ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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#066 『あ、やっぱりグリーンなんだ』

 11歳 κ月ζ日 『あ、やっぱりグリーンなんだ』

 

 いきなり入ってきて誰だ――と、思ったが、イエローが「グリーンさん!」と呼んだことで正体が判明した。

 どうやら、このシゲルに似た男はやはりグリーンらしい。ただ、ゲームのように「ボンジュール」とか「バイビー」とか言うようなキャラではなく、どちらかというと目つきが悪くポケスペのグリーンに近い感じである。

 

 シジマとも知り合いのようで、「師匠。ご無沙汰しております」と丁寧に挨拶していた。シジマが師匠なのも、ポケスペグリーンを髣髴とさせるな。

 

 イエローはどうやらずっとグリーンが来るのを待っていたようで、ここで一度お別れになった。

 どうも聞くところによると、グリーンはポケモン協会からサカキ様の件で空席になっているトキワシティのジムリーダーに推薦されたようなのだが、本人はそのジムリーダーにイエローを当てようとしているらしく、今回はジムリーダーとしての心構えをイエローに教えるためにタンバまで呼んだらしい。

 

 イエローも初耳だったようで、「僕にジムリーダーなんて無理ですよぉ」と情けない声を出している。

 それに対して、グリーンは「今すぐという訳じゃない。とりあえずは代理として、しばらく俺がジムリーダーをする。将来的にお前に任せたいという話だ」と説得していた。

 この世界のイエローも、ポケスペ同様トキワ出身のようで、自分の街のジムリーダーになるというのはどうしても嫌という訳ではないようだ。おそらく、自信がないだけだろう。まぁ、俺としてはジムリーダーになったイエローとも戦ってみたいので、グリーン側に立って応援することにした。

 

 説得役が増えたことで上手く丸め込まれてくれたのか、イエローも渋々頷いている。グリーンが目線で「感謝する」と訴えてきたので、軽く手を挙げて返しておいた。

 

 出来ればそのままの勢いでグリーンとバトル――と、行きたかったが、俺のポケモンは今ジム戦メンバーだし、半数が疲れ切っている。できれば、グリーンとはしっかりとしたバトルがしたいので、ここは一旦引くことにした。

 

 聞けば、二人はこのまましばらくタンバにいるようだし、明日にでもまた挑戦しに来ようと思う。

 

 

 

 11歳 κ月η日 『アカリちゃんの具合が微妙だってよ』

 

 朝、アサギジムの小娘がミカンちゃんからの伝言を持ってきた。どうやら、アカリちゃんは薬で大分良くなったらしいのだが、少しリハビリが必要なのでジム戦は少し待ってほしいとのこと。

 まぁ、そんなことより俺とバトルだとは言えないので、素直に了承し、鬱憤晴らしがてらグリーンとイエローのいるタンバジムへ行くことにした。

 

 タンバジムへ行くと、丁度、シジマとグリーンがバトルをしており、シジマのカポエラーとグリーンのサイドンがぶつかり合っている。最終的にはグリーンのサイドンがカポエラーを下し、シジマも弟子の成長を喜んでいた。うおー、俺も混ぜろー。

 

 そのままの勢いでグリーンにバトルを申し込む。

 グリーンもイエローから俺が去年のセキエイ大会でブルーと戦っていい勝負をしたのを聞いていたようで、特に拒否するようなこともなくバトルを受けてくれた。どうも、レッド、ブルーとも普通に知り合いらしい。

 

 よし、と思いながら、視線を横に向けると、イエローがひーこら言いながらシジマのゴーリキーに追われている。

 どうやらジムリーダーになるための心構えの一つとして、生身でポケモンの相手をさせているようだが、グリーン曰く性格的にポケモンを傷つけるのを嫌っているイエローはああして逃げ回っているようだ。

 ぶっちゃけそれ以前に、流石のイエローも生身でゴーリキーは相手に出来ないだけだと思うのだが、多分それは言わない方がいいだろう。

 

