旧多を殺してしまえばそれで済むか?
有馬ほどの強さがあれば、単独で和修を「潰す」事は
可能だったのかもしれないが、単独で行う事には意味がない、
と有馬が一番解っていたからだろう。
ぶっ潰すだけでは(特定のターゲットを消す)その事実が
残るだけで、それらの人間を生んだ背景・思想などは
消し去る事が出来ない、と知っているからだ。
なので、カネキくんは「実力行使」せずに組織を作る方を
選んだんだろう。
加え、有馬の中には一人で和修に立ち向かうほどの情熱を生む
必然性を自分の中から絞り出す事が出来なかったんだろう。
平子が言ってる様に「空っぽ」だったからだ。
対し、旧多が「理由がないと行動できないヤツはクソです」と
言っているのは、有馬を揶揄しているとも思われる。
鉄骨事件の時にリゼの傍に居たのが何故カネキくんだったのか、
と言う問いに対し、他者を根っこらからバカにするような
旧多独特のリアクションで高笑いを上げている。
この道化師の様な振る舞い、
・エトにオラつかれた時のキモ走り
・ヒナミを逃がすハイセの前に現れた時の関西弁
・「超平和」を口にした後、手を叩きながら腰をくねらせる
・コクリア地下で華麗に嘔吐した時
これら、臆病な下等捜査官を演じていた時のギャップとして
不気味さを際立たせる「オーバーアクション」だが、この奇抜な
リアクションを取る時、旧多は心の中のコンプレックスと
闘っている様に見えるのだ。
コンプレックスから必死で目を逸らそうとしている様に見える。
リゼがターゲットにしたカネキくんには「リゼに選ばれた」と言う
事実があり、それに嫉妬を感じていた筈だ。
が、好きな女の子が自分を顧みなかったからと言って、
リゼ本人の上に鉄骨を落としたくらいでは彼女は死なない、
なのにその場でリゼの正体を知ってしまったカネキくんに
とどめを刺さないのは不自然。
旧多と嘉納の連携で「リゼの赫包を移植する実験体」の人間が
必要だったとしても、計画としては「鉄骨がまかり間違って
人間のカネキくんの上に落ちたら一巻の終わりである」と言う
計画性の脆弱さが否めない。
救急車で運び込まれる救急病院にたまたま嘉納が居たとは
考えにくいので(その時に救急受け入れが可能な病院に
運ばれる筈だろうし)Vの存在を考えると、何もかも計算づくである、
と言うのも頷けるのだが、この鉄骨事件には未だ引っ掛かりを感じる。
和修の中でぞんざいに扱われる「雑用係」の半人間一人である
旧多は、あくまでも「代替の利く」ものでしかない。
・リゼに食べたいと思われた人間
・嘉納の移植手術成功例の最たる存在
・有馬の遺志を継ぎ「隻眼の王」となった
天涯孤独な大学生の金木研には、今やこれだけの「存在感」が
付加されている。
どうでもいい消耗品の半人間の旧多が、コンプレックスを
爆発させているに違いない。
エトに対しても「天然ハーフ」と言うだけで、どれだけの羨望を
抱いていたことだろうか。
エトに対して止めを刺さなかったのは「刺すまでもない」優位性を
堪能したいが為ではなく、憎しみの裏返しで、天然ハーフである
エトの希少な存在感を消し去るには忍びない気持ちがあり、
それを認めたくない為に「殺すまでもない」と言う建前に付随する
振る舞いを行っているんじゃないだろうか。
旧多が「キモい」のは変わらないんだが、なんだかんだと、
旧多が口に出す「如何にもそれが目的」の様に見える言葉は
全て虚像なんじゃないか、と言う気がする。
権力欲に酔いしれている振りをしている様にさえ見える。
旧多の、掴みどころがなく不気味な面を考えると、
プレス機で潰される喰種の断末魔を聞きながら「嘔吐する」演技を
しているようで、実は本当に嘔吐しているのでは、と思えなくもない。
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