見て、知って、楽しむ 福井のミュージアムツーリズム(上)恐竜博物館、年縞博物館
【18】本物に出合う!“地味にすごい、福井”の博物館
沓掛博光 旅行ジャーナリスト
学術研究とエンターテーメントが両輪
ジオラマ展示の先には福井県で発見された恐竜の骨格標本や化石などが展示されている。中でもフクイベナートル、フクイサウルス、フクイラプトルは復元されて全身骨格を展示、いずれも博物館に近い北谷町で発見されたものだ。
恐竜博物館は2000年に開館したが、そのきっかけとなったのは1982年にこの勝山市北谷町の川岸で中生代白亜紀前期のワニの全身骨格の化石が発見されたことだ。以後、周辺で次々と恐竜の化石が発見され、福井県は“恐竜王国”と呼ばれるほどに広く知られるようになった。
1993年に公開された映画「ジュラシック・パーク」の人気も背景にあると考えられるが、開館以来入館者は全国から訪れ、2年目にして入館者は100万人を突破、以後、2006年に通算200万人、2011年に同400万人と短期間に増加している。その要因を竹内利寿館長にうかがうと「当館は研究施設と福井県を代表する観光施設の二つの役割を持っている」と説明してくれた。エンターテーメント性の創出や話題作りも大切にし、入館者が五感を使って楽しく学べる博物館の運営を心掛けているという。
また、福井県交流文化部ブランド課の恐竜戦略室によると、2009年より恐竜博物館の管轄を県の教育委員会から交流文化部の前身である観光営業部に移管し、国内外への発信やブランド力の強化を目指したという。「恐竜をキラーコンテンツに、ブランドを有効に発信するためです」と斉藤輝幸室長は語る。
観光は非日常の中で楽しみを求める旅と言われるが、恐竜という非日常の世界を体感し、楽しめるこの博物館はまさに観光そのもと言えよう。また、研究機関としては現在、常時16名の研究スタッフが所属し、古生物や地質などの調査、研究を海外の研究機関と提携しながら進めている。
福井県では後述の福井県立一乗谷朝倉氏遺跡博物館も交流文化部に所属している。博物館を学術研究の場に加えて観光資源としてブランド化し、地域振興の推進も図っていると言える。なお、恐竜博物館は新館工事のため12月5日より休館し、2023年の夏にリニューアルオープンの予定。生まれ変わる博物館では高さ9メートル、幅16メートルの大型3面スクリーンや化石発掘体験など体感型施設や体験プログラムをさらに充実してお目見えするという。

3階にあるディノカフェでは恐竜にちなんだ化石発掘オムライス(左)やティラノパフェ(右)が人気だ(筆者撮影)
旬の越前ガニで本場の味に舌鼓
福井県の博物館を巡る旅(ミュージアムツーリズム)のもう一つの楽しみに食がある。
11月6日から日本海のグルメの王者とも言われる越前ガニが登場した。恐竜博物館から日本海に向けて車を約1時間走らせると大海原に望んで休暇村越前三国が立つ。松本清司総支配人によれば、「恐竜博物館や新たにオープンした一乗谷朝倉氏遺跡博物館など博物館巡りをするお客様の利用が増えてきましたね」と言う。

越前ガニを茹で、刺し身、鍋料理などで味わう休暇村越前三国のかに料理(休暇村越前三国提供)
ここでは、カニ漁解禁の翌日の7日から30日まで、地元の三国港や越前港などで水揚げされたズワイガニ(地元では越前ガニ)を茹でたり、刺し身で味わったり、焼いて食べたりあるいはかにすき鍋にしたりして楽しむ極魅コース(大人、1泊2食4万9500円)がある。また、12月1日から来年の3月21日(除く年末年始)までのかに尽くしコース(同3万9500円)も企画。お値段は張るが本場で本物を味わうのもこの時期ならではの旅の魅力と言える。温泉も湧いているので博物館を巡った後の旅の疲れをとるのもいい。