臨時国会の召集 法律で期限設定を目指せ
憲法に沿った手続きが軽視されるような状態は解消されるべきだ。議論を深めるためのルール作りは立法府の責務である。
憲法53条に基づく臨時国会の召集要求を巡り、立憲民主党や日本維新の会など野党5党は召集期限を定める国会法の改正案を今国会に共同提出している。具体的には、要求があった場合に20日以内の召集を政府に義務付ける。
53条には衆参両院のいずれかで総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は臨時国会の召集を決定しなければならないとある。少数派の意見を国会に反映する趣旨とされる。ところが実際には、期限の定めがないため、要求が棚上げにされるケースが繰り返されている。
2017年に森友学園問題などを追及するため野党が要求した際も当時の安倍内閣は約3カ月応じず、臨時国会の冒頭で衆院を解散して審議が行われなかった。菅内閣も約2カ月半にわたって「放置」した。岸田内閣になっても、要求から約1カ月半がたってようやく召集されている。
これでは憲法の規定が空文化していると言わざるを得ない。召集期限がないことを口実にして、内閣が恣意(しい)的に国会を先送りしていると受け取られても仕方なかろう。
改正案は、立民と維新が国会共闘の一環で与党に揺さぶりをかける狙いも透ける。とはいえ、かつて自民党が掲げた主張とも一致している。
自民が野党だった12年にまとめた党の憲法改正草案は、53条に関して「要求があった日から20日以内に召集されなければならない」と明記している。草案のQ&Aでは党内議論にも触れて、少数会派が要求を乱用しかねないとの懸念に対して「臨時国会の召集要求権を少数者の権利として定めた以上、きちんと召集されるのは当然であるとの意見が大勢だった」とまで書き込んである。
だが、今国会での議論は、自民の消極的な姿勢もあって進んでいない。岸田文雄首相は代表質問の答弁で、改正案への賛同を迫る野党に「議員立法であり、まずは国会で議論いただくべきだと考えている」と述べるにとどめたが、党総裁としてリーダーシップを発揮し、合意形成を目指すのが筋ではないか。
召集期限については、今年5月の憲法記念日に合わせて共同通信社が実施した世論調査で「設定すべきだ」との回答が約9割に達した。安倍内閣の対応は違憲として野党議員らが起こした訴訟の一、二審判決では、直接的な憲法判断は示していないものの「内閣は合理的期間内に召集を決定する法的義務を負う」とした上で違憲と評価する余地があると指摘している。重く受け止めねばなるまい。
自民は与党になったからといって、少数者の権利を軽んじるようではご都合主義のそしりは免れまい。政権党の自覚が問われている。
憲法53条に基づく臨時国会の召集要求を巡り、立憲民主党や日本維新の会など野党5党は召集期限を定める国会法の改正案を今国会に共同提出している。具体的には、要求があった場合に20日以内の召集を政府に義務付ける。
53条には衆参両院のいずれかで総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は臨時国会の召集を決定しなければならないとある。少数派の意見を国会に反映する趣旨とされる。ところが実際には、期限の定めがないため、要求が棚上げにされるケースが繰り返されている。
2017年に森友学園問題などを追及するため野党が要求した際も当時の安倍内閣は約3カ月応じず、臨時国会の冒頭で衆院を解散して審議が行われなかった。菅内閣も約2カ月半にわたって「放置」した。岸田内閣になっても、要求から約1カ月半がたってようやく召集されている。
これでは憲法の規定が空文化していると言わざるを得ない。召集期限がないことを口実にして、内閣が恣意(しい)的に国会を先送りしていると受け取られても仕方なかろう。
改正案は、立民と維新が国会共闘の一環で与党に揺さぶりをかける狙いも透ける。とはいえ、かつて自民党が掲げた主張とも一致している。
自民が野党だった12年にまとめた党の憲法改正草案は、53条に関して「要求があった日から20日以内に召集されなければならない」と明記している。草案のQ&Aでは党内議論にも触れて、少数会派が要求を乱用しかねないとの懸念に対して「臨時国会の召集要求権を少数者の権利として定めた以上、きちんと召集されるのは当然であるとの意見が大勢だった」とまで書き込んである。
だが、今国会での議論は、自民の消極的な姿勢もあって進んでいない。岸田文雄首相は代表質問の答弁で、改正案への賛同を迫る野党に「議員立法であり、まずは国会で議論いただくべきだと考えている」と述べるにとどめたが、党総裁としてリーダーシップを発揮し、合意形成を目指すのが筋ではないか。
召集期限については、今年5月の憲法記念日に合わせて共同通信社が実施した世論調査で「設定すべきだ」との回答が約9割に達した。安倍内閣の対応は違憲として野党議員らが起こした訴訟の一、二審判決では、直接的な憲法判断は示していないものの「内閣は合理的期間内に召集を決定する法的義務を負う」とした上で違憲と評価する余地があると指摘している。重く受け止めねばなるまい。
自民は与党になったからといって、少数者の権利を軽んじるようではご都合主義のそしりは免れまい。政権党の自覚が問われている。
(2022年11月09日 08時00分 更新)