土木 利害が一致しない相手の立場を理解して
信頼関係を築く。
それも、JRTTの土木技術者
に不可欠な技術のひとつ。
田中 義章 2010年入社 首都圏の都市鉄道整備に関する調査(取材時)
大学院 都市環境科学研究科 地理環境科学専攻 観光科学専修

志望動機

観光を科学として捉えて議論を重ねた経験も
JRTTでなら活かせるかもしれないと考えていた。

大学院での研究テーマは、車窓観光を行う観光バスの走行・駐停車特性が道路交通に及ぼす影響について。内容は、青森県十和田市の人気観光スポット・奥入瀬渓流をモデルに、車窓観光の実態を明らかにするとともに、政策変更や道路の拡幅工事・駐車場整備などの手段を用いることなく、大型観光バスの走行・駐停車によって発生しているトップシーズンの交通渋滞を解消する方法を検討する、というものでした。
JRTTの存在と事業内容を私に教えてくれたのは、その研究室の仲間です。研究のために東京から東北新幹線を利用して何度も八戸まで通っていたにもかかわらず、鉄道事業者以外の組織が新幹線を建設しているなんて考えたことがなかったので、彼に出会わなければJRTTのことを知らないまま就職活動を終えていたと思います。
エントリーしようと思ったのは、2002年の東北新幹線(盛岡・八戸間)の開業によって八戸の観光地の状況が大きく変わったことを知ったからです。それで「独立行政法人とは?」というところから理解を深め、最終的には、社会・経済に与える影響の大きさ、人的交流を促進する交通インフラとしての可能性、そして日本全国の鉄道建設を担うという事業スケールの大きさに惹かれて志望しました。さまざまなバックグランドと独自の視点を持つ仲間たちと、観光を科学として捉えながら議論を重ねて結論を導き出した経験も、JRTTでなら活かせるかもしれない、と考えていましたね。

仕事内容

構想段階にある将来的な新規路線や
延伸予定の既設路線について調査を行う。

現在、私が在籍している調査第一課は、都市の装置として国民の生活に必要不可欠な鉄道路線を計画する部署です。具体的には新たな路線構想や、既設路線の延伸・複々線化構想などを対象として、適切なルート・駅位置などのハード面、運行計画などのソフト面を計画します。主な仕事は、国や地方公共団体、鉄道事業者の依頼に基づき、新規鉄道路線の計画を行い、将来需要を予測し、社会的な効果や事業としての採算性を評価して、関係者が事業化に向けた判断をするための材料を提供することです。鉄道建設の豊富な実績があり、営利活動を行わない独立行政法人であるJRTTだからこそ、公平な視点での調査ができると考えます。
路線の調査にあたっては、想定したルート上を実際に歩きながら現地状況に即した構造形式を選定しその施工方法も検討します。地質調査などを実施し、土木構造物の設計に必要な基礎データを取得・整理することもあります。調査部門の業務は土木工事とは違い、橋梁や高架橋が完成するなどといった、日々、目に見える成果はありませんが、調査結果の検討・分析や地方公共団体との協議・調整など、あらゆる場面において現場業務に従事して得た知識と経験が生きているのは間違いなく、数十年先を見据えて壮大な夢を描くことができる仕事でもあります。
こうした地道な調査・分析を基にした検討で事業採算性などが確認され、関係者間で事業化の合意形成ができた場合には、JRTTが建設主体となることもあります。近年では「つくばエクスプレス線」や「神奈川東部方面線」が代表例です。首都圏の鉄道は単なる移動手段ではなく、都市の装置としてさまざまな役割を担いますので、自身が調査を担当した首都圏の新規路線の建設に土木技術者として貢献できたなら、これほどうれしいことはありません。

仕事のやりがい

粘り強く話をする以外に前に進む方法がない協議。
最適な着地点が見つかった時の喜びを、今も忘れない。

私のキャリアのスタートは、北海道新幹線(新青森・新函館北斗間)の橋梁、高架橋、山岳トンネルの施工監理です。交通量の多い国道直上での橋桁構築、軟弱地盤・地下水対策など、困難を極めた場面はいくつもありましたが、最も印象に残っているのはこうした土木工事に先だって進めた、地元住民の皆さんとの協議です。鉄道は既存の道路、河川、用排水路、架空線などを横断し、地元の方にお譲りいただく土地を建設用地として使用します。そのため、交差物の管理者や地権者の方に構造物の形や施工方法、環境面での影響などについて説明し、ご理解いただく必要があるのです。
私にとってはこれが初仕事でした。説明役の先輩から「受け入れがたい要求を突きつけられることもある」と聞いていたので、その心づもりをして同行しましたが、一部の方の反発の強さは想像をはるかに超えていました。上司の隣で数名の方の主張を聞いただけで「工事など始められる状況じゃない」と思ったほどです。新幹線が来ることを待ち望む人、営農環境が変化することを懸念する人、同じ地元でも立場によって利害が異なり、こんなにも思いが違うことを痛感しました。それでも前に進もうと思えたのは、常に矢面に立ち、どんなに厳しい意見にも真摯に耳を傾けながら説明を続ける先輩の姿に、JRTTの技術者としての誇りと強さを感じたからです。
新人の私にできるのは、笑顔で挨拶することと、先輩の隣で話を聞くことくらいでしたが、伺い続ける中で「JRTTさん」ではなく「田中さん」と声をかけてくれる方が出てきた頃から風向きが変わってきました。冗談が言えるようになり、「地域の発展のためなら」と前向きに考えてくれる方が増えてきたのです。粘り強く話をする以外に前に進む方法がない仕事ですので時間を要しましたが、だからこそ、お互いにとって最適な着地点が見つかった時は本当に嬉しかったですね。
その後は引き続き、この工区の施工監理を担当しました。建設が始まると軟弱地盤特有の振動に関してご説明する状況にもなりましたが、工事中には地元の方々から「頑張れ」「開業を楽しみにしているよ」と激励の言葉をたくさんいただき、良好な関係のまま工事を進めることができました。土木技術はものづくりの技術ですが、利害が一致しない相手の立場、考え方を理解して信頼関係を築くことも、土木技術者にとって不可欠な技術のひとつだと学んだ仕事でした。

ある1日のスケジュール

9:50 子供を保育園に送り届けてから、出社(仕事と育児の両立支援制度の活用:勤務時間変更9:50~18:20)
10:00 コンサルタントとの打合せ
13:00 情報収集及び業務資料作成
14:00 地方公共団体との打合せ
16:00 今日の打合せ資料整理及び外部打合せ資料の作成
18:30 翌日使う資料を整えてから、退社

キャリア

2010年
北海道新幹線(新青森・新函館北斗間)の北海道北斗市及び七飯町内の工事発注、施工監理(橋梁、高架橋、山岳トンネル)、及び地元協議
2014年
本社新幹線部 技術開発事業の管理
2015年
本社新幹線部 整備新幹線建設事業全体に係るJRTT内の総合調整及び国土交通省との窓口担当
2016年~
現在の仕事
休日の過ごし方
最初の勤務地になった北海道が大好きになり、本社~東京支社へ異動してからも家族でよく出かけていましたが、今は二人目の子どもがまだ小さいので、近所の公園などで子ども達と遊ぶ日々を送っています。夫婦共働きなこともあり、妻とサポートし合いながら子ども中心の過ごし方を心がけています。

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