 まぁ、イエローのことはとりあえず置いておいて、今はグリーンとのバトルである。

 ルールをどうするかと聞かれたので、当然のようにフルバトルを提案したが、シジマとのバトルでグリーンのポケモンも何体か傷ついているようで、流石にフルバトルは却下された。

 仕方ないので三対三にしようとしたのだが、グリーンに二対二を提案される。三が良かったのだが、向こうもシジマとのバトルで消耗しているようなので無理を言えなかった。二体か、どのポケモンを出すか悩み所である。

 

 ルールが決まると同時にシジマが審判をしてくれるというので、そのままグリーンとのバトルを始めることにした。ふと、客席側を見ると、ゴーリキーから逃げ切ったらしいイエローもちゃっかり見学しようとしている。

 まぁ、見られて困ることなどない。それより、グリーンとのバトルに集中しよう。一体目として、バリヤードを出すと、グリーンはフーディンを出してきた。

 

 エスパータイプ対決か。

 思えば、エスパータイプと戦うことはあっても、エスパー同士でバトルをしたことはなかったな。グリーンはフーディンを戻すつもりはないようだし、ここは俺も突っ張るとしよう。

 

「「『シャドーボール』」」

 

 選択した技は同じだった。と、言うよりも、エスパータイプでエスパータイプを突破しようとしたら必然的に攻撃技は限られてくる。

 お互いに手のひらに『シャドーボール』を作ると、投げつけるように相手へと放っていく。当然、当たる訳には行かないので、互いに攻撃をかわして、再びシャドボをぶつけ合う、疑似ドッジボールが始まった。

 

 とはいえ、俺のバリヤードは意外と武闘派ということもあり、簡単にシャドボを回避している。向こうのフーディンはその速度でシャドボを回避しており、このままだと千日手になりそうな空気だ。

 どうするかと、思考を働かせた瞬間、フーディンが放った三度目の『シャドーボール』が急におかしな挙動をしてバリヤードに襲いかかってきた。予想外の攻撃に、バリヤードの回避が間に合わず、咄嗟に『ひかりのかべ』バリヤードエディションで直撃を回避する。

 

「ほう、『ひかりのかべ』にそんな使い方があるとはな……」

 

 バリヤードが避けきれない『シャドーボール』だと? いや、つい今さっきまで避けられていたのだ、何らかのトリックがあるのは間違いない。

 

「フッ、俺のフーディンが何をしたかわからないか? 別に特別なことはしていないぞ。ただ、『シャドーボール』を操作しただけだ」

 

 操作――そうか。

 

「『サイコキネシス』」

「正解だ。『シャドーボール』の軌道を『サイコキネシス』で変えただけ。エスパーポケモンなら当然の技術だろう」

 

 言ってくれる。アニポケ殺法のような技の組み合わせじゃなく、技を出した後、即座に別の技を出す高等技術は、グリーンが言うほど容易く出来るものではない。

 しかし、このまま黙ってやられるがままになってやるほど、俺もバリヤードも出来た性格をしていなかった。挑発に乗って、『シャドーボール』を作り、それを『サイコキネシス』で操作する。

 俺のバリヤードは独自の技を作り出す才能を有しているのだ。これくらいの技術、一度見れば十分真似することが出来る。

 

 流石のグリーンも、一度で成功させると思わなかったようで、少し驚いたような顔で『まもる』を指示していた。ふふふ、いくらグリーンのフーディンでも『ひかりのかべ』バリヤードエディションは真似できないようだな。

 

「成程、想像以上にやるようだ。なら、次は真正面から行くとしよう。『サイコキネシス』」

 

 エスパータイプにエスパータイプの技は半減だが、真正面から行くという言葉から察するにグリーンは力勝負を望んでいるのだろう。

 敢えて無視して、『ふいうち』や『シャドーボール』を指示してもいいが、逃げたと思われるのも癪なので真っ向から受けて立つ。バリヤードに『サイコキネシス』を指示して、フーディンのサイキネを迎え撃った。

 

