場面はドフラミンゴが鳥カゴを発動し、ルフィ達に懸賞金をかけたところから。
原作ではルフィがすぐに王宮へ向かいましたが、この時空ではウソップ達が合流するまでルフィがモタモタしていました。
1話 大切な物をあずけて(ロー視点)
ロー「始まった…!『鳥カゴ』だ…!」
天を覆う忌々しい糸の檻。嫌でも『あの日』を思い出す。あの男はまた、不都合な全てをこの閉ざされた籠の中で全て消し去るつもりだ。
王宮から放り出された俺と麦わら屋達は、ドフラミンゴが一方的に提示した『ゲーム』のルールを聞いた。『受刑者』か、面倒なことになりやがったな。
ロー「おい、麦わら屋…?」
横に立っている同盟相手を見ると違和感を覚えた。短い付き合いだがこいつがこんな状況で、一言も言わないなんてことがあるのか?
ゾロ「おいルフィ、今ロビンから連絡があった。ウソップと、それに『ウタ』も無事で一緒にこっちに合流するらしい」
どうやら子電伝虫でニコ屋と連絡をとったらしいロロノア屋が麦わら屋に話しかける。
ルフィ「…!」
王宮から放り出されてから一言も喋らず、ただドフラミンゴのいる王宮を睨み続けていた麦わら屋の肩が震えたように見えた。
ゾロ「…どうした?」
どうやら俺よりも遥かに付き合いの長いロロノア屋も違和感を覚えたらしい。
ルフィ「ゾロ、トラ男を頼む」
ゾロ「おい、お前どうした…?」
おそらく台地から飛び降りて一人で王宮へ向かおうとした麦わら屋を、ロロノア屋が肩を掴んで引き留める。
ルフィ「おれは、ドフラミンゴをぶっ飛ばしてくる」
ゾロ「それは構わねェが、お前なんでそんなに苛ついてんだ?
…ウタのことか?」
『ウタ』?確かいつもの麦わら屋の肩に乗っかっていたあの動く人形か?
そういえば姿が見えないが、まさか…!?
ルフィ「……」
ゾロ「おい!ルフィ!」
ロロノア屋の腕を振り払い、王宮へ向かおうとする麦わら屋に声をかける。
ロー「おい、麦わら屋。ドフラミンゴは生かしてカイドウと衝突させる作戦だったはずだ。今ここでドフラミンゴを討てば、俺達は怒れる『四皇』と直接対峙する羽目になるぞ…!」
どうやら頭に血が登っているらしい麦わら屋に当初の作戦を思い出させる。正直既に破綻し掛けている作戦だが、多少は頭が冷えるはずだ。
ルフィ「悪ィトラ男、そんな先の話じゃねェんだ。」
ロー「何だと!?」
ルフィ「おれが今、ドフラミンゴをぶっ飛ばさなかったらよ、あいつがまた…」
麦わら屋が続きを言いかけたところで後方から声が聞こえた。
ロビン「ルフィ!」
顔を向けると、ニコ屋と小人に運搬されるボロボロの長鼻屋、そしてニコ屋の肩を借りて歩く、髪が真ん中で赤と白の2色に別れた見慣れない女がこちらへ向かってくる。
ルフィ「……」
ロー「おい!待て麦わら屋!!」
一瞬だけそいつらに目線を向けた麦わら屋は、まるで逃げるかのようにそこから立ち去ろうとする。
なんだ、普段のこいつなら仲間と合流して喜ぶはずだろう?
ロロノア屋もこいつの態度に困惑しているようだが、肩を強く掴んでこの場に引き止めている。
??「ルフィ…?」
周囲の喧噪で聞き取りにくいが、妙な髪色の女が何事か呟いたように見えた。立ち去ろうとしていた麦わら屋の動きが止まる。先程まで怒りで張り詰めていた奴の顔に、何処か怯えたような表情が混じる。
踵を返した麦わら屋は、まるでその表情を相手に見せたくないかのようにトレードマークの麦わら帽子を深く被り、奇妙な髪色の女の前まで歩み寄る。
??「る、ふぃ…?」
ルフィ「ウタ、帽子あずかっといてくれ」
ポスン、と女の頭に麦わら帽子を乗せる。その声色はあいつの普段の底抜けに脳天気な声とも、先程の張り詰めた怒りを押し殺すような声でもない。まるで親が子供を安心させるような、そうだ、『コラさん』があの時俺に語りかけてくれた時のような…。
ルフィ「今からドフラミンゴをぶっ飛ばして来るからよ。それまで、もうちょっとだけ、待っててくれ」
ウタ「うん、わがった…」
ウタと、あの人形と同じ名前で呼ばれた女が涙を堪えながら返事をする。返事を聞いた麦わら屋はニコ屋と長鼻屋に目を向ける。
ルフィ「ロビン、ウソップ、ありがとう」
ロビン「ええ」
ウソップ「おう」
二人の短い返事に満足したのか、いつも通りの脳天気な笑顔を浮かべた麦わら屋は何故か俺の身体に腕を巻きつける。
ルフィ「よし、いくぞ!トラ男!!!」
ロー「おい待て!?どういうことだ!?」
ルフィ「どうって、今からドフラミンゴをぶっ飛ばしに行くんだろ?一緒に行くぞ!」
ロー「ふざけるな!行くのはいいがせめて錠を外せ!!」
海楼石の手錠のせいで能力どころかまともに動けないのに何いってんだこいつ!?
ルフィ「そのうち外れるよ」
ロー「外れるか!!!」
何をトンチキなことを言ってやがる!
ルフィ「ロビン!ウソップ!…ウタを頼む」
麦わら屋が台地に残る仲間に声をかける。その声はつい今しがたふざけた言動をしていたのと同じとは思えないほど真摯な声だった。こいつ、無理してふざけてやがったのか…?
ルフィ「待ってろ、ドフラミンゴ…!」
そして麦わら屋は台地から飛び降りる。王宮へ、ドフラミンゴへ最短距離で辿り着く為に。
錠がついたままの俺を抱えたまま。
ロー「待て!せめて錠の鍵を外せー!!」
次はウタ視点です。
因みに最初がロー視点なのは、この話を最初に書こうとした時に誰の視点で書けば悩んだとき、こいつ視点だと一番湿度が低くて客観的に書けそうなのと、エミュしやすかったからです。
逆にルフィエミュは恐ろしく難易度が高かった…。