イーロン・マスクのTwitter大ナタで思わず表に出たキラキラIT系外資の「裏側」とは

山本 一郎 プロフィール

なぜ?キュレーション・ツイートがバッタリ止まる

ここで問題になるのは、多くの日本人も集まるTwitterユーザーに対してどのような影響を及ぼすのかという点です。海外でもリバタリアンの権化みたいなマスクさんを嫌悪して、人権派ユーザーがTwitterを離れようと騒ぐ図式が出ていましたが、一方で、マスクさんが就任して矢継ぎ早な対策を打っている間に、どうやらTwitterはサービスとしての利用者が過去最大を記録した模様です。

日本では特に、広報部門が中心になって実施していたとみられるキュレーションチームほぼ全員の解雇が伝えられると同時に、Twitter公式のニュースフィードやモーメントが完全停止するという事件が発生しました。ここでTwitter日本法人のキュレーションチームが優先して朝日新聞やテレビ朝日、ハフポストなどの記事を配信するだけでなく、ユーザーのタイムラインにおいてこれらの記事やトピックス、単語を含むツイートを勝手に挟み込む仕様を実装していたのではないかという懸念が表面化しました。

Twitter内部の有力な複数の関係者によると、英語圏でも日本語圏でも、これらのキュレーションチームは担当ごとに関心分野が異なり、誰がその日にキュレーターとして活動するかを見込んで各メディアが担当者の好む記事をニュースフィードやモーメントに押し込むことが、TwitterからのPV流入を狙うコツと広く認識されてしまっていたとのことで、つまりはネットニュース編集部側がTwitter社の仕組みをとっくにハックしていたことになります。

実際これらのサービスが止まってみると、見事にタイムラインにはこれらのトピックスや記事が流れて来なくなりました。

これらの源流は2016年、朝日新聞系のネットメディアであるハフポストにおいて、特定の野党と協同してネット内で拡散させたハッシュタグ運動「#保育園落ちた日本死ね」が一大ムーブメントになったことのようで、きっかけは問題提起、善意だったと見られますがネットで問題の一部を切り取って煽る技法が良いかどうかは動機の善悪とは無関係に感じます。

 

ただ、キュレーションチームではこの成功体験が「善意で、インターネットで問題となっているエコーチェンバーやクラスターの分断に役立ち、社会問題を多くの人に知ってもらう機能となり得るのではないかと話あっていた」ことが基点であったとされます。

実際に、今回解雇されたキュレーションチームのメンバーの中には、SNSにおける言論の分断と流れる情報の品質を深刻に心配し、彼らなりにTwitterでのツイートが悪い方向に向かないよう試行錯誤する内容と議論が、社内のコミュニケーションツールのログに残されています。

今後、マスクさんを含む経営陣がこの問題に関して何が起きていたのかを調査することになれば、かなりの部分が明らかになるのではないかとも思います。これらの状況については何をしてきたか、どういう効果があったのかを再検討する方針をもっている新しいTwitter社幹部もいると伝えられています。

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