FTX事件についての情報を整理します。
FTX事件とは
世界有数の暗号通貨取引所FTXやその関連企業が突如として経営破綻した事件です。 事件の全容はいまだ不明瞭です。
この記事について
この記事では情報を整理して、現状わかっている事件に至るまでの過程をオープンな記事としてまとめたいと思います。
現時点で大量の情報が出ていますが、将来経緯を追うことが難しくなることも予想されます。
また現状に混乱されている方も多いはずです。
まずは、交通整理をするためにも、一次ソースを中心にまとめて残しておこうと思います。
個人的にこの衝撃的事件を克明に記録しておきたいという思いもあります。
記事をご覧になって何か補足があればご連絡よろしくお願いします。
将来の資料とするため、ツイートは基本的に埋め込みとスクリーンショットの両方を記載しています。
主な登場人物
- SBF
- 本名 Sam Bankman-Fried。FTXのCEO。事件の中心人物。この記事ではSBFと呼称。
- CZ
- 本名 Changpeng Zhao。2022年現在世界第一位の暗号通貨取引所BinanceのCEO。
- Alemeda Research
- SBFの設立した投資会社。以下では、“Alameda Research”もしくは「アラメダ」と記載。
- Binance
- 2022年現在世界第一位の暗号通貨取引所
- Caroline
- 事件発生時、Alameda ResearchのCEO
初期の歴史
- 2017年11月、暗号通貨バブルの絶頂期に、SBF が California 州 Berkeley にて投資会社Alameda Researchを設立。
- 2018年1月までに、日米間のビットコインの価格差を利用した裁定取引において Alameda Researchは巨額の利益を上げたとされる。
- 2018年 Alameda Research の本社が香港に移転。
- 2019年5月、SBF は暗号通貨取引所FTX を設立。この時の投資家のひとつが Binance であった。
- “Futures Exchange(先物取引所)“から名前を取ってFTXとしたとされる。
- 2019年7月、FTXは取引所トークンFTTを投資家向けに販売
FTTトークン(FTXトークン)について
- FTXが発行した暗号通貨。FTXで様々な優遇を受けることができた。
- 例えば、FTT を FTX に預けておくと、取引手数料が安くなったりした。
- FTXトークンと呼ばれることもあるが、以下では、分かりやすくするため 「FTTトークン」と記載。
- FTTトークン自体は、FTXが公式に設立される前の2019年4月にすでにデプロイ(運用開始)されていることがブロックチェーン上で確認できる。
- https://etherscan.io/tx/0x048906570650e3c282e42832de167a0270c7890c77192362a0bff0f5bf415d3b
- 以下では、このトークンの作成者を FTT Deployer と記載。
- この記録を見るに、FTXは最初からFTTトークンの発行活用を前提として設立されたようである。
- むしろFTTトークンの価値を上げるためにFTXが作られたのかもしれない。
FTTトークンの配布計画
- FTTの配布の情報は下記の 公式ページ にて確認できる(2022年11月16日時点でまだアクセス可能)。
- 発行量は350M FTT(3億5000万枚)
- FTXの利益の一部でトークンを買い戻して burn する措置があるので現在の流通量はこれよりも少ない。
- 初期に一部のトークンを資金調達のため、投資家へ販売した。
- 米国居住者には販売されなかった。未認可証券の販売という追求を避けるためと思われる。
- 半数にあたる 175M FTTは当初から Team Token とされ、要するに Alameda Research の取り分であった
- そのほかにも合わせて200M FTT程度が Alameda Research に付与された。
- これが後の問題につながる
- 一部のトークンはベスティングによりロックされたが現在では全てアンロックされている。
FTTトークンの実際の初期の分配
イーサリアムブロックチェーン上の記録を見ると、 デプロイ後にトークンは以下のように分配されたようである。
- 5M FTT → Alameda Research へ(Vestingなし)
