うため間違えそうになる。

 私の魔法に詠唱句は必要ないし、魔法も精霊が手を貸してくれているわけではなく、自力の魔力で再現しているだけだしね。入学テストの時に書いた答えはすべて間違いだとして処理されてしまったらしい。

 言いたいことはあるけど、テストは習ったことをいかに吸収できているかを判断するものだから、ここで穿った答えを書いても意味がない。ちゃんと教わった通りのことを書いていくよ。

 特に問題なくテストは終わり、友達と今日の手ごたえを確かめ合う。

 今年から授業は選択制になっているからみんな同じ内容とはいかないけど、皆概ね手ごたえはあったということだった。

 この調子なら期末テストでドジを踏まなければBクラスのまま。運が良ければAクラスも見えるかもしれない。

 まあ、私としてはそこまでクラスにこだわりはないからみんなと一緒ならどこでもいいんだけどね。


「テストが終わったら、どこかに遊びに行きませんか?」


「あ、それいいですわね。最近張り詰めてましたし、羽を伸ばしたいですわ」


 テストはまだ二日残っている。気が早いとは思ったが、確かに最近遊べていなかったしいいのかもしれない。

 サリアもエルもシルヴィアさんとアーシェさんの言葉に同意し、とても楽しそうだ。

 でも、遊ぶと言ってもそんなに行くところがないのがなぁ。

 前世であればカラオケとかバッティングセンターとか色々あったけど、この世界では娯楽が少ない。

 一応、普段は闘技場で剣闘士の戦いが繰り広げられたり、劇場では公演が開かれたりとなくはないけど、それだけじゃねぇ。

 今度何か遊びを作ってみるのもいいかもしれない。将棋とかリバーシとかなら作れそうだし。


「ああ、ハク。いたいた」


 教室で雑談をしていると、不意に声を掛けられた。

 振り返ると、そこにはクラウス先生の姿がある。まだ一日しか経ってないけど、もう決まったのかな?


「お前にお客さんが来てる。応接室にいるから会いに行ってやってくれ」


「お客さん? 誰ですか?」


「確か、冒険者のルナさんだそうだ」


「ルナさんが……」


 いずれは話し合いをしたいと思っていたけど、まさか向こうから会いに来るとは。

 でも、これは好都合だ。ルナさんさえ説得できれば後は何とかなりそうだし、頑張ってみよう。


「わかりました」


 さて、どうやって説得したものかな。

 感想、誤字報告ありがとうございます。

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