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    トピックス

    2022.07.01沖縄らしさがあふれる「あまゆ」のセットは、ここに注目!

    #ちむどんインタビュー

    沖縄・やんばる地域で生まれ育った四兄妹きょうだいの、1972年の本土復帰からの歩みを描く、笑って泣ける家族の物語「ちむどんどん」。
    本コラムでは、こだわりが詰まった美術セットの制作ストーリーを3回にわたってお届け。ラストの第3回では、ヒロイン・暢子(黒島結菜)の下宿先である沖縄料理店「あまゆ」のセットについて、美術デザイン担当に話を聞きました。制作の背景をはじめ、同セットに隠されたとある秘密も明らかに!

    ――沖縄らしさをふんだんに盛り込んだ「あまゆ」&「鶴見ハイサイ通り」

    美術デザイナー:店名の「あまゆ」は、沖縄のことばで「甘い世(=苦しいことのない世界や、苦労の末につかむ幸せ)」という意味。人々が集って笑い合う、同店らしいネーミングですよね。

    美術デザイナー:「あまゆ」が位置するのは、「鶴見ハイサイ通り」という商店街。このエリアには赤瓦あかがわらやハイビスカスの花、シーサーなどを随所にあしらい、全国の方がイメージする"沖縄らしさ"をふんだんに盛り込みました。

    美術デザイナー:そしてお気付きの方も多いと思いますが、「あまゆ」のデザインは朝ドラ「ちゅらさん」(2001年前期)に出てくる沖縄料理店「ゆがふ」をオマージュしています。同じ沖縄が舞台の同作をリスペクトしようと、チーム全体で当時の図面やドラマの映像を見ながらセットデザインを作っていきました。

    美術デザイナー「ちゅらさん」で「ゆがふ」の店主・兼城かねしろ昌秀を演じていた志ぃさー(藤木勇人)さんが、「あまゆ」の店主・金城順次として登場したのも話題になりましたよね。衣装担当に聞いたところ、志ぃさーさんの衣装も「ちゅらさん」を彷彿ほうふつとさせるものになっているそうですよ。

    美術デザイナー:のれんなどに使用しているフォントも、よく見ていただくと「ゆがふ」と同じ「ゆ」の字を採用しています。このほかにもいろいろな「ちゅらさん」へのリスペクトが隠されているので、ドラマを楽しみながら探してみてください。

    ――やんばるを恋しく思う気持ちが感じられる暢子の部屋

    美術デザイナー:「あまゆ」の2階は、暢子が暮らしている下宿です。ここでも沖縄らしさを表現できたらと、階段を上がった正面に沖縄でよく見られる「石敢當いしがんとう」を置きました。これは突き当たりに置くことで、魔物を撃退してくれると伝えられている魔よけです。実際の「石敢當」は石碑ですが、下宿の中のため紙に書かれた手書きの文字という形で取り入れました。おそらくここで過ごしていた誰かの遊び心でしょう。

    美術デザイナー:下宿の部屋は全部で3つ。それぞれに「ゴーヤーの間」、「デイゴの間」、「ウージの間」と名前がついています。

    美術デザイナー:暢子の部屋は「ゴーヤーの間」で、広さは四畳半。やんばる地域の自然を思い起こす緑色の家具から、彼女が地元を恋しく思う気持ちを感じていただけたら。

    ――実は「あまゆ」のセットには、「アッラ・フォンターナ」のセットと共通点があった!

    美術デザイナー:第2回で紹介した「アッラ・フォンターナ」のセットと「あまゆ」、「鶴見ハイサイ通り」のセットは、実は同じスタジオ内に立っているんですよ(笑)。一つの空間の中でいろんなシーンの撮影を行うため、撮影のスケジュールを綿密に組み、双方が共存できるように設計されています。

    美術デザイナー:「アッラ・フォンターナ」の前にある古本屋が、「鶴見ハイサイ通り」のシーンではコインランドリーに姿を変えるなど、セットチェンジの効率も考えながら建てられているんです。

    全3回にわたって美術セットに込められた背景や構造についてお話ししてきましたが、楽しんでいただけましたか? 各担当が工夫を凝らして作り上げたセットを通して、美術デザインの仕事についても興味を持っていただけたらうれしいです。