 エスパータイプにしかわからない攻防があるようで、バリヤードが一瞬驚いたような顔をした後、苦しそうな表情へ変化していく。

 フーディンとバリヤードでは特攻の種族値はフーディンの方が上だ。おまけに、おそらくレベルでも負けている可能性が高いので純粋な力押しでは俺達の方が不利なのはわかっていた。しかし、バリヤードにエスパータイプ同士で戦う経験を積ませたかったので敢えて受けて立ったのだ。

 それに、エスパー技なら最悪でも致命傷にはならない。実際、フーディンのサイキネを受けたであろうバリヤードも、憤ってはいるようだがダメージは殆どなかった。

 

「フーディンの『サイコキネシス』を受けてその程度のダメージか。良く育てられているな」

「そりゃどーも」

 

 真っ向勝負で戦うのは不毛だ。いつも通り、相手の隙を突いてダメージを取っていくニューサトシ戦法に切り替えよう。

 バリヤードに『ひかりのかべ』を指示する。瞬間防御のバリヤードエディションではなく、ある程度のターン相手の特殊攻撃を弱体化させる通常の壁だ。

 フーディンは特殊攻撃に偏った種族値をしている。特殊攻撃さえ防いでしまえば、こちらへの有効打はないだろう。向こうは『ひかりのかべ』ではなく、『まもる』を使用しているので、長期戦になれば有利なのはこちらだった。

 

 グリーンも『ひかりのかべ』を見るなり、すぐにフーディンをボールに戻している。不利を悟ったのだろう。

 フーディンを戻したグリーンが次に出してきたのはまさかのリザードンだった。こいつがポケスペグリーンだろうと、そうでなかろうとも、御三家であるリザードンはエースのはずだ。

 

 俺もバリヤードを戻して、リザードンを出す。ただ勝つことを考えるなら、バリヤードで多少削って水や岩タイプを出した方が良いのだが、俺のリザードンがどれだけ通用するか試したくなったのだ。

 グリーンも、フッと笑みを浮かべている。面白いという言葉が口にしなくても伝わってきた。

 

「「『かえんほうしゃ』」」

 

 まずは試しとばかりに、互いのリザードンの口から放たれる火炎がぶつかり合う。そのまま弾かれるように相殺され、俺は思わずマジかと言いそうになった。

 バリヤードが『ひかりのかべ』を出しているので、向こうの『かえんほうしゃ』は威力が下がっている。にも関わらず相殺されたということは、グリーンのリザードンは俺のリザードンよりも特殊攻撃が高いということだ。

 

「リザードン同士で戦うには室内は少し手狭だな。外のフィールドに移動しよう」

 

 リザードンの真骨頂は空中戦だ。外に出れば『ひかりのかべ』はなくなるが、それ以上にリザードンの動きを制限される方がこちらにすれば苦しいので提案を拒否する理由はない。グリーンに従って外に移動する。

 外に出る間、リザードンに一声かけた。「相手は格上だ。全力で行くぞ」と。リザードンも先ほどの攻防でそれは察していたようで素直に頷いている。開幕から見せてやろうぜ、俺達の本気を。

 

「リザードン、飛べ!」

 

 外のフィールドに移動するなり、グリーンはリザードンを空中へと移動させ、その動きを披露してくる。

 かなりの速度だ。オレンジリーグで戦ったカイリューすら超える動きのキレに、自然と笑みが浮かんでくる。どうやら、それはリザードンも同じだったようで、絶対に負けるものかという気持ちがシンクロして、俺とリザードンの意識が同調していく。

 

 肌は灼熱色に変化し、薄い炎が全身を包み込む。きずな現象が発生した証拠だ。ジョウトに来てから、二度目の変化。だが、段々とこの現象をコントロールできるようになってきたような気がする。

 

 正面を見ると、流石のグリーンも驚いたようだ。しかし、のんびりはしていられない。きずなリザードンになっていられる時間には限りがあるのだ。

 既に上空にいるリザードンを追うように、きずなリザードンが上昇する。その速度は通常のリザードンを超えていた。グリーンのリザードンを捉え、『ドラゴンクロー』で攻め立てていく。