- 255M FTT → 3年間の Vesting コントラクトへ
- 15M FTT → 0x23BfCAcDF7aA678aF1092586E05f88dB896B48d8 へ(最初に20Mを送付し、5Mが返却される)
- 75M FTT → 3ヶ月のVestingコントラクトへ(主に 初期投資家への販売分)
FTTのベスティングコントラクト
総発行量350Mに対して、255M(2億5500万枚)のFTTトークンは、ベスティングでロックされ、以下のスマートコントラクトで管理されていた。 (ブロックチェーン上のスマートコントラクトに受け取りの条件などが機械的にプログラムされており、所定の条件でしか絶対に取り出せないようにして透明性を担保する手法)
ロック解除後の受け取り人は、Alameda Researchのウォレット (0xd769010D3813bAFAf4aDdbfe258EAFD07828bB83) である。 (全てがAlameda Researchの取り分だった訳ではなく、そこからさらに分配される形だった)
2022年9月28日にAlameda Researchが総発行量の半数以上の174M FTTのロックを解除していることがわかる。 ただし、このアンロックされたトークンはすぐにFTT Deployerに返送されている。 FTT Deployer と Alameda Research の所有権はほぼ区別されていないのが分かる。
後にAlameda ResearchはこのFTTを過剰に担保としていたことが判明する。
事件前、最終的に、195.8M FTT (流通量総発行量の約6割)が、FTT Deployerのウォレットに保管されていた。
ここまでのまとめ
- SBF が FTX という暗号通貨取引所を2019年に設立した。
- FTXの利用がお得になるFTTという暗号通貨が発行され、事件前その約6割が Alameda Research の所有下にあった。
次からはFTXの成長の軌跡などをざっと追っていきたいと思います。
FTXの取引高の成長
公式のユーザ数などは不明だが、2020年に大きな成長の足がかりを掴み拡大を続けていったと思われる。
- 2020年夏に、所謂 DeFi Summer と呼ばれるバブルがあり、様々なDeFiのトークンが発行された。
- FTXは先進的なトークンを積極的に上場させ、同時に先物市場も多く提供し、 ユーザの支持を広く集めた。
- 2020年中は、マーメットメイカーの手数料が一律ゼロという措置を始め、様々なキャンペーンも多く活気があった。
- CoinGeckoのデータを見ると、実際には2020年のシェアは横ばいで、2021年に大きくシェアを伸ばした模様。
- おそらく暗号通貨マニアは2020年にFTXに参入し、より一般層のユーザが2021年に大きくFTXに参入したと思われる。
- 出典:CoinGecko
- ただし、FTXは常に業界首位のBinanceに圧倒的な差をつけられている。名声と実際の取引高に大きな乖離があったと言えるかもしれない。
2021年1月 シリーズAで巨額の資金調達を行う
- 2021年1月に、シリーズAの資金調達を終え、4億ドルの資金調達を行った。
- 評価額は80億ドル とされた。
- SoftBank、Temasek などが参加。
- 暗号通貨界隈でことに著名な Paradigm も参加した。
- 当時、ビットコインが史上最高値を更新し、暗号通貨市場は空前の活気に沸いていた時期である。
2021年7月 シリーズBで、クリプト史上最高額の資金調達を終える
- 2021年7月に、シリーズBの資金調達を終え、9億ドルの巨額の資金調達を行った。
- 当然ながらクリプト史上最高額の資金調達である。
- 評価額は180億ドルとされた。
- SoftBank、Sequoia Capital、Coinbaseなどが参加。
- Paradigmもまた参加。SBFのカリスマ性の高さが窺える。
- ひたすら拡大路線に走っていたこのあたりからすでに崩壊の兆しは見えていたのだろうが、逆に 投資家に並ぶ壮々たる面々がFTXにより権威性を持たせることになった。
- 当時世界で最もパフォーマンスの良かった暗号通貨に対してエクスポージャーを持ちたい既存金融市場の投資家たちが歪みを産んでしまったのかもしれない。
- まあみんなCoinbaseに次ぐ株式公開で大儲けしたかった。
