公安警察の極秘部隊 大物テロリスト逮捕のための捜査方法とは
公安とは国家の安全を守る警察の中の組織。公安の捜査内容は警察内でも極秘とされ、特に重要な任務につく場合、表向きは存在しない人物として警察の名簿・組織図からも名前が消されてしまう場合もあるほどという。
今回、数十年も行方をくらませていた重信房子元日本赤軍最高幹部の逮捕につながった公安の極秘任務について当時の警察関係者の証言、長きにわたり取材を続けてきた作家・麻生幾氏の書籍をもとに紹介した。
日本赤軍とは1972年、奥平剛士・重信房子を中心に結成された国際テロ組織。当時、明治大学に在学していた重信は「共産主義者同盟赤軍派」という組織で活動していた。京都大学で学生運動をしていた奥平と出会い意気投合すると、共に中東へ行こうと誘い、すでに公安にマークされていた重信は出国が難しかったため、苗字を変えるために奥平と偽装結婚。
数々の事件を起こしたが、1988年以降は主だった事件を起こしていなかった。日本赤軍のメンバーの行方もつかめない中、1990年代初めの大阪に公安の精鋭部隊が集められ日本赤軍メンバーを逮捕せよと命令が下された。この頃、日本赤軍で国際手配されていたのは重信を含めて10人以上。
支援者に会うために日本に帰国している可能性もあがっていた。支援者とは日本赤軍を国内外で支える存在。支援者は赤軍メンバーのために、活動資金を集めたり滞在場所を用意したりするという。
そしてある人物が見つかる。その男は30代の公務員で学生時代に寮費値上げ反対闘争に参加していたという。公安の職員はその男がよく行く図書館に通い、信頼を得てから身辺調査を依頼。この男性の追跡は10年近くに及んだ。
2000年7月、男性は銀行でどこかに振り込みを行っていた。その1ヶ月後同じ行動をとっており、銀行に確認すると大阪市西成区のあるマンションの賃貸料を振り込んでいたという。
公安はすぐに、そのマンションが見えるアパートを借り見張りの拠点とした。約1ヶ月後、ある女がエントランスに現れる。
女はマンションで寝泊まりしている様子で、その女は重信ではないかとベテラン捜査員。解析が行われると重信である可能性が高いことがわかった。しかし、確たる証拠がないと逮捕はできないため改めて重信最高幹部に関する資料が集められた。
捜査員たちは重信のタバコの吸い方に特徴があると発見。かつて彼女は親指と人差し指でタバコを持っていたというが、その吸い方が一致していたのだ。
さらにある日、缶コーヒーを飲んでいた後をつけ、ゴミ箱から缶を採取。缶から指紋が採取され、保管されている重信の指紋と一致した。
そして2000年11月、捜査員は大阪府高槻市のホテルに張り、重信を逮捕した。
逮捕から5ヶ月後、重信は日本赤軍の解散を宣言。 その後の裁判では、懲役20年の刑が確定した。
しかしなお日本赤軍メンバー7人は逃亡中。 警察は今も捜査を続けている。