 だが、グリーンのリザードンも『エアスラッシュ』を使って、こちらの攻撃を上手く凌いでいた。とはいえ、火力の差もあり、段々とグリーンのリザードンが押されていく。

 こちらの『ドラゴンクロー』の威力から、きずなリザードンはドラゴンタイプを持っていると判断したのか、グリーンも『りゅうのはどう』で迎撃しようとしてきたが、きずなリザードンは『かえんほうしゃ』で『りゅうのはどう』を打ち消していく。きずなリザードンになったことで、特殊攻撃も向こうに並んだらしい。これは貰った――

 

「我がキーストーンの光よ、リザードナイトの光と結び和え。メガシンカ!!」

 

 だが、攻撃が直撃する直前、グリーンのリザードンが光に包み込まれ、その形態を変化させる。肌の色はそこまで変わっていないが、細部の形が変化し、何よりグリーンのリザードンを包み込むように日差しが強くなった。メガリザードンYだ。

 

「フッ、まさか俺にメガシンカまで使わせるとはな」

 

 まずい。そろそろ一分経つ。このままでは俺達はきずな現象が解除されて俺達は一方的に不利な状況になってしまう。そうなれば、メガシンカした向こうのリザードンに対応できず一方的なバトルになってしまうだろう。

 

 ――いや、時間なんて考えるな。

 

 今できる全力を出すんだ。

 

 まだいける。

 

 俺達はもっと、もっと強くなれる。

 

 臆するな。

 

 進め。

 

 そうだ、迷うな。

 

 戦え。

 

 勝負はまだまだここからだろうが!!

 

「もっと、強く!!」

 

 ――その瞬間、炎が弾けた。

 

 全身を包み込んでいた繭のような炎が弾け、リザードンの両翼の上下に炎の翼が出現し、四枚羽のように炎のエネルギーが溢れ出す。

 まるで、枷が外れたように力が溢れ、これまでとは比じゃないくらいのパワーが全身を包み込む。

 行ける――これが本当のきずなリザードン、この力があれば例え相手がグリーンのメガリザードンであっても負けはしない。俺達の力はまだまだこんなものじゃないんだ。

 

 そう思った瞬間、突如として俺の意識はブラックアウトした。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・グリーンが現れた。
 アニメだとトキワシティのジムリーダーはキクコが代理になるまで空席だったが、この世界ではグリーンが就任することになった。ただ、本人は長い間拘束されるのが嫌で、イエローを生贄にしようとしている。

・グリーンとバトルした。
 手持ちの全てが四天王クラスである。当然、真っ向勝負でまだまだ敵う相手ではない。

・一瞬だけ、本当のきずなリザードンになった。
 炎の繭が解かれ、炎の四枚羽になった。本体の羽と合わせて六枚羽、イメージ的にはサトシゲッコウガのデカ水手裏剣が炎の羽になったような感じ。また、視界の共有が半分解除され、自分とリザードン両方の視界が見えていた。



 現在ゲットしたポケモン

 ピカチュウ Lv.54

 ピジョット Lv.51

 バタフリー Lv.51

 ドサイドン Lv.53

 フシギダネ Lv.51

 リザードン Lv.55→56

 ゼニガメ  Lv.51

 キングラー Lv.51

 カモネギ  Lv.51

 エビワラー Lv.51

 ゲンガー  Lv.52

 オコリザル Lv.51

 イーブイ  Lv.50

 ベトベトン Lv.50

 ジバコイル Lv.50

 ケンタロス Lv.50

 ヤドラン  Lv.50

 ハッサム  Lv.50

 トゲチック Lv.43

 プテラ   Lv.51

 ラプラス  Lv.50

 ミュウツー Lv.71

 バリヤード Lv.50→51

 イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.45

 カビゴン  Lv.45

 ニョロゾ  Lv.43

 ヘラクロス Lv.40

 ベイリーフ Lv.40

 マグマラシ Lv.40

 ラティアス Lv.30

 デルビル  Lv.40

 ワニノコ  Lv.37

 ヨルノズク(色違い) Lv.38

 カイロス(部分色違い) Lv.40

 ウソッキー Lv.39

 バンギラス Lv.55



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