- この時点で SBFの持株比率は58% もあった。29歳のSBFの推定資産総額が100億ドルを超え大いに持て囃された。
2021年7月 Binanceの持株を買い戻す
- シリーズBの調達の裏で、Binanceが持株をFTXに売却しFTXの投資からEXITしたことがわかった。
- ソース: decrypt
- FTXがBinanceに持株の買い戻しを持ちかけたのではないかと推測された。
- 要は、Binanceのようなグレーな企業が株主がいると株式公開に邪魔だったということだろう。
株式の買い戻しの内容
この時、FTXはBinanceに対して、株式の一部をFTTと交換したとされる。
- 後に、Binanceの所持するFTTは 0xd9d93951896b4ef97d251334ef2a0e39f6f6d7d7 に集められていたことが分かっている。
- オンチェーン上のデータを見ると、EXIT発表以前から大量のFTTがこのウォレットに送金されている。
- 徐々に株式を買い戻していたのか、買い戻しとは別にBinanceのFTTの取り分が元々大量にあったのか定かではない。
- 結果として、23M FTTという総発行量の7%程度のFTTをBinanceが所有していた。(2022年11月時点でのシェア)
- 思い出して欲しいが、このほかに196Mをアラメダが所有していいるので FTTの発行量の7割近くはFTXグループとBinanceが資産として所有している状態だった。
- (BinanceやFTXがユーザから預かっている分などを含めたら2つのグループが関わる分はもっと多い。)
https://etherscan.io/address/0xd9d93951896b4ef97d251334ef2a0e39f6f6d7d7#tokentxns
2021年7月 Blockfolioをリブランドして、FTXのアプリとする
- 入金すればお手軽にAPY5%を稼げるという事でユーザの裾野を広げるアプリとなり後の被害を広げることになった。
- Blockfolio自体は2020年8月に150Mで買収していた。
- https://www.theblock.co/post/75965/ftx-blockfolio-crypto-app-acquisition
ちなみに買収当時のSBFは以下のようなポエムを投稿していた。この辺りのSBFは一番輝いていた印象がある。 まだあまりツイートにいいねもついていないのが分かる。
2021年8月 LedgerXを買収
- 米国でビットコイン先物取引を提供しているLedgerXをFTX.USが買収した。
- 米国で先物取引を提供してユーザを広げていきたいという思惑 だったと思われる。
2021年8月 Liquidに資金注入
- ハッキングの被害を受けたLiquidに120Mの資金注入
- このような救済資金の提供は何度も見られた。バランスシートの毀損につながった可能性がある。
- この流れで、最終的に日本ユーザはLiquid経由でFTX.JPとして分離された。資産も分別管理されることになり多くの人が助かることとなった。
2021年9月 本社をバハマに移転
- 香港の規制の不透明さを嫌った とされる。
- 規制回避のためのバハマへの本社移転のような動きを見せる企業がなぜあれほどの資金調達を行うことができたのか今となっては謎である。
2021年9月 FTTが80ドルを超え市場最高値を記録
- 単純計算では、FTT80ドルでAlameda Researchの所有するFTTは時価150億ドルになる。
- 流動性がないため、実質的な評価額はもっとずっと下がる。
- しかしAlameda Researchは、FTTの過大な評価額を担保として積極的に利用したと推測されている。
2022年1月 FTX.USも80億ドルの評価額で資金調達
https://www.theblock.co/post/131652/ftx-us-scores-8-billion-valuation-in-its-first-funding-round
- なぜかFTXとFTX.USは別という形で資金調達できた。 結局は全部一緒に経営破綻したので謎である。
2022年1月 20億ドルのファンド FTX Ventures を設立
- よくわからないが、Web3がキーワードのファンドだったらしい。
- Amy Wuがリードに指名される。
- 20億ドルのファンドのリードをBAYCのNFTをプロフィール画像にしているWeb3キラキラ人間が務める形となった。
- https://ventures.ftx.com/
- Webサイトはすでにアクセス不能になっていることを確認(2022年11月15日)
- LeadのAmy Wuからは特に発表なし
2022年3月22日 FTX VenturesがYuga Labsへ巨額の投資
- Yuga Labsは、BAYCというNFTを運用する会社である。
- Ventures立ち上げまもなくの2022年3月22日に、Yuga Labsはシードラウンドの資金調達により、450Mという信じがたい金額の資金を集めた。
- FTX Ventures も第3位の投資家だったとされる。
- この際のポスターが以下のものである。投資元一社がそれぞれ、BAYCのNFTをプロフィール画像として持つという 最高にクールな資金調達 であった。
- AmyがBAYCのNFTをプロフィール画像にしているのはそのため。
- どのようにして金が溶けていったかお分かりいただけると思う。
ここまでのまとめ
- FTXは巨額の資金調達を行いながら経営多角化を目指し、事業を急拡大していった。 (特に米国市場の開拓を重視していた様子。)
- SBFの名声は高まり、資産100億ドル以上の富豪となった。
- BinanceはFTXの投資からEXITし、その対価を含み最終的に22M FTTを保持していた。
以上を踏まえて事件の経過を追っておきたいと思います。以下時刻はUTC
2022年5月 Terraショックの発生
- 詳細は省くが、Terra財団の発行していた アルゴリズムステーブルコイン UST が崩壊 した。
- この影響で Terraという暗号通貨の価値がほぼ一夜にしてゼロになった。
- 掲載したグラフは対数軸であることに注意。5月に時価総額が99%以上下落していることが分かる。
- Alameda Researchは直接の被害を受けなかったが、発生した連鎖的な倒産などからかなりの焦げつぎが発生したとされる。
- このあたりのAlameda Researchの損害の詳細は噂レベルでしかなく、実際何が起こっていたのかの判断は将来のレポートを待つ必要あり。
- 実際はこれ以前からAlameda Researchの経営状態は健全ではなかったことも考えられる。
2022年8月24日 アラメダのCEOの一人が退任
- もう一人のCEOであるCarolineは残った。
- 経営陣の交代には注目すべきであると今になれば考えることもできる。
2022年11月1日 FTX Earnの利率が引き下げられる
- BlockfolioをリブランドしたFTX Earnにおいて、入金するだけで年利5%というサービスを運用していた。
- それまでは、上限が1000万ドルであり、実質上限がなかったが、上限が10万ドルまで引き下げられた。
- レンディングにおける利率の改悪は往々にして、破綻に近付く足音になっている。
- 今回は事件前に引き下げが行われたため直接の関連は不明であるが、予兆現象であったと捉える向きもある。
2022年11月2日 CoinDeskがアラメダの財務内容をリーク
激動の2週間の 引き金を引く記事がCoinDeskに掲載される
- Ian Allison氏が、真偽不明の Alameda Researchのバランスシートをリーク
- 2022年6月時点のバランスシートのリーク。36億ドル相当の「アンロック済みFTT」を資産として計上しているなど。
- この時点で、先述した3年間のベスティングの 175M FTT の Team Token は、まだコントラクトにロックされているが、いつでもアンロックできる状態ではあった。
- よって、「アンロック済みFTT」とは主にこの Team Tokenのことかもしれない。
- 175MFTTを価格20ドルで計上して35億ドルなのかもしれない?詳細は続報が待たれる。
ともかくFTTの様な流動性の低い資産が過大に資産として計上されており財務内容に不安があるのではないかという噂が流れることとなった。
2022年11月5日02:08 Binanceの保持するFTTが全額移動された
- Binanceの保持する先述のFTTが全て移動されたことがブロックチェーン上で確認された。
2022年11月6日14:32 アラメダCEOのCarolineがリークを否定
- リークに含まれていない100億ドル以上の資産があるとツイート
- 逆にリークは少なくとも一部は正しいと分かった。
2022年11月6日15:47 CZが保有するFTTの売却を示唆
- 先に記載したFTXの投資からEXITにおいて、受け取ったのは21億ドル相当のFTTとステーブルコインであったと発表し、FTTをBinance取引所内で売却すると発表。
- 前日のFTTの移動は売却へ向けた動きであったと明らかになった。
2022年11月6日16:03 CarolineがCZにOTC取引を持ちかける
- CZのツイートから16分後に、FTTを22ドルで買い戻させて欲しいとツイート。
- 明らかに焦っている。
2022年11月6日から11月7日にかけてSBFは問題はないと繰り返す
- SBFは様々なツイートを繰り返し、問題はないという姿勢を見せていた。
- 特に問題になったのは以下のツイートで、顧客資産の流用は行っていないと明言したが翌日削除された。
2022年11月8日 FTXが顧客資産の引き出しを予告なく停止
https://twitter.com/TheBlock__/status/1589979338979434497
- 先述の流れから、パニック的に出金依頼が殺到していた。
- この時点では まだFTX.USは通常通り出金できていた。
- 顧客資産が毀損しているのではという噂も流れるが、単に手元に引き出しに対応する流動性がないためであるという見方が大勢 であった。
- この時点ではまだ、天下のFTXが破綻するはずがないという空気が流れていた。
- 以降、FTXグローバルでは現在に至るまで一部例外を除き出金が完全にできなくなる。
2022年11月8日16:03 SBFが突如Binanceとの「戦略的合意」を発表
- BinanceはFTXの最初でそして最後の投資家だ、などと発表。
- 曖昧な内容に混乱が広がった。
2022年11月8日16:09 CZがFTXの買収を発表
- 戦略的合意とは買収のことであったと判明
- デューデリジェンスはまだであるとし、撤回の可能性も示唆。
FTTの価格は乱高下
- SBFのツイート直後に一気に急騰したが、徐々に状況が認知されその後価格は急落した。
- FTTの価格が急落するということは、アラメダのバランスシートがますます毀損したことになり、状況の悪化が懸念された。
2022年11月9日14:30 CZが社員に向けアナウンス
- 状況は未確定である。FTTのインサイダー取引はやめようみたいなことを言っている。
2022年11月9日15:30 Binanceが買収を撤回する観測が高まったとリークされる
- CoinDeskが報道
- アラメダのバランスシートをリークしたのと同じ Ian Allison氏が報道 したので確度が高いと思われた。
2022年11月9日 19:57 FTXアカウントの売買が行われていると報道
個人的に興味深かったのは、この時点でアカウントの売買が行われているという報道があったこと。 引き出しが永久に出来ないリスクがシビアに売買されている現実が見られた。
- アカウントの額面1ドルに対して、15セント程度が相場だったらしい。
- 例えばアカウントに100万ドルあれば、15万ドルでアカウントを売るということ。
2022年11月9日 アラメダのホームページにアクセス出来なくなる
このあたりでアラメダのホームページがアクセス出来なくなった。
大量のリークが飛び交う
2022年11月9日21:00 Binanceが買収撤回を正式発表
- 顧客資産の取り扱いの問題にはっきりと言及した
- FTXが顧客資産の流用を行なっていた疑いが強くなる。
2022年11月9日21:57 :FTXの資金不足がますます懸念される
- Bloombergが 80億ドル(1兆円以上)の救済資金がなければFTXが倒産する可能性がある と報じて衝撃が走った。
2022年11月10日01:52 Sequoia Capicalが全額減損を表明
- シリーズBの投資家だった世界有数のベンチャーキャピタル Sequoia Capitalが、1億5千万ドル投資したFTXの株の持分評価をゼロとすると発表
- ちなみにファンドは75億ドルの利益があり相殺すれば問題ないとした。
2022年11月10日05:22 Reutersが顧客資産流用に対する更なるリーク
- 5月6月に発生したAlamedaの損失を補填するためにFTXが40億ドル相当の資産を移管し、その中に一部顧客資産も含まれていたようだという内部関係者の話を掲載。
- Samは他のメンバーに告げずにこれを行い発覚を恐れていたらしい。横領疑惑強まる。
2022年11月10日13:00 財務省関東財務局がFTX Japanに業務停止命令
https://lfb.mof.go.jp/kantou/kinyuu/pagekthp0270000011.html
- これによりFTX Japan内での暗号通貨の交換などは出来なくなり、 資産保全の体制に入った。
- 暗号通貨業界では以前にも顧客資産を流用したビットステーションや、マネーロンダリングの問題があったFSHOにも業務停止命令が出ている(FSHOは二度の業務停止命令を受けた)
2022年11月10日14:13 SBFが釈明のツイート
- 預かり資産以上の資産はあると明言
- 当然嘘である。
2022年11月10日 突如としてFTXのウォレットから顧客資産引き出しと思われる動きが観測される
ブロックチェーン上で、資産が FTXのウォレットから様々なウォレットに移動し始めたのが観測され、数多くの報告が共有された。
- もしや本当に流動性危機は去り、引き出しが通常通り再開するのではないかという淡い希望的観測も流れる。
2022年11月10日19:08 資産引き出しはバハマ居住者へのものと判明
- 本社のあるバハマ当局からの圧力によりバハマ居住者のみに出金再開したと声明
- バハマ居住の社員への出金を優遇したのではないかという疑い も生まれる。
- この後、金でバハマのKYCを買って出金した人が出たりして最悪だった。
- FTX内でNFTを売買する機能があり、これを利用してアカウント間で資産移転して出金するなどの動きもあった。
- 新規でバハマのアカウントのKYC登録を行うようなこともできる状態だったらしい。
2022年11月10日22:45 バハマ当局がFTX Digital Marketの資産を凍結
2022年11月11日1:16 FTXグループのBlockFiが出金停止
2022年11月11日3:15 FTX Japanが日本円出金を再開
- 顧客資産は保全されているとも明言 された。
- この時点でトレードはできないため、日本円以外で資産を保持している人はまだ引き出しできない状況
FTXの取引所の状況
この時点で、依然としてFTX内での取引機能は動いていた。 1ドルにペグするUSDTというステーブルコインは1.15ドルで取引されるなど、裁定の全く働かない中でトレード自体は行われていた。
2022年11月11日14:14 FTXグループ経営破綻
- 米連邦破産法11条(チャプター11)の手続きを申請 し、経営再建を目指すとした。
- Alameda ResearchもFTX.USも同時に経営破綻 した。
- SBFはCEOを辞任 すると発表
経営破綻の規模について
現時点では詳細は不明。Alameda Researchの申請書類によれば、債権者は10万人以上、資産・負債共に総額は100億ドルから500億ドルの間とだけマークされている。
https://www.docdroid.net/F0TqEsL/alameda-chapter-11-db-pdf
- 実際は アカウントを持っている人は100万人以上いる と思われる。
2022年11月11日15:23 SBFがツイート
- SBFは “Hi all”というカジュアルな書き出しでチャプター11の申請を報告した。
- 依然として、SBFは不規則な発言を繰り返す。
2022年11月11日17:15 FTXジャパンからの追加情報が発表
- 秘密鍵はFTX Japan単独で管理していることが確認された。
2022年11月12日2:22 FTXのウォレットから何百億円もの資産が次々と移動されはじめた
- 破綻後のFTXのウォレットに当然まだ資産がたくさん残されていたが、一部の資産の移動が観測された。
- 0x59abf3.. という新規のウォレットに対して資産の移動が始まった。
- ブロックチェーンでは、ウォレットの所在が知られている場合、何らかのアクテビティが観測されるとアラートが出るようにしている人が多く、資産が移動されたりすると即座に世界中の注目が集まるようになっている。
- 既に破産手続きが始まったのだろうかという憶測 が流れた。
2022年11月12日3:02 資産の移動先で暗号通貨の交換が行われた
https://etherscan.io/tx/0x5c3f5781bbd28ffae925109f6126792180f6745b9e5b08cc58eaf3d69bf0810a
- 1450万ドルのTetherがDAIに交換された。
- 資産保全の観点からは常識では考えられない行為であり、資産の移動はハッキングだったのではないかという観測が強まった。
- Tetherという暗号通貨は最も積極的に資産の凍結を行うことで知られており、資産凍結を回避するため であると考えれば説明ができた。
2022年11月12日4:08 資産の移動は不正なものと公式に発表
- FTXの新しい法務顧問(General Counsel)であるRyne Millerが発表
- 破綻直後のハッキングに世間は震撼し、内部犯の関与によるものであるという疑い が強まった。続報が待たれている。
ハッキングの概要
- 主にイーサリアムブロックチェーンにおいてFTXとFTX.USのウォレットから資産が不正に移動された。
- SolanaとBSCのチェーンでも被害に遭う。
- 一部資産はFTX側により保全された(犯人はFTTなど価値の低いトークンを移動しなかったため保全できた)
- 被害総額は5億ドル程度
- FTXのウォレット
- FTX.USのウォレット
2022年11月12日8:28 FTX Japanは被害を受けていないと発表される
2022年11月12日23:44 バハマ証券委員会が出金の圧力を否定
- バハマ居住者への出金の圧力を否定。無効な優先権として資産の回収を招くような行動を非難。
- バハマ居住者への出金がFTXによる恣意的なものであったのではないかという見方もされた。
- 実際は指示はあったのかもしれないので、調査が待たれる。
2022年11月13日16:57 FTX Japanから資産管理状況について詳細な報告
https://help-jp.ftx.com/hc/ja/articles/12458835958681
- 全ての資産について余剰まであることが確認された(BTCに特に余剰が多い)
2022年11月13日20:00 SBFがFTXにバックドアを仕掛け、100億ドルの顧客資産を移動したとリーク
- 11月6日にSBFを含む幹部の会合があった。
- 会合でSBFはFTXが約100億ドルの顧客資金をFTXからAlamedaに移動した ことを法務チームに明らかにした。
- そのうち、10億ドルから20億ドルの資金がAlamedaのバランスシートに記載されず行方が不明になっていた。
- また同会合で、SBFがFTXに「バックドア」のようなものを仕掛けていた ことも明かされた。
- このバックドアにより、監査をすり抜け記録を残さず操作を行うことができた。 これにより100億ドルの資金が秘密裏に移動された。
- SBFはバックドアの実装を否定。
2022年11月14日3:01 SBFが何時間もかけて釈明ツイートを始める
- 11月7日時点では流動性がないだけで資産は十分あったなどと述べる。
- 典型的な論点ずらしの手法である。
金融庁の規制の先見性や資産保全に関する意識の高さも認識された
- ビジネスの成長を阻害する規制の導入は以前から不評 であったが、このような事態に際し 金融庁の規制の先見性 も認識された。
- 事件後の速やかな業務停止命令 などの動きも支持された。
続報があれば記載をしたい
書けなかったこと
- FTX Japanへのプラットフォーム移管経緯
- SBFがSNSを駆使して名声を高めた手法
- 事件中の細かなニュース(FTX USが取引停止を予告したとか色々)
- 世間の反応
- FTXのその他の事業買収など(BlockFiなど)
- FTXがスポンサーになった事業など
- Solana, Serumの件など
- FTXが成した功績についての記載
- Alameda Researchの初期の活動(後で別に書く予定)
- その他色々
最後に
この記事で紹介したように、ブロックチェーン上では資産の移動や保持などは透明性や検証性が高く、国境に関係なくオープンな取引が永久に記録されています。
これは、今回のような事件を防ぐために役立つものですが、結局は本件では ブロックチェーンの外(オフチェーン)で過剰なレバレッジをかけて各種投資が行われていました。
また、おそらくSBF個人の重大な犯罪行為があったと現時点で報道されていますが、SBFという人物の神格化や過度の信頼 が被害を大きくする要因となってしまいました。
みなさまにおかれましては、この事件に際して、ブロックチェーン技術に悪い先入観を持つ事なく、 どこに問題があったのかを冷静に見極めていただけたら